リハビリテーションの専門職である理学療法士の勤務先はさまざまですが、特に選ばれることが多いのが介護施設と病院です。今回は、介護施設と病院の理学療法士の仕事内容や給与面などを比較してどのような違いがあるのか解説します。介護施設・病院への転職を検討している方はぜひ参考にご覧ください。
1 理学療法士の主な就業先
2 理学療法士が働く主な施設
3 介護施設で働く理学療法士と病院で働く理学療法士の違い
4 介護施設で働く理学療法士の1日のスケジュール例
5 病院で働く理学療法士の1日のスケジュール例
6 どちらが働きやすい?介護施設と病院のメリット・デメリット
7 介護施設・病院間の転職はできる?
8 介護施設と病院の違いを理解して自分の目指す道へ進もう
主な就業先 | 会員数 | 割合 |
医療施設 | 92,343人 | 76.6% |
介護サービス施設・事業所 | 20,717人 | 17.2% |
障害福祉施設 | 1,215人 | 1.0% |
障害福祉サービス事業所 | 485人 | 0.4% |
教育研究施設 | 3,042人 | 2.5% |
行政・自治体・団体・機構等 | 768人 | 0.6% |
法人本部等 | 361人 | 0.3% |
企業、起業、公的保険外サービス | 1,523人 | 1.3% |
その他 | 99人 | 0.1% |
(出典:日本理学療法士協会「統計情報」)
理学療法士の就業先は、大きく分けると医療機関と介護施設が全体の9割を占めています。なかでも病院は全体の6割を占めていて、特に割合が高いです。理学療法士の就業先や職域は、福祉・教育・行政・健康産業と幅広いですが、多くの理学療法士が一度は病院か介護施設への就職を経験していると言えるでしょう。
理学療法士が働く主な施設について、介護施設・医療施設の二つに分けて解説します。それぞれにどんな特徴があるのか理解し、希望条件に合う勤務先を見つけましょう。
介護老人保健施設(老健)は、病院での入院治療を終え、症状が安定化した高齢者が在宅復帰を目標に入居する介護施設です。在宅復帰を目指しているため、療養や日常生活における介護を行いながら、自宅で自立した生活ができるようにリハビリテーションを行います。
具体的には食事・入浴・排泄などの日常生活における動作や、立つ・歩くと言った基本的な身体機能を回復するための訓練が中心です。
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上の介護認定を受けており、自宅での生活が困難な方が安心して日常生活を送るための介護施設です。
施設内で自立した生活を送ることを目指して、日常生活に関する動作のリハビリテーションを行います。そのため、リハビリテーションの最終目標は入居者によって大きく異なります。
通所介護事業所(デイサービス)は、要支援・要介護認定を受けた高齢者が自宅から通い、日帰りで過ごす施設です。利用者の健康維持とともに生きがいづくりに重きを置いており、自立性や生活の質を向上させる目的でリハビリテーションを行います。
身体機能の維持や低下の予防のために、マシンを使用したリハビリテーションを行う事業所も増えています。
訪問リハビリテーション事業所では、自宅で生活している要介護認定を受けた高齢者を対象に、理学療法士などが自宅に訪問し、リハビリテーションを行います。身体機能や日常生活における基本動作、洗濯や調理などのさまざまな家事で使う動作に関連した内容です。
利用者が安心して自宅での生活を続けることができるように、福祉用具の購入やレンタルに関するアドバイスも行います。
急性期の病院では、病気や事故などですぐに入院治療が必要な方を受け入れています。救急搬送の受け入れが可能な総合病院も、この急性期の病院に含まれます。リハビリテーションの対象者は、病気や事故などで後遺症があり、術後間もない入院患者です。リハビリテーションを通して、後遺症が落ち着き退院できる状態を目指します。
急性期の間は病状が不安定な時期で、リハビリテーション中に容態に変化が見られる場合もあるため、徹底したリスク管理が大切です。
リハビリテーションに特化した病院は、急性期における治療は終えたものの、後遺症などにより身体の機能が低下した状態が続いている方を受け入れる施設です。回復期におけるリハビリテーションを集中的に行います。
入院患者だけでなく、外来の患者にも対応しているのが特徴です。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリテーションの専門職が多数在籍しており、専門のマシンや設備など、リハビリテーションのための環境が整っています。
専門クリニックでは、整形外科・脳神経外科など、専門性が高い治療を行っている患者を対象にリハビリテーションを行います。クリニックによって、骨折や捻挫などの外傷から、脳卒中や心臓手術などの後遺症まで幅広く対応しており、どの分野を選ぶかによって得られるリハビリテーション技術も大きく変化するでしょう。また、病床数が限られている病院と異なり、比較的多くの外来患者と接することになります。
介護施設で働く場合と病院で働く場合では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。ここからは、介護施設と病院の違いについて解説します。各項目別に詳しく説明するので、ぜひ比較してご覧ください。
介護施設 |
病院 |
・リハビリテーションプランの作成 |
・リハビリテーションプランの作成 |
介護施設と病院における仕事の主な違いはリハビリテーション内容です。リハビリテーションの対象者や目的がそれぞれ異なります。
介護施設ではリハビリテーションの対象者が高齢者に限定されるので、目的も身体機能の維持や低下の予防が主です。一方、病院やクリニックの場合、リハビリテーションの対象者は赤ちゃんから高齢者まで幅広くおり、身体機能や動作の改善・向上や在宅復帰を目指してリハビリテーションを行います。
介護施設 |
病院 |
・介護支援専門員(ケアマネジャー) |
・医師、看護職員 |
介護施設では、ケアマネジャーや介護職員、医療スタッフなどの他、福祉用具を取り扱う業者やさまざまなサービス事業所と連携しながら業務を行います。
一方の病院では、医師や看護職員、介護職員の他、作業療法士・言語聴覚士など、理学療法士以外のリハビリ職と一緒に働くことになります。
理学療法士の勤務時間は、基本的には介護施設でも病院でも朝から夕方までの日勤帯で、施設・病院によっては月1~2回の夜勤業務がある場合もあります。また、土日祝日の勤務は、勤務先によってさまざまです。
また、介護施設には理学療法士を含めた機能訓練指導員の人員基準が定められているのに対し、病院は適当数とだけ定められており、出勤日数や残業時間も施設ごとにさまざまです。
求人を探す際は施設・病院の規模や理学療法士の在籍人数などを確認することをおすすめします。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、理学療法士の平均月給は30.1万円、年収に換算するとおよそ432.5万円です。施設別の平均給与は、介護施設・病院のどちらが高いとは一概に言えません。しかし、介護施設の場合は理学療法士を含むリハビリテーションの専門職について、常に需要が供給を上回り好条件で求人を出しているところが多いです。
また、病院の中でも国公立の病院では理学療法士は半公務員の扱いとなり、正職員の場合は昇給があります。介護施設・病院ともに、国や自治体が運営している場合は、福利厚生が整っているケースが多いでしょう。
介護施設 |
病院 |
・施設内リハビリテーション部門のリーダー・管理者へ昇格 |
・病院内リハビリテーション部門のリーダー・管理者へ昇格 |
理学療法士のキャリアアップの選択肢としては、介護施設・病院で共通してリハビリテーション部門におけるリーダーや管理者などの役職につくことが挙げられます。「認定理学療法士」などの資格をとるのもよいでしょう。いずれにしても理学療法士としての基盤となるスキルを着実に身につけることがステップアップに繋がります。
介護施設で働く場合は、自身の職域から介護に関する知識を深めつつ、今後のキャリアを考えるとよいでしょう。また、病院で働く場合は、自身の職域を中心に、医療に関する知識を深めながらキャリアを考えましょう。
08:30~ 出勤・ミーティング
09:00~ リハビリテーション
12:00~ 休憩(場合によっては食事介助のヘルプ)
13:00~ リハビリテーション
17:00~ 退勤
介護施設におけるリハビリテーションは、その日に行う利用者数やメニューによってスケジュールが変化します。また、介護職員の出勤状況によっては食事介助のヘルプなどを行う必要があるので、休憩時間がずれる場合もあります。
08:30~ 出勤・ミーティング
09:00~ リハビリテーション
12:00~ 診療記録への記入・作業療法士たちの記入内容の確認
12:30~ 休憩
13:30~ リハビリテーション
16:00~ ミーティング・診療記録への記入
17:00~ 退勤
病院で働く理学療法士の場合、リハビリテーションプランの作成などの事務的な業務や、カンファレンスへの参加など、細々とした作業がリハビリテーションの合間に流動的に挟まれる傾向にあります。業務が立て込んでいる日は、終業時刻を過ぎてから診療記録の記入や確認などを行い、残業が発生することもあるでしょう。
メリット |
デメリット |
|
介護施設 |
・しっかり利用者と向き合える |
・成果が見えにくい |
病院 |
・成果が見えやすい |
・患者一人一人との関わりは短い |
介護施設の理学療法士は、要介護者の日々の生活状況を見ながらリハビリテーションに関するプランニングを行います。一方の病院勤務の理学療法士は、老若男女かかわらず、さまざまな症例に対応しながらリハビリテーションのプランニングを行います。そのため、仕事へのやりがいで何を求めるかによって、メリット・デメリットは異なるでしょう。
勤務先を検討する際は、給与・福利厚生はもちろん、どちらの業界により興味があるのかを軸に考えることをおすすめします。
理学療法士が介護施設と病院間で、転職することは可能です。ただし、人気がある求人は経験者やキャリアのある求職者が優先で選ばれることが多いでしょう。また、待遇の良い病院は職員の空きが出ず募集自体がないケースもあります。
同じリハビリテーションの仕事でも介護施設と病院ではさまざまな部分で違いがあるので、なぜ転職したいのか理由をしっかり自己分析した上で、熱意を伝えることが大切です。希望する転職先があれば応募前に見学に行き、実際の職場の雰囲気を肌で感じてみるのもよいでしょう。
理学療法士の仕事は、身体機能に何らかの不便がある方に対してリハビリを行う点では、介護施設勤務・病院勤務で共通です。しかし、リハビリの対象者や目的、業務内容、待遇、キャリアパスなどには、それぞれ違いがあります。自分が興味のある業界や深めたい知識についてよく考えて、勤務先を探しましょう。
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