有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅、デイサービスといった介護施設。介護スタッフが活躍する場所というイメージが強いかもしれませんが、実はそうした介護施設において、看護師も重要な役割を担っているのです。
病院ではなく、新しい場所で看護の力を発揮したいと考えているのであれば、介護施設を検討してみませんか。ここでは、介護施設で働く看護師の仕事内容ややりがいについて紹介します。
介護施設とは、介護が必要になった人が、必要な介護を受けることができる施設の総称。受けられるサービスや入居条件や運営主体などによりさまざまな種類がありますが、自治体が運営する公的施設と、民間事業者が運営する民間施設に大きく分けられます。
一例としては、公的施設が特別養護老人ホーム、民間施設が有料老人ホーム、デイサービスなど。利用者の健康にも深く関わることから、介護福祉士やケアマネジャーとともに、看護師も多く活躍しています。
介護保険法では、介護施設の入居定員に対し、必要な職員配置数の基準が定められています。看護師の配置基準がある施設は、定員10名以上のデイサービス、訪問入浴介護、介護付有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、介護療養型医療施設、老人保健施設、特定施設などがあります。
◆特別養護老人ホーム
公的な介護保険施設で「特養」とも呼ばれます。介護保険法上の正式名称は「介護老人福祉施設」です。
要介護3以上(特例の要介護1・2)の高齢者が入居することができ、基本的には終身に渡って介護を受けることができます。
◆介護老人保健施設
公的な介護保険施設で「老健」とも呼ばれます。
病気やケガなどで長期入院していた要介護度1以上の高齢者が自宅復帰できるよう、医師による医学的管理のもと、看護・介護・リハビリを行います。3~6カ月程度の一定期間で退去することが前提となっています。
◆有料老人ホーム
前述した「特別養護老人ホーム」が公的施設であるのに対し、有料老人ホームは民間が運営する入居施設。
自立から要介護5までの高齢者が対象で、利用者のニーズを満たすための多様なサービスが特徴です。
◆グループホーム
軽度~中等の認知症高齢者が共同生活をする民間施設です。要支援2以上の認知症の人が入居できます。
家庭のような環境の中で、食事の準備や買い物、掃除などをスタッフと一緒に行い、自立支援を促します。
◆サービス付き高齢者向け住宅
主に民間が運営する高齢者向けの賃貸住宅。「サ高住」とも呼ばれ、高齢者が暮らしやすいようバリアフリー設計となっています。
自立あるいは要支援・要介護高齢者が対象で、介護が必要になった場合は、訪問介護など外部の介護サービスを利用します。
◆デイサービス
「通所介護」とも呼ばれるデイサービスは、自宅から日帰りで通所し、食事の提供や入浴サービスなどが受けられる民間の施設のこと。
要支援1~2、要介護1~5の65歳以上の人がサービスを受けることができます。
◆小規模多機能型居宅介護
自宅で生活をしている要介護認定を受けた高齢者が利用する民間施設。ひとつの事業所が「通い(デイサービス)」「訪問(ヘルパー)」「宿泊(ショートステイ)」の3つのサービスを提供します。
サービスを組み合わせることで、利用者ができる限り自立した日常生活を送ることができるよう支援します。
一般的な介護施設における看護師のポジションはどういったものなのでしょうか。大きく2つに分けて紹介します。
《利用者の健康管理》
介護スタッフと連携しながら、利用者のケアを行います。基本的に介護スタッフは利用者の介護や生活全般の支援を担い、看護師は医療という視点から、利用者の健康的な生活をサポートします。
《体調不良やケガをしたときの医療処置》
介護施設は一部を除き、医師は常駐していません。
そのため、利用者が体調不良を訴えたとき、ケガをしたとき、容態が急変したときなどは、医療従事者である看護師の出番となります。応急処置を行うほか、必要に応じて救急車の手配、医師への連絡も行います。冷静かつ迅速で正確な判断が求められます。
介護施設では、看護師は主に利用者の健康管理や医療行為を行います。具体的にどのような仕事をするのか見ていきましょう。
そのほか、施設によっては介護スタッフのサポートとして、食事やトイレの介助を行うこともあります。
レクリエーションが行われる施設ではレクの進行やサポート、小さな事業所では食事の配膳、送迎車の運転(デイサービス)を行うケースもあるようです。
特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)では、入浴介助は介護スタッフが行うことがほとんどです。
しかし、規模が小さな有料老人ホーム、デイサービスなどでは、人手が足りないときや必要に応じて、看護師も利用者の入浴介助を行うこともあります。
一般的な入浴の流れとしては、看護師はバイタルチェックを行い、利用者が入浴できる健康状態かどうか確認します。脱衣所などで、利用者の衣類の着脱を手伝いながら、身体状態をチェック。その後、介護スタッフが入浴の介助を行います。入浴後、看護師はケアが必要な利用者に塗り薬を塗ったり、湿布の貼付、爪切りなどを行います。
食事介助も多くは介護スタッフが行いますが、誤嚥の心配がある利用者に対しては、見守るという意味もあり介助を行うこともあります。こちらも規模の小さな有料老人ホーム、デイサービス、グループホームでは珍しくないようです。
治療を目的とする「病院・クリニック」に対し、介護施設は「生活の場」。そのため、介護施設で働く看護師と、病院・クリニックで働く看護師では、業務内容が大きく変わります。
介護施設では利用者の健康管理が中心となるため、注射や点滴の管理といった医療業務がとても少なくなります。そのかわりに、利用者が日常生活を快適に送ることができるよう、必要に応じて介護のサポートをすることが大切。とはいえ、基本的に介護は介護スタッフの領域。お互いコミュニケーションを取りながら、足りない介護を看護師が補っていくというスタンスが取られることが多いようです。
また、介護施設では、看護師・ケアマネジャー・介護スタッフ・理学療法士や作業療法士といったリハビリ専門職とともに、利用者の自立支援、機能向上、要介護度の維持・改善や健康維持に向けてチームで取り組みます。看護師としてのスキルを活かしつつ、リハビリ・介護のプロフェッショナルと連携してケアできる」のも、介護施設で働く看護師の特徴ともいえます。
勤務時間の面でいうと、病院の場合、外来であれば日勤のみですが、病棟勤務になると夜勤、早番、遅番などのシフト制になります。状況によっては、急遽、残業が発生することもあるでしょう。
一方、介護施設では夜勤・残業はほとんどありません。
介護施設で働く看護師の1日のスケジュール例を紹介します。あくまでも一例ですが参考にしてみてください。
8:30 出勤、全体朝礼、ミーティング、予定確認
9:00 入居者の健康チェック
施設を巡回して体の状態を確認します。入浴サービスを受ける利用者のバイタルチェックをします。
10:00 医療処置
利用者の気になる点について医師に報告。診察介助や、医師の指示を受けて医療業務を行います。
11:00 薬の準備
昼食後に薬を服薬する利用者の薬を確認して準備します。
12:00 食事見守り・介助
入浴者の食事介助。誤嚥しないよう見守ります。
13:00 ランチ・休憩
14:00 巡回
施設内を巡回し、入居者の様子を確認。レクリエーションのサポートや、排泄介助も行います。
15:00 カンファレンス
介護支援専門員(ケアマネジャー)を中心としたカンファレンスに参加し、情報の共有と問題解決に向けて話し合います。
16:00 申し送り
夜勤職員に引き継ぎを行います。
17:00 業務終了
介護記録を記入。翌日に向けて衛生材料など物品の補充等を行い退勤。
24時間対応が基本の病棟勤務では、2交代制・3交替制でシフトが組まれ、それに沿って勤務することが一般的です。勤務時間は変則的かつ不規則。スタッフの人数にもよりますが、月に8回ほど夜勤をこなす看護師が多いようです。
介護施設の場合は、施設によって違いはあるのですが、入居者の要介護度が低い有料老人ホームや、看護師の夜勤配置が義務付けられていない特別養護老人ホームでは、看護師の夜勤はありません。同様の理由で残業も少なくなっています。
有料老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者住宅は看護師の常勤義務がありませんが、医療ニーズを満たし、利用者が安心して過ごすことができるよう24時間看護師を常駐させている施設も増えています。介護施設に転職を考える際は、夜勤の有無について事前に確認したほうがいいでしょう。
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介護施設で働く看護師の給与は、施設の種類や夜勤の有無によって変わってきます。
夜勤がある場合、病棟勤務の看護師とあまり変わらない給与であると予想されますが、夜勤・残業なしの施設では平均月収・年収とも、低くなるのが一般的です。
そこで、介護求人ナビに掲載されている求人の「看護職」平均給与額や厚生労働省の調査データをもとに、病院勤務の看護師との給与面での違いを見ていきましょう。
介護施設での看護師の求人は、正職員の場合、平均月収は約26万円、平均年収は約367万円です。パート・アルバイトですと、平均時給は1,501円となります。
一方、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、2020年の看護師全体の平均月収は33万4400円、平均年収は482万9,100円でした。
介護施設で働く看護師の給与は、看護師全体と比べると月給約7万円、年収は約120万円低い傾向にあるようです。
先に説明したように、医師が常駐しない介護施設では、医療従事者は看護師のみ。介護施設には、病院のように重篤な症状の高齢者はいないとしても、老化によって身体的機能が低下している人も多く、自覚症状がないまま症状が悪化することもあります。
そのために、些細な変化も見逃さない観察眼や判断力は不可欠。利用者の健康維持を一人で担っているため責任は重いですが、そのぶんやりがいは感じられることでしょう。
(1)夜勤や残業が少ない
夜勤や残業がない施設が多く、あったとしても少ないため、家事や育児と両立しやすくなっています。
また、深刻な病状の利用者は少なく、病院のように急変の対応や命にかかわる事態もほとんど起こりません。落ち着いた環境の中で働くことができます。
(2)ブランクがあっても働きやすい
病院と比べて医療行為が少なく、利用者のバイタルの測定や健康チェック、服薬管理、痰吸引などの健康管理が中心です。
勤務する上で、基本的な看護スキルがあれば問題がないため、妊娠や出産を機に看護の仕事から離れた人でも復帰しやすい環境となっています。
(3)介護のスキルが身に付く
介護施設の中には、寝たきりや重度の認知症など、介護度が高い高齢者が多い施設もあります。
こうした利用者と積極的に関わり、介護スタッフとともにケアすることで、専門的な介護スキルを身につけることも可能。介護に強い看護師としてスキルアップもできます。
介護施設の利用者は、介護認定を受けた高齢者が中心です。これまで高齢の患者と接する機会があまりなかった看護師の場合、認知症特有の行動や意思疎通の難しさに戸惑うことも多いでしょう。
また、足腰が弱い高齢者や、寝たきりの利用者の介助には体力が求められます。介護する側の体の負担を軽くする技術を習得する必要もあります。
病院では、患者がケガしたときや体調不良を訴えたとき、看護師は医師の判断を仰いで医療処置を行います。一方、介護施設では、老人保健施設を除き医師の常駐はありません。そのため、利用者がケガをしたり、体調不良を訴えたときなどは、医療従事者である看護師が対処方法を判断する必要があります。判断を任されることに対し、プレッシャーを感じる看護師も少なくないようです。
介護施設では介護士、ケアマネジャー、リハビリ専門職などとのチームワークも重要。利用者のためのケアという共通理念はありつつも、専門性の違いによる意見の相違が生まれがちです。チーム医療の一員として、看護師として必要な意見を伝えつつも、それぞれの職種に対する理解を深めることが大切となってきます。
・コミュニケーション能力が高い人
利用者の些細な変化を見逃さないためには、普段からコミュニケーションをとり、性格や嗜好、行動のクセなどを把握しておくことも大切です。コミュニケーションが好きな人や、ゆっくりと信頼関係を築いていける人は、介護施設の看護師に向いています。
・ワークライフバランスを重視して働きたい人
残業や夜勤もなく、定時であがることが多い介護施設。看護スキルを活かしつつ、子育てや家事、趣味と仕事を両立させて働きたいという人に向いています。
・いろいろな職種の人と連携して仕事をしたい人
看護師、介護士、リハビリ専門職など、さまざまな職種と連携して利用者のケアに当たります。他の職種と積極的に関わり、チーム医療に貢献したい人には適した環境です。
・高齢者介護に興味がある人
高齢化社会が進む中、さらに介護に関するニーズは高まっていくことでしょう。高齢者介護はもちろん、認知症ケアやターミナルケアなどに興味がある人にも向いている職場と言えます。
介護施設において、看護師は高度な医療技術よりも、利用者のバイタルチェック、服薬管理といった健康管理が中心です。
そのため基本的な看護技術と経験があれば、介護施設で働く上で問題はありません。レクリエーションを行う施設の場合、レクを企画・実践するレクリエーション・インストラクターの資格があれば、より利用者が楽しめる企画作りを実現することもできるでしょう。
看護・介護技術も大切ですが、それとともに重要になってくるのは、高齢者に対する理解を深め、上手な対応方法を身に付けること。加齢に伴い、判断力や理解力、記憶力が鈍る一方、思い込みやこだわり、好き嫌いが強くなる傾向があります。身体がうまく動かないことに対する苛立ちや恥ずかしさ、時には寂しさが募り、感情をぶつけられたり、傷つくことを言われることもあるでしょう。
こうした対応に神経を擦り減らすことがないよう、うまく心をコントロールするスキルも求められます。
介護施設で看護師として働きつつ、キャリアアップを図りたい人も多いと思います。また、介護施設で働くうちに施設運営やスタッフ管理などに興味が出てくる人もいるかもしれません。
有料老人ホームやデイサービス、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所では、施設長になるための資格要件はとくに定められていません。そのため、介護現場で経験を積みつつ、有料老人ホームやデイサービス、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所の施設長や責任者をめざすことは可能です。こうした施設で責任者を募集する場合、看護師の資格を所有する人を優遇していることが多いようです。
一方、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、グループホーム、小規模多機能型居宅介護の施設長になるには、一定の資格要件を満たさなければなりません。これらの施設で施設長をめざしたい場合は、看護師として働きながら、講習会や研修を受ける必要があります。
>介護施設の施設長の募集要件を確認する
介護施設で看護の仕事をするにあたり、役立つ本をいくつかご紹介します。
「ケアマネ・福祉職のためのモチベーションマネジメント:折れない心を育てる21の技法」
介護職などの福祉職は、常に相手に対して誠実に対応し、自分の感情を抑え続けることが必要とされています。その結果、心が折れたり働く意欲が下がってしまうことも。
同書では、ストレスに負けない21個のモチベーションメソッドを掲載。高齢者介護の職場ではじめて働く看護師にオススメです。
「マンガでわかる 拘縮を予防・改善する介護技術」
一般的な病院やクリニックと比べ、拘縮で悩む高齢者が多いのが介護施設です。
同書は、拘縮のつらさを理解し適切なケアを実践するための一冊。マンガにすることで、拘縮がある人のつらさやケアの技術についても、イメージしやすくなっています。
「介護現場で使える 急変時対応便利帖」
医師が常駐しないデイサービスでは、看護師が利用者の緊急時に対応します。同書は、利用者の緊急時にどう対応するかをまとめたハンドブック。
迅速に正しい判断を下すためにはどうしたらいいのか、「急変時対応の基本技術」「症状別・即救急車を呼ぶべき症状」「まず現場で対応・急変時対応」の3つのパートに分けて紹介しています。
介護施設は病院とは違って、利用者の「生活の場」。
治療を目的とする病院とは違い医療行為は少なくなりますが、その分じっくりと利用者と関わることができるのもメリットです。
介護施設の医療従事者は看護師のみであるため、緊張感をもって仕事に取り組める環境で、看護師として、やりがいも十分に感じることができます。
公的施設か民間施設か、サービス内容や定員によって看護師に求められるスキルや能力も変わってくるので、まずは求人をチェックすることから始めてみましょう。
急性期病院から有料老人ホームへ、復職でデイサービスへ、など
■看護師、栄養士、PT、歯科衛生士…【医療系職種の介護 志望動機】例文集
高齢者が好き、チームで働くことを重視、など
■人の役に立ちたい・世話好き…【性格タイプ別 介護の志望動機】例文集
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