理学療法士になるにはどのような方法があるのでしょうか。今回は理学療法士になるのに必要な国家試験の受験資格や試験内容を詳しく解説します。受験資格を得るために欠かせない養成校の選び方やそれぞれの料金もご紹介するので、理学療法士への就職・転職を考えている人はぜひ参考にしてみてくださいね。
1 理学療法士になるには?
2 理学療法士の国家試験の受験資格を得る方法
3 理学療法士国家試験の概要
4 理学療法士国家試験の試験内容
5 理学療法士国家試験の合格率
6 理学療法士の免許を申請する際の注意点
7 理学療法士になるには養成校の卒業と国家試験突破が必要
理学療法士になるには以下の4つのステップを完了する必要があります。
1.養成校を卒業する
2.国家試験に合格する
3.免許申請をする
4.免許証を受け取る
理学療法士とは、「理学療法士国家試験」に合格することで得られる資格です。資格取得後は、申請して理学療法士としての登録を行うことで始めて働くことができます。
国家試験の受験資格を得るためには、指定された養成校で3年以上学び、必要な知識と技術を身につけた上で卒業する必要があります(作業療法士の資格保有者は養成校で2年以上学べば受験資格を獲得)。
国家試験の受験資格を得るためには、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した養成校を卒業する必要があります。
養成校には、4年制大学と3年制の短期大学、3年制と4年制の専門学校、また視覚障害者を対象とした特別支援学校といった種類があり、希望に応じて選択できます。
養成校では解剖学や生理学、病理学といった医学の基礎を学ぶほか、理学療法に必要な知識である運動療法、物理療法、動作分析などを学びます。基本的にどの養成校でも、目標のひとつとして理学療法士国家試験の突破を掲げているので、試験対策も念入りに行われると考えて問題ないでしょう。
1年次は座学が中心ですが、年次が上がるにつれ、医療現場での「臨床実習」も行われ、実際に働く現場の雰囲気をつかむことができます。
4年間かけて理学療法に関わる知識や技術をしっかり学べる点が大きな特徴です。
最新のリハビリ機器が導入されていたり、業務で必要なコミュニケーション能力を伸ばすことに力を入れていたりと、学校によって特色があるので、入学前に学校案内などで調べてみるとよいでしょう。
4年制大学を卒業すると、専門分野における能力や業績の証明である「学士」を取得できるので、就職活動に有利に働く場合もあります。
学費の目安は国公立大学であれば年間約60万円、私立大学は年間約140万から200万円ほどと大学によって幅があります。国公立、私立ともに初年度は入学費がさらに30万円ほどかかります。
短期大学は3年で卒業するため、4年制大学より1年早く国家試験の受験資格を得られます。3年間で必要な知識や技術を身につける必要があるため、4年制大学に比べてカリキュラムがタイトになる点は押さえておきましょう。
短期大学を卒業すると「短期大学士」を取得でき、専門的な知識を身につけている証明となります。また、短期大学士を持っている場合、4年制大学への4年次編入も可能です。
学校数は多くありませんが、夜間の定員を設けている短期大学もあり、社会人でも比較的通いやすいでしょう。
学費の目安は年間約115万円から170万円ほど。このほか入学金が25万円ほどかかります。
専門学校には、3年制と4年制の2種類があります。
3年制の場合、1・2年次に教養基礎と専門科目を学び、3年次には臨床実習に入り実習経験を積みます。一方4年制では、1年次に教養基礎、2年次に専門科目基礎、3年次に専門科目を学ぶのが一般的です。4年次には実習を行います。
3年制専門学校を卒業した人には大学への編入学が認められる「専門士」が、4年制専門学校を卒業した人には「高度専門士」が付与されます。高度専門士は大卒の「学士」と同等以上の学力があることを証明するもので、大学院への進学も可能です。
学費の目安は、3年制で年間約100万円、4年制で約175万円です。夜間の専門学校は授業数が少なく、昼間と比較して学費は低い傾向にあります。
理学療法士になるために避けては通れない国家試験。まずは、日程や試験会場、受験料などをもとに、いつの試験を受けるか目標を立てましょう。
試験は1年に1回です。例年2月下旬頃に実施されており、願書の受付は、例年12月中旬から1月初旬に行われます。厚生労働省のホームページでは秋ごろに翌年の日程が更新されるので、必ず確認しましょう。合格発表は3月下旬頃行われます。こちらも厚生労働省ホームページの資格・試験情報のページに、合格者の受験地と受験番号が掲載されます。
試験時間は午前160分と午後160分の合計320分(5時間20分)です。
理学療法士国家試験の試験会場は、北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、福岡県、沖縄県の計8カ所です。
ただし、視力障害がある人が受ける口述試験・実技試験の試験地は東京都のみなので、注意しましょう。移動手段や宿泊先を事前に確認しておくと安心です。
受験手数料は10,100円です。
該当する額の収入印紙を受験願書に貼って支払います。
その他、返信用封筒として長形3号(縦23.5cm×横12cm)の封筒に書留代金を含めた郵便切手を貼りつけて同封する必要があるので、準備を忘れないようにしましょう。
試験内容は解剖学や生物学などの「一般問題」と運動学や臨床心理学などの「実地問題」の2科目によって構成されています(重度の視覚障害がある人は実地問題の代わりに口述試験及び実地試験を受験)。
280点満点で、一般問題160点満点・実地問題120点満点の配分です。
例年、「総得点で60%程度」かつ「実地問題で35%程度」の得点がおおよその合格基準となっています。
それぞれ、どんな科目で構成されているのか、どう対策すべきか見ていきましょう。
一般問題は上記8科目から全160問出題されます。1問1点の160点満点です。問題形式は五肢択一式か五肢択二式で、マークシートに回答します。
基本的には養成校の講義で学習する範囲から出題されますが、いずれも専門性は高いため入念な準備が必要でしょう。
実地問題は上記5科目から全40問出題されます。1問3点の120点満点です。実地問題の問題形式も、一般問題と同様に五肢択一式か五肢択二式です。
養成校の講義で学習する内容にくわえて、実技や実習で学習した内容も問われます。
重度視力障害者を対象に、実地問題の代わりに行われる試験です。上記5科目の中から全部で40問出題され、1問3点の120点満点で計算されます。
実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2024年(59回) | 12,629人 | 11,266人 | 89.2% |
2023年(58回) | 12,948人 | 11,312人 | 87.4% |
2022年(57回) | 12,685人 | 10,096人 | 79.6% |
2021年(56回) | 11,946人 | 9,434人 | 79.0% |
2020年(55回) | 12,283人 | 10,608人 | 86.4% |
直近5年間の合格率は80%前後と比較的高い傾向にあります。合格率がやや下がった57回と56回の合格率をみても、5人の受験者のうち4人は合格している計算です。しっかり対策して臨めば、合格は難しくない試験といえるでしょう。
国家試験に合格しても、必要な手続きが完了するまで理学療法士として働くことはできません。試験合格後、住所登録している地域の保健所で免許申請を行い、理学療法士の登録をする必要があります。登録される前に業務に従事すると行政処分の対象となるので注意しましょう。
免許登録後、免許証が届くまでにはおよそ2カ月から3カ月ほどかかります。勤務先によっては免許証の提示を求められますが、新卒で4月から働くとなると用意が間に合いません。その場合は代わりに「登録済証明書」を発行してもらい、就職先に提出します。
理学療法士の免許は、一度習得すれば削除申請の手続きをしない限り有効です。更新の必要もなく、免許保持者が死亡や失踪の宣告を受けた場合にのみ名簿登録の削除申請と免許証の返納が求められます。
理学療法士として働くには国家試験の突破が不可欠です。受験資格を満たすための養成校は全国に多数あるので、年次や学費などに応じて自分にあった学校を探しましょう。
理学療法士国家試験の合格率は80%前後と、しっかり準備をすれば十分に合格できる内容です。養成校で身につけた知識や技術を試験の場で存分に発揮するためにも、万全の準備をして臨みましょう。
人口のおよそ4人に1人が65歳以上である高齢化社会において、リハビリのサポートができる理学療法士は医療や介護の現場から必要とされている職種です。
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