心理カウンセラー 篠 雅行さん
介護の仕事は、利用者の生活に寄り添う仕事。人として成長することもでき、他の仕事に代えがたい魅力があります。
しかし一方で、肉体的にも精神的にもハードな仕事であるのも事実。積もり積もった日々のストレスで、仕事の喜びを感じられなくなったり、イライラしたり…
今週からは、そんなストレスの多い介護の現場で日々頑張るみなさんをサポートする企画をスタート。
心理カウンセラーの篠雅行さんが、みなさんのお悩みにアドバイスしてくれます。
篠さんは、もともと介護福祉士。介護の仕事をしながら認定心理士の資格を取得し、現在は障害者授産施設で介護職をしながら、カウンセラーとして仕事をしています。
次回からは、毎週、具体的なお悩み実例をもとにアドバイスいただきますが、今回は篠さんのご紹介も兼ねて、介護職からカウンセラーになられた理由を聞いてみました。
Q.どんな介護現場で働いてこられたのですか?
老人ホーム、在宅介護事業所、障害者授産施設(障害のある方に就労の場を用意し技能取得を手助けする施設)などで、10年間介護職として働いてきました。
高齢の方はもちろん、認知症、身体障害、発達障害、精神障害などを抱えている方と、日々を過ごしてきました。中間管理職として上司と現場の板挟みで悩むこともありましたね。
Q.カウンセラーになったのは、その後ですか?
「カウンセリング」との出会いは、「介護」との出会いよりも前なんです。
私は、小学生の高学年から「どもり症(吃音症)」になりました。キッカケは親友からのいじめ。小・中・高と、どもりに悩みながら成長してきましたが、大学へ入りその悩みが深刻に。自分に自信が持てず、バイトも怖くてできず、学校に行く気力も失ってしまいました。でも、このままではいけない!と、どもりに向き合うことを決意。同じ悩みを持つ自助グループに参加しました。
その自助グループで「カウンセリング」に出会い、私の人生が変わったんです。そのグループは、吃音症を克服しようという方が集まったコミュニティでした。
みんな悩みを持って集まっているので暗いのかな?と思ったら、そのコミュニュティはとても明るく楽しく刺激的でした。社会で立派に活躍されている年上の方がたくさん参加され、皆が悩みながらもイキイキしていました。その理由が「グループカウンセリング」だったんです。心の内側を見つめ、お互いに愛を持って気持ちを語り合いました。私はこのグループに参加する中で、どもりを克服。生きる意欲がどんどん湧き、自信が出て、自分を好きなれました。
気の持ち方一つで、こんなに自分の意識が変わり、それに伴って自分の行動が変わる。そして、そんな自分に接する相手の態度も自然と変わる。驚きました。
ここからカウンセリングの勉強を始めたんです。
Q.すぐにカウンセラーにはならなかったんですか?
最初は「カウンセリング」との出会いから「人の心を扱う仕事」をしたいと、営業職を選択しました。
しかし、残念ながら自分には合っていませんでした。健康食品の営業だったんですが、自分が好きでもないものを勧めたり、誇張するような営業トークに抵抗があって…営業成績はビリでした(苦笑)。
「自分は戦う生き物」ではなく「人を癒す生き物」だと気づき、「人を癒す」介護を選択したんです。
Q.「人を癒す」介護の仕事になって、どうでしたか?
介護の仕事に就いてみると、スタッフの入れ替わりの激しさに驚きました。もちろん、他人事ではなく私も何度も退職を考え、実際に業界内で2回転職しました。
「介護の仕事特有のストレス」「職場の人間関係」「運営との軋轢」…
利用者さんを癒すことも必要だけれど、介護業界で働く人自身にも癒しが必要なのでは、と感じましたね。
介護職の退職理由には、給料が安いことや、仕事の過酷さもあります。ただ、私が感じた退職理由の多くは「人として大事に扱われてない(と感じる)」ということでした。
介護の仕事を支えているのは間違いなく「人」。介護をする人が幸せでないと、利用者さんも幸せになれません。
心理カウンセリングには、コミュニケーション力をつけたり、ありのままの自分を肯定できたりという効果があります。介護職の方にこそカウンセラーが必要。これは自分の出番だ!と感じました。
私のアドバイスが少しでも参考になり、介護業界で働くみなさんが充実して仕事ができるように、そして利用者さんにも笑顔が広がっていくようにしていきたい、と思っています。
プロフィール
篠雅行(しの・まさゆき)
老人ホームや在宅介護事業所、障害者授産施設で介護職を務めるなかで、介護業界で働く人を精神的にサポートしたいと思い、カウンセラーの勉強を始める。介護福祉士、認定心理士、一般社団法人心理技能振興会 心理カウンセラーの資格を持つ。
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