介護の仕事は、利用者の生活に寄り添う仕事。人として成長することもでき、他の仕事に代えがたい魅力があります。しかし一方で、肉体的・精神的なストレスは少なくありません。介護特有の仕事のストレス、人間関係のストレス、給与や体力への不安…
介護福祉士・心理カウンセラーの篠雅行さんがアナタのお悩みにアドバイスします。
今週のお悩み事例
(さとしさん 訪問介護事業所・サービス提供責任者 1年目 正規職員 28歳)
もともとグループホームで介護職員をしていましたが、社内の異動で訪問介護事業所のサービス提供責任者(*以下「サ責」)
になりました。
今の事業所では、私以外の職員は、全員パートさんです。面倒な仕事がすべて私にふりかかってきているように感じます。残業続きで休憩も取れません。休みの日にも、電話がかかってくるし、休んだ気になりません。本当に忙しい毎日にうんざり。正直、以前の職場に戻りたいです。
篠さんからのアドバイス
さとしさん、日々のお仕事本当にお疲れ様です。
私は、主任を2年経験した後、カウンセラーになるためにリーダーを後輩に引き継ぎました。それから9ヶ月ほどは教育係として新しい職員を教育したり、リーダーを支える立場で仕事をしました。そんな後ろから職場を支えていた9ヶ月間に、その立場だからこそ気づけたことがありました。
リーダーをやっている最中は無我夢中でわからなかったのですが、リーダーを降りて、客観的にみてみると「もっと仕事を他の職員に任せられたし、当たり前と思ってやっていたことは省ける」ということに気づけたんです。その渦中にいるときは、忙しさのあまり、考える時間も余裕もなくて、そのことに気づけていませんでした。
また、雑務を抱え込むことによって、忙しい自分に酔いしれ、自分の存在を誇示していた部分もあったのかもしれません。
確かに「サ責」は、さまざまな仕事を抱え込まなければいけない立場かもしれません。ハードな職種だというのもよく聞きます。しかし、それが義務であるならば、きっと他の人が「サ責」になったときも続きませんよね。
●もっとシンプルに、さとしさんが楽になるように、今やっていることの雑務を簡素化できませんか?
●人に任せることは、多少の経費をかけてでも任せられることはありませんか?
●やるのが当たり前と思っていることでも、よくよく考えたら他の人に任せられることはありませんか?
「簡素化する」、「仕事の進め方を変える」というのは、想像力が必要ですが、仕事の醍醐味でもあると思います。なんとか時間をつくって、落ち着いて考えてみることはできないでしょうか?
上司から前例がないからと反対されるかもしれませんが、人というのは現状維持したがる傾向があります。上司によっては、自分がやってきたという自負で、仕事のやり方を変えたがらない人もいるでしょう。だからこそ現場の負担が増し、辞めていく人が増える要因にもなったとも考えられます。必要なものであれば、経費をかけてでも、長く続けた方が会社的にもプラスに働くと思います。
さとしさんの発想や行動がイノベーションになるはずです。きっとそれが後輩のためにも会社のためにも必要なことだと思います。
「職員が無理をして継続している現場」と「職員が無理をしないで継続している現場」は明らかに違いますよね。本当に運営を考えている立場の人は、どちらが経費がかかるかわかると思いますので、さとしさんの提案を大事にしてくれると思います。そんな立場の人を探して、ぜひ相談してみて下さい。
プロフィール
篠雅行(しの・まさゆき)
老人ホームや在宅介護事業所、障害者授産施設で介護職を務めるなかで、介護業界で働く人を精神的にサポートしたいと思い、カウンセラーの勉強を始める。介護福祉士、認定心理士、一般社団法人心理技能振興会 心理カウンセラーの資格を持つ。
公開日:2015/1/22
最終更新日:2019/10/30