こんにちは、身体技法研究家の甲野陽紀です。押してもダメなら引いてみろ------とはよく聞く格言ですが、この格言のおもしろいところは、たんにあれこれ試してみろといっているのではなく、逆を試してみたら、といっているところではないでしょうか。試行錯誤にもやり方がある、ということですね。前回出た「思う」と「感じる」をどうつなげるか。そこにもきっとある方法があるはず、と思います。では、研究稽古へ!
<協力 身体技法研究家 甲野陽紀氏/文・構成 佐藤大成>
タ はい、準備は出来ました。両手に棒をもったまま、陽紀先生と向き合って立つ、と。これでいいですね?
陽 では、始めましょうか。といっても、タネエディターはそのままの姿勢で立っているだけでいいですよ。リクエストは順に出していきますので。
タ わかりました。
陽 これから、わたしは右手でタネエディターの肩のあたりに触れて、カラダを揺らそうとしますから、ぐらつかないようにがんばってみてください。
タ 以前、指先の力を稽古したときにもやりましたね。カラダの安定感がどう変わるかということですよね。今回は、ぐらつかないように、とだけ考えればいいんですか?
陽 タネエディターなりのふだんのやりかたでいいですよ。
タ じゃあ、ぼくなりに、ぐらつかないように何かを「思って」みます。
陽 はい、よろしくお願いします。いまわたしの右手はタネエディターの肩に軽く触れた状態です。これから、少し揺らす感じにしてみますよ。
タ 了解です……ぐらつかないように、というのもむずかしいですね。踏ん張る感じがいいんですかね……
陽 もう少し揺らしてみますよ。
タ あー、これは……効きますねぇ、おっとっと……
陽 どうでしょう?
タ いやー、案外というか、ぜんぜん、もちこたえられなかったです。
陽 ふつうはそうなると思いますからご心配なく。横からくる力に抵抗するのはかなり難しいことなんです。
タ そう聞くとちょっと安心しますけど。でも“秘策”があるんですよね?
陽 といっても、見た目は、ほとんど変わらないですけどね。その前にひとつ質問ですが、ぐらつかないようにと考えたとき、タネエディターとしてはどんなことを「思って」ましたか?
タ そうですねえ……ぐらつかないように、全体的に注意を払っていた気がしますね。どこがどう、ということじゃなくて。
陽 棒をもつ手もしっかりと、という感じでした?
タ ええ、そうだったと思います。電車に乗っているときに横揺れに対応するには何かにつかまったりいる方がいいですよね。そういう気持ちもあったのかもしれないですけど。
陽 なるほど。では、次はその「思う」とはちょっと違う「思う」をやってみて、カラダがどう「感じるか」をみてみましょうか。
タ 了解です!
タ やっぱり、“秘策”はありましたね(笑)!
陽 こんどはしっかりしましたよね。
タ 横からの力にちゃんと対応できましたねえ……理由がわからないのがちょっと悔しいんですが(笑)
陽 事実としていえるのは「思う」の方向を変えたということですよね。
タ いろいろ思わずに、「棒をもっている」ということだけを「思って」みてください------といわれた通りにやってみただけなんですけど。
陽 はい、そういうふうに「思う」の方向を切り替えたことで、タネエディターのカラダの「感じる」にも何らかの変化が生じたということが考えられますよね?
タ なるほど。どう変わったのかを自分で解読するのはむずかしいのですが、それは考えられますよね。ひとつ自分でもわかるのは、最初の稽古のときは、ぐらつかないようにと考えて、棒をしっかりもとうとしていたんです。二度目の稽古ではその感じはなくなって、少しやわらかくもっていたような気がします。
陽 それは鋭いフィードバックですね。そのやわらかくもつ感じがカラダのつながり感によい影響を与えたのは間違いないと思いますよ。加えて、少なくとももうひとつ、変化がありましたね。
タ というと?
陽 最初の稽古ではぐらつかないようにと「全体的に注意を払っていた」のが、二度目には「棒をもっているということだけを思う」に変わりました。簡単にいうと「いろんなことを思う」が「ひとつのことを思う」に変わったんです。
タ はー、そういうことですか。だとすると、そういうふうに「思う」が変わったことをカラダもちゃんと「感じた」ということなんですね。片思いでも思い続けたらいいことある、ってことですかねえ……なんか希望がもてますね(笑) それにしても、いつも思いますけど、人間のカラダってほんとうにおもしろいですね!
陽 はい。まだまだ続きますよ!
◆ Profile ◆
甲野陽紀(こうの•はるのり)
身体技法研究家。東京•多摩市生まれ。高校卒業後、「古武術介護」の提案者としても知られる武術研究家の父、甲野善紀氏の補佐役として各地の講習会などに同行する中で、ささいな動きの違いから感覚がさまざまに変わっていくカラダの不思議さ、奥深さを改めて実感し、特定の方法やジャンルによらない独自の視点からの身体技法の研究を始める。見る、触れる、曲げる、といった、わたしたちが日々、何気なく行っている動作からカラダを見つめ直すことで新しい感覚が生まれていく“発見の体験”は、多くの方の共感を呼び、全国各地の講習会、講演会などで活躍中。スポーツや武術、音楽、医療、介護、運動嫌いの方のための身体講座まで、講座のテーマは幅広く開かれており、ファン層も多彩。都内では、朝日カルチャーセンター新宿•湘南、よみうりカルチャー自由が丘などで定期的に講習会を開催している。日々のくわしい活動はオフィシャルウエブサイトへ。
http://hkhp.p2.bindsite.jp/index.html
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