■書名:もう3Kとはいわせない 5Kといわれる介護施設の秘密
■著者:藤本 加代子とエスコート達
■出版社:PHP研究所
■発行年月:2017年3月
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理想の介護施設作りは、職員の笑顔から
3Kならぬ5K、それもポジティブな意味で「きれい、かっこいい、給料が高い、健康になる、感謝される」施設を実現した社会福祉法人があるのだという。
本書は、その法人の理事長 藤本加代子さんと職員たちが、介護の仕事へのイメージが変わることを願って、介護の実態や理想などについて書いたものだ。
藤本さんが理事長を務める隆生福祉会は、特別養護老人ホーム・グループホーム・デイサービスなどを広く展開する法人だ。
どの施設においても笑顔があふれ、福祉先進国フィンランドからも高く評価されているのだという。その成功のカギは、どうやら法人理念にあるようなのだ。
隆生福祉会の法人理念とは、「五つの笑顔」。
――つまり「ご利用者様の笑顔」「ご家族様の笑顔」「地域の笑顔」「職員の笑顔」「法人の笑顔」のこと。そして「五つの笑顔」の中でも特に、「職員の笑顔」を出発点と位置づけている。
<笑顔は連鎖するもの。職員がしあわせで、いつも自然な笑顔で誰とでも接することができれば、ご利用者様、ご家族様、地域、法人の笑顔を引き出すことができます。職員がいつも笑顔でいるためには、働きがいや働きやすさはとても重要です。>
同法人が5Kをかなえた秘密は、「職員の笑顔」を一番に考えて、職員の働きがいや働きやすさに気を配る組織だということにあるのではないだろうか。
「職員の笑顔」を側面から支えているのが、同法人ならではの「ゆめキャリア・アップ」システム。人は、夢や目標があると、がんばる力が自然にわいてくるもの。
このシステムが効果的に機能して、職員一人ひとりが自分に合った目標をみつけ、スキルアップを図っていける。
この「ゆめキャリア・アップ」システムの柱は研修制度で、階層別研修、職能研修、教養研修、海外研修と幅広い。中でも、フィンランド研修は大きな魅力になっているようだ。
スキルアップすると、それに応じて評価・処遇する制度も怠りなく、レベルに応じた処遇が用意されている。どうすれば職員が働きがいを感じて笑顔になれるのか、よく考えられたシステムだといえる。
<「ゆめキャリア・アップ」システムの大きな目的は、職員がさまざまな学びを通して責任感を身につけるとともに、やりがいや誇りをもって、それぞれの職務を遂行できるようにすることです。経営理念の「五つの笑顔」を実現するためには、その原点となる“人財”を育てることが大切なのです。>
こうした法人側の取り組みが確実に「職員の笑顔」につながっていることは、最終章で紹介された職員たちの声を読めばよくわかる。
彼らは、自分の職場を「介護の魅力に触れる体験ができる施設」だと話す。
「ご利用者様のお役に立つことができて、なおかつ自分も楽しめる。こんなに素晴らしい仕事はほかにはありません」という言葉も頼もしい。
本書は、介護の仕事について夢や希望を抱かせてくれる。介護の現状の知るための一つのサンプルとしても、一読をおすすめしたい。
著者プロフィール
藤本 加代子(ふじもと・かよこ)さん
専業主婦19年間の後、夫の急逝により事業を引き継ぐ。CS(顧客満足度)とES(従業員満足度)を経営の両輪にして事業を拡大し、現在、スタッフ650名を超えるフジモトゆめグループの最高経営責任者(CEO)。主な役職は、株式会社高等進学塾代表取締役、医療法人敬生会フジモト眼科会長、社会福祉法人隆生福祉会理事長、株式会社中西製作所社外取締役、関西経済同友会幹事、大阪府特別職報酬等審議会委員など。