■書名:ソーシャルワーカーという仕事
■著者:宮本 節子
■発行元:筑摩書房
■発行年月:2013年2月10日
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他者の人生に向き合うソーシャルワーカーの仕事とやりがいとは?
介護の仕事に携わる人の中には、社会福祉士の資格を取得し、いずれソーシャルワーカーとして活躍したいと考えている人もいるだろう。中には、ソーシャルワーカーから転職してきた人もいるかもしれない。
しかし一般的に、ソーシャルワーカーという仕事は、対象も活動範囲も広く、実際の業務内容については曖昧なイメージしか伝わっていないのではないだろうか。
そこで本書では、「ソーシャルワーカーとは」を丁寧に解説するところから始まり、仕事の魅力や面白さについてわかりやすく解説してくれる。ソーシャルワーカーを目指す人はもちろん、介護という社会福祉の一翼を担っている人たちにも、改めて仕事のやりがいを示し、勇気を与えてくれる一冊だ。
著者の宮本さんは、「他者の命に向き合うのが医者なら、他者の人生に向き合うのがソーシャルワーカー」と位置づけている。
<この仕事の特徴は、その人のみならず、その人が暮らしている環境をも視野に入れるという点にあり、ここが患者さん個人に焦点をあてる医療やいわゆる心理カウンセリングと違う点です。>
他者の人生をすべて理解することは不可能だ。だからこそ大切なのは、「どれだけその人の人生を追体験できるか、どれだけ豊かに想像できるか」だと宮本さんは言う。そのためのポイントとして、次の2つを挙げている。
●耳を傾け、目を凝らし、目の前の相談者から学び取ること。
●人類が蓄積してきた知から学び取ること。
人類が蓄積してきた知とは、たとえば文学や音楽、芸術、歴史、哲学などを指している。人間を理解するための様々な知的遺産からどれだけ学びとれるかが、ソーシャルワーカーに必要なアプローチだと言うのだ。つまり、自分自身を豊かにしなければ、人への思いは豊かに膨らまないということ。
この宮本さんの指摘は大切なメッセージではないだろうか。介護においても、知識を蓄え、技術を磨くことに一生懸命になり、目の前の利用者から学ぶという姿勢が二の次になってしまうことがある。そのうえ、「広く人間を理解するための学び」となると、それが必要だという意識自体を、持っていない人もいるだろう。
本書では、宮本さんが実際に関わった事例についても紹介されている。
たとえば、地下鉄の駅の入り口に寝転がり、「死ぬっきゃないんですよ」とつぶやくアルコール依存症の男性。小高い丘に自力で小屋を建てて住み着いた孤独な老人。骨折して三畳一間の部屋で動けなくなっていた老女……。それらのエピソードから、ソーシャルワーカーがどのような方法や手段を駆使して関わっているかを学ぶことができる。そして、ソーシャルワーカーという仕事のやりがいや、喜びも伝わってくる。
一方で、宮本さんは常にこれで良かったのかと自問自答を繰り返す。「社会の極めつけの矛盾」と遭遇し対処に苦悩したり、「老人の命を守ることと、その人らしい老後の暮らしを支えること」の難しさに悩んだりする。そこに読者は共感できるのではないだろうか。
<社会で生きていく中である種の生きづらさに遭遇してそれを緩和したい、よりよく生きていきたいと人が願う時、ソーシャルワーカーの出番がきます。>
<ソーシャルワーカーは、本当に起伏に富んだ人生を歩み、しかもどん底にありながら粘り強く生き抜いている人と出会い、いっときはその人の横を伴走して、その人と人生の歩みを共にすることができるのです>
介護の仕事のやりがいに迷ったとき、利用者に寄り添うことに悩んだとき、手に取ってみてほしい一冊だ。
<小田>
著者プロフィール
宮本 節子(みやもと・せつこ)さん
1943年生まれ。日本社会事業大学卒業後、地方公務員福祉上級職として、16年間勤務。89年から全国社会福祉協議会社会福祉研修センター専任教員、95年から2004年まで、日本社会事業大学付属日本社会事業学校専任教員としてソーシャルワーカーの育成に携わる。著書に、『地域に拓かれた施設づくり』(全国社会福祉協議会)など。
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