■書名:99の言葉の杖〜介護福祉経営士サブテキスト人間力シリーズ1〜
■監修:早川浩士
■発行所:日本医療企画
■発行日:2013年6月
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介護職のプロ、リーダーを目指す人を力強く支え、鍛える至言集
万象具徳、知目行足、企者不立……目次には、ふだん見慣れない四字熟語がずらり。読み方もわからないまま、選ばれた言葉の強烈な引力にひかれて読み進んでいくと、意外なことに、生き生きと語られるその背景にある故事や介護現場でのエピソードなどに触れるうちに、すっとその意味が腑に落ちてくる――!
サブタイトルにあるように、本書は介護福祉経営士を目指す人に向けた副読本として編まれたもの。読者と正面から向き合う明快な姿勢が功を奏して、古典や故事成語の解説にありがちな知識然としたところがなく、介護経営に精通した著者の力強い文章は、現場にしろ、経営にしろ、介護に何かしら携わる人にはたしかな手触りのあるものとして響くに違いない、と思わせる。名言、至言の解説を通じたエッセイとして楽しみながら読むこともできるのもうれしいところ。
<心得編><人間関係編><人材育成編><経営編>の4つの章に、著者が選んだ99の由緒ある言葉を配置する構成。故事成語になじみの少ないない人にはかなり骨っぽく感じられる言葉も多いが、切磋琢磨、以心伝心、是々非々など、いまも日常語として使われている言葉もいくつか含まれているので、親しみのある言葉からはいっていくのもいい。見開き単位で、ひとつの語を解説する流れになっており、テーマを追いながらでも、たまたま開いたところからでも、読み進むことができるようになっている。
冒頭に紹介した言葉の意味に触れると、万象具徳は「人にも物にもすべてのものに良さや取り柄があるということ」、知目行足は「知恵の目とそれにもとづいた修行や実践があって、はじめて悟りに至ることができるということ」、企者不立は「(企者とは爪立つ人の意で、爪先立つように立っている人のこと)爪先立ちでは長く立っていられないように、背伸びをして他者と競おうとしても長続きしないこと」を表しているという。
本書のはじまりに置かれている「常在学場」は著者の造語で、元は長岡藩(現在の新潟県長岡市)の藩風、藩訓として知られた「常在戦場」という。新潟は著者の生地でもあり思いと深く重なる言葉なのかと推察される。ひとつひとつの漢字をじっと眺めていると、意味も自ずと立ち上がってくる気がするが、著者はこう語ってこの項を締めくくっている――<常に在るところ学びの場、常に学びの場に在り>
本書に収められた言葉は、『論語』や『荘子』といっただれもが知る古典をはじめ、すべて時間という砥石で錬磨され、生き残ってきた文章や言葉に由来する。ただ知るのではなく、味わい身体で実感することで言葉は生きた力となり、介護職のリーダーや介護事業の経営を目指す人、いままさに奮闘する人、それぞれの日々を支えてくれる「言葉の杖」となってくれるのではないだろうか。
<佐藤>
著者プロフィール
早川浩士(はやかわ•ひろし)さん。1953年、新潟市生まれ。中央大学経済学部卒業。経営コンサルタント。経営者や組織のリーダーのための研修会の主宰、講演、著書の執筆のほか、 介護経営情報誌『介護ビジョン』の編集委員をつとめるなど、多方面で活躍している。
有限会社ハヤカワプランニング代表取締役。著書に本書のほか、『早川浩士の常在学場』『介護人財創造塾』などがある