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2015年05月21日

認知症の人を守る「成年後見制度」…なのに、親族後見人による横領が多発? | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

image1認知症や知的障害、精神障害などで適切な判断が難しくなった人の財産や権利を守り、生活を支援する「成年後見制度」
増え続ける認知症の人の権利を守るため、国は成年後見制度の利用を進めています。

成年後見制度には、判断力が衰えた人が利用できる「法定後見」と、将来に備えて利用する「任意後見」があります。

法定後見は、配偶者や四親等内の親族などが家庭裁判所に成年後見開始の申し立てをすると、家庭裁判所が後見人を選任。成年後見制度を利用できるようになります。
これまでは、申し立てるのも後見人を務めるのも、多くの場合、親族でした。しかし、最近、申し立てを市町村長(首長)が行うこと(*1)や、後見人に弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職が選任されることが増えています。なぜでしょうか。


行政が探した親族が申し立てを断る場合も

首長による成年後見開始の申し立てが増えているのは、一つには、かつてであれば見過ごされていた認知症の人たちに、しっかり後見人が選任されているから。判断力の衰えた人達の権利を守ろうという意識が高まっているということです。

もう一つには、成年後見の必要性を感じて動き出すのが、親族ではなく介護関係者や行政担当者である場合が多くなってきたから。成年後見が必要になるのは、認知症の人の一人暮らしなどで、悪徳商法の被害にあっていたり、介護施設への入所が必要になったり、生活を維持していくうえで権利を守る支援が必要な場合です。
身近に親族がいないと、そうした状況であることに気づかれにくく、特に最近は、一人暮らしや認認介護の世帯も増えています。そのため、気づいた介護関係者等が行政に支援の必要性について連絡するところから動き出すケースが増えています。

介護関係者が連絡をする場合、そこから、成年後見開始の申し立てをしてもらうために、行政が親族を探すのですが、親族が見つかっても、申し立てをしてくれるとは限りません。申し立てのためには、たくさんの書類を用意するなど手間も費用もかかるため、負担の大きさから断られるケースもあります。親族が申し立てをしない場合や、そもそも申し立てをできる親族がいない場合などには、行政が書類を整え、首長名で申し立てをするのです。


親族後見人による横領が2年弱で40億円以上!

image2一方、後見開始の申し立てをしたとき、親族ではなく、弁護士や社会福祉士などの専門職が後見人に選任されることが増えているのは、親族による財産の横領事件が後を絶たないからです。

2015年1月にも、高知県で65歳の弟の後見人を務める姉が650万円を横領した事件がありましたが(*2)、これは氷山の一角。最高裁の調査では、2010年6月から2012年3月の1年10カ月間に発覚した財産使い込みなどの成年後見人らの不正行為は538件、被害額はなんと合計計約52億6千万円!(*3)。その9割、つまり約47億円が親族による使い込みだとされています。

このため、現在は、親族による後見人は認めない方向に。認める場合も、後見人の業務をチェックする、弁護士等の専門職が務める「後見監督人」を併せて選任しています。被後見人の財産を守るため、このほかにも日常的に使うお金だけを後見人が管理し、それ以外の財産は信託銀行等に預ける「後見制度支援信託制度」も導入されています。

この制度を利用すると、信託した財産は家庭裁判所の指示なしでは引き出せなくなるため、親族が後見人になることも可能です。ただし、利用の必要性については、家庭裁判所、家庭裁判所が選任した専門職後見人が判断することになります。専門職後見人が信託制度の利用手続きを行ったあと、親族後見人に引き継がれるという手順です。

認知症の人を支援する介護職からすれば、成年後見制度の利用が始まればひと安心、というところ。しかし、高知のケースのように成年後見監督人が選任されていても、横領が起こることがあります。認知症の人については、後見人がいても、不審点がないかチェックする目を持っていた方が良さそうです。

<文:宮下公美子>

*1 身寄りない高齢者守れ 首長の「成年後見」申し立て急増(朝日新聞デジタル 2015年4月5日)

*2 着服:650万円 容疑で成年後見人逮捕−−高知地検 /高知(毎日新聞 2015年01月29日)

*3 「親族関係でも刑を免除せず」 成年後見人の横領事件で最高裁 (日本経済新聞 2012年10月11日)

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