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2016年09月01日

お酒の飲み過ぎでうつや認知症に?介護職が知るべきアルコール依存症の知識 | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

身近なのに意外に知られていないアルコール依存症

image001高齢者の支援をしている介護職ならば、アルコールの問題を持つ人に出会うこともあると思います。アルコール依存症は、多量の飲酒を習慣的に続けていくことで、脳が変質して起こる病気です。高齢になると体内の水分量が減るため、少しのアルコールでも血液中のアルコール濃度が高まり、酔いが回りやすくなります。さらに、アルコールを分解する力も弱くなります。そのため、もともとお酒好きな人が、現役時代のペースでのお酒を飲み続けると、アルコール依存症のリスクが高まってしまうのです。

また、あなた自身の周囲には、アルコールの問題を抱えている人はいないでしょうか。24時間の交替制で働く施設の介護職の場合、不規則な生活でなかなか寝付けない時に、寝酒を飲むという人もいるかもしれません。あるいは、仕事のストレスをお酒で解消しているという人はいないでしょうか。こうした飲酒行動が習慣化すると、アルコール依存症につながってしまう場合もあります。

身近な病気でありながら、あまり知られていないアルコール依存症について解説し、注意を促すガイドラインが、2016年3月に作成されています(*1)。このガイドラインなどを参考に、アルコール依存症について2回に分けてお伝えしましょう。


“お酒を飲みたい衝動”をコントロールできなくなったら危険

単なる大酒飲みとアルコール依存症。この二つは、どこが違うのでしょうか。わかりやすい違いは、飲んではいけないときに飲まずにいられるかどうかです。嫌なことがあって憂さ晴らしに飲んだら、飲み過ぎて店で眠り込んでしまった。一度や二度、そういう経験がある人はいると思います。それでも、たとえば飲み会の時、明日は早番だからお酒は控えめにしておこうと考えて、飲むペースを落とすことができる人は問題ありません。

しかし、早番の日に二日酔いで遅刻したことを怒られ、次の早番の前夜、「今日は飲むまい」と思ったのにまた飲み過ぎてしまう。そんなことが度重なるのであれば、アルコール依存症を疑った方がいいかもしれません。この日だけは飲んではいけない。そんな日に限って飲んでしまうのが、アルコール依存症です。それは、意志の強さ、弱さなど個人の性格とは関係ありません。脳が継続的な多量のアルコール摂取によって変質して、飲む場所、時間、量など、お酒を飲みたいという欲求を、自分でコントロールできなくなってしまうのです。

厚生労働省の「健康日本21」(*2)では、適度な飲酒量を1日平均20gとしています。このグラム数は、純粋なアルコールそのものの量。ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、35度の焼酎なら1合、ワインなら120ml程度です。一方、問題のある「多量飲酒」は1日平均60g以上。ビールなら中瓶3本、日本酒なら3合、35度の焼酎なら3合、ワインなら360ml以上です。周囲に、「多量飲酒」が習慣化している人はいないでしょうか? アルコール依存症の診断基準は下記の通りです。

【ICD-10(WHOの定めた診断基準)によるアルコール依存症】
1.お酒を飲みたい気持ちがとても強い、または飲まざるを得ない気持ちが強い
2.お酒を飲む量、飲む時間などのコントロールができない
3.お酒の飲む量を急に減らす、もしくはゼロにすると症状が出現する
4.お酒を飲み続けているうちに、酔うまでに必要な量が増える
5.お酒を飲むことが生活の中心となっている
6.よくない結果が出ることがわかっていてもお酒を飲んでしまう

以上6つのうち1年間に3つ以上が同時に当てはまる場合にアルコール依存症と診断
*厚生労働省「市民のためのお酒とアルコール依存症を理解するためのガイドライン」平成28年

飲酒に問題があるかどうかは、「SNAPPY飲酒チェックツール(*3)」でチェックすることができます。心配な方はぜひチェックしてみてください。


高齢者はお酒の飲み過ぎが続くと、認知症リスクが高まる

image003アルコール依存症が怖いのは、本人も気づかないうちになってしまう場合があることです。寝酒やお酒でのストレス解消が習慣化するうちに、以前と同じ量のお酒では眠れなくなる。たくさんのお酒を飲んでも酔えない。ストレスから逃れられない。そのために、徐々に飲酒量が増えていくことがあります。気づいたときには度を超した飲酒が習慣化し、お酒が手放せなくなっている。そうなると、アルコール依存症の治療が必要です。

高齢者、特に独居の男性の場合、お酒だけが友だち、という人もいます。話し相手もなく、お酒以外に楽しみもない。飲み過ぎて問題を起こしても、身体を壊しても、心配してくれる人もいない。そんな状況では、その寂しさ、むなしさをお酒で忘れようと、ますます飲酒量が増えてしまうこともあります。

また、お酒の飲み過ぎが続くと、うつ症状を引き起こすこともあります。このままお酒を飲み続けて死んでしまってもいい。うつの影響が現れたアルコール依存症の人は、そんなふうに考えるようになることもあります。さらには、習慣的に多量のお酒を飲むことは、認知症のリスクを高めてしまうことも明らかになっています。誤った飲酒習慣は、命取りになりかねないのです。

では、アルコール依存症が疑われる人に、介護職はどう対応したらいいのでしょうか。それは次回、お伝えしたいと思います。

<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>

*1 市民のための お酒とアルコール依存症を理解するためのガイドライン
*2 健康日本21
*3 SNAPPY飲酒チェックツール

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