2040年、東京では高齢者の一人暮らし世帯の割合が全体の約3割に
2019年4月、日本の全世帯のうち、一人暮らしの世帯は、2040年に3割を超えるという推計が示されました(*)。大都市圏で一人暮らし世帯が増加し、中でも東京は5割に迫るほど一人暮らし世帯が増加すると予想されています。
ただし、これは若い世代も含めての一人暮らし世帯のこと。
それでは、65歳以上の高齢者がいる世帯は、どのような状況になると予想されているのでしょうか。
『世帯主が65歳以上である世帯』の増加は深刻です。
全世帯に占める『世帯主が65歳以上である世帯』の割合は、2040年には45道府県で40%以上になると言われています。
しかも、『世帯主が65歳以上である世帯』のうちの30%超が、2040年には一人暮らし世帯になると推計されています。中には、『世帯主が65歳以上である世帯』のうち40%超が一人暮らしになると推計されている都道府県が、東京都、大阪府をはじめ、15もあるというのです。
日本全体の全世帯に占める割合で言えば、2040年には17.7%が65歳以上の一人暮らし世帯になる計算です。中でも東京都では、65歳以上の一人暮らし世帯が全体の29.2%にも上るとの推計が示されています。
介護職不足と同時に「介護職の高齢化」も問題に
2025年には高齢化率が30%を超え、34万人の介護職が不足すると言われています。
高齢化率が35%を超えると言われている2040年には、一体どれほどの介護職が不足することになるのでしょう。
いま、介護職、特に在宅介護を担うホームヘルパーは50代以上が中心です。現在は介護職として働いている人の中にも、2040年には介護される側に回っている人もいることでしょう。
求人難が続いている状況で、高齢者を支える側だった人たちがいずれは支えられる側に回る将来が、否応なくやってくることになります。
こうした日本の将来像について、一般の人たちだけでなく介護業界においても、危機感の薄い人から強い危機感を持つ人まで、かなりばらつきがあるのが現状です。
そのこと自体が危機的状況だともいえます。
高齢者介護の発想の転換「介護職がすべてをやらない」
こうした高齢者介護をめぐる危機的な将来について、特効薬はないかもしれません。ただ地道に打てる手をすべて打つことで、少しずつでも変えていくことはできるはずです。
例えば、介護職はケアのすべてを自分たちで担わなくては、という発想を変えることが必要です。
最近、国も推奨し、施設でよく取り入れられているのは、直接介護以外の介護周辺業務を切り分けて、介護職以外の職員に担ってもらうやり方です。
例えば、居室の清掃、お茶出し、配膳・下膳、更衣等の見守り、シーツ交換などが介護周辺業務にあたります。
介護職が本来担うべき業務は、要介護者が望む生活を実現するための支援です。これらの介護周辺業務を切り離すことで、介護職は本来業務に注力することができます。
在宅介護であれば、家族だけでなく、近隣住民、友人・知人、ボランティアの力を借りて、安否確認や服薬確認、デイサービスの送り出しなどを担ってもらうことも考えられます。
実際にこのような介護周辺業務を切り分けている介護事業所の中には、誰かひとりに負担がかかり過ぎないよう、複数の人たちに担ってもらうことを心掛けているという介護事業所もあります。介護職が全体をコーディネートし、できないときにはバックアップするという仕組みを作り、その仕組みがうまく動いていくように注力するというのです。
高齢者介護は社会全体の問題。周囲を巻き込む対策で解決を!
認知症を持つ人などを一方的に支援するのではなく、できることを担ってもらうことで、介護する側・される側の境目をグレーにしていく取り組みも徐々に増えています。
施設で運営する農業ハウスで施設入居者に野菜を栽培してもらい、採れた野菜の売り上げを入居者に還元する取り組みを行っている介護施設もあります。
また、大学の農学部と協働して農園を展開し、認知症や障害を持つ人たちとハーブや柑橘類を栽培して企業に販売する取り組みをしているNPO法人もあります。このNPO法人の取り組みは、柑橘類の栽培者を求めていた企業にとってもメリットがあり、かつ、地域おこしでもある、『win-win-winの取り組み』となっているのです。
介護業界の抱える課題を介護業界だけで解決しようとしても難しい場合もあります。
地域の課題や他の業界の課題と組み合わせて、それぞれにとってメリットのある仕組みを作っていくことで、持続可能な課題解決を図る。
これからはそんな発想が、介護業界に求められているように思います。
<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士 宮下公美子>
*2040年、3割超す 高齢・未婚加速 全都道府県で(2019年4月20日 毎日新聞)