高齢者の致死率が高い新型コロナウイルス
新型コロナウイルスの感染が拡大しています。
2月22日には介護老人保健施設の介護職ではない60代の男性職員の感染が明らかになりました(*1)。報道によると、重症とのこと。男性の一日も早い回復を祈ります。
男性が勤務する施設についての情報は報道されていないので状況は分かりませんが、施設内での感染がないのか気になります。中国での感染者およそ4万5000人分のデータが公表され、高齢者の致死率が高いことが明らかになっているからです(*2)。
全体の致死率が2.3%だとされている中、80代以上では致死率が14.8%。
そのほか、心臓などの循環器疾患がある人も致死率が高いことが分かっています。
そうしたハイリスクの人たちが多数で集団生活を送っている高齢者施設では、新型コロナウイルスの感染対策は非常に重要です。
※NHK NEWS WEBのデータから筆者が作成
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新型コロナウイルスの情報は介護現場に伝わっていますか?
皆さんの施設、事業所では、新型コロナウイルスの感染対策をされているでしょうか。
厚生労働省からは、都道府県・市町村の介護保険担当課に対して、1月末から、「介護保険最新情報」で新型コロナウイルス関連の通知が6通出ています。(2020年2月25日現在)
まず1月29日に、「『新型コロナウイルスに関するQ&A』等の周知について」を発出。
厚生労働省のサイトに掲載されている新型コロナウイルスについてのQ&Aや、、「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月)」、保育所における一般的な感染症対策についてまとめた「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」を確認して対策を講じるよう、関係機関に周知することを促しています。
その後も、新型コロナウイルス関連の通知を5本発出。重ねて、都道府県等に、管轄下の社会福祉施設等に感染症対策についての周知を求めています。
また、2月18日には、「社会福祉施設等の利用者等に新型コロナウイルス感染症が発生した場合等の対応」の通知を発出。
都道府県等に対して、
地域で新型コロナウイルスが流行し始めたら、状況に応じて社会福祉施設等に休業を要請するよう通知しています。
こうした情報は、介護現場にちゃんと伝わっているでしょうか?
マスク着用・うがい・手洗い・アルコール消毒などの徹底を
多くの介護施設では、施設内に「感染症対策委員会」などを置き、日頃から感染症対策に取り組んでいると思います。
新型コロナウイルスについても、基本的には日頃から行っている感染症対策を、より高いレベルで徹底すればよいのだと思います。
ただ、新型コロナウイルスの感染対策で難しいのは、このウイルスの特性がまだよく分かっていないことです。
集団感染が起きたクルーズ船の乗客には、14日間船内で待機して陰性だから下船したものの、その後、陽性反応が出た人がいます。これで、ウイルスに感染している人を特定する難しさが明らかになりました。
また、冒頭でお伝えした介護施設職員は、中国への渡航歴はなく、感染者との接触歴もないと報道されています。
であれば、
いつどこで感染するか分からないという意識を持って、
マスク着用、うがい、手洗い、アルコール消毒などを徹底することが大切です。
施設内にウイルスを持ち込まないために
ある施設では、出勤時に職員の手指のアルコール消毒と体温測定を徹底。37.5度以上の場合は自宅待機としています。
職員に感染が広がると、人員不足が起きる可能性もあり、その場合の対応についても検討しておくことが必要です。
一方、外から病原体を持ち込まないためには、家族等の面会の制限も検討する必要があります。過去、インフルエンザの流行時に面会を全面的に禁止し、家族からの衣類等の差し入れについても、施設玄関で職員が受け取る対応を行っていた施設もありました。
家族の面会制限は、入所者にとっても家族にとってもストレスになります。
しかし、高齢者の致死率が高い新型コロナウイルスについては、万一、施設内に持ち込まれたら、複数の重症者が出て、最悪の場合、命を落とす人が出る恐れがあります。
そうしたことを家族等に丁寧に伝え、理解を求めることが大切です。
ウイルスを持ち込まないため、職員の健康管理等を徹底する。
感染拡大状況を見て面会制限等を検討していく。
介護施設、介護サービス関係者には、早急に、そうした新型コロナウイルス感染対策を考え、徹底してほしいと思います。
<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士
宮下公美子>
*1
介護老人施設職員が新型コロナ感染 東京都、濃厚接触者を調査(サンスポ・ドットコム 2020年2月22日)
*2
致死率は2.3% 高齢者や持病ある人は注意 中国分析データ公表(NHK NEWS WEB 2020年2月19日)