新型コロナ対策で「面会制限」、その影響は…
新型コロナで変化した介護・医療。「面会制限」の影響は…
日本国内で初めて、新型コロナウイルス感染者発生が発表された2020年1月16日から、すでに9ヶ月あまり。
高齢者施設や医療機関を取り巻く環境は大きく変わりました。
高齢者は新型コロナウイルスに感染すると、重症化や死亡のリスクが高い。それは、早くから指摘されていました。
そこで、多くの高齢者施設や医療機関では厚生労働省からの指示により、新型コロナウイルスの感染経路遮断のため、2月下旬から徐々に家族等の面会を制限してきました。
「最期に立ち会えない」家族のストレスに
面会制限は看取り期にも
面会が「原則中止」となったのは、4月半ばから。
4月16日に改定された「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」で、「医療機関及び高齢者施設等に対して、面会者からの感染を防ぐため、面会は緊急の場合を除き一時中止すべきこと」と、「面会中止」の指示が出されたのです。
その後は感染防止のため、看取り期においてすら面会人数、回数、時間を制限する施設等が増えました。
やむを得ない対応ではありますが、厳しい面会制限は、本人や家族にとって大きなストレスとなっています。
コロナ時代のニューノーマル「リモート面会」の限界
オンライン面会・リモート面会、現場の声は…
面会制限の状況下で、多くの施設等では、スマートフォンやタブレット端末、パソコンを使用した「オンライン面会」「画面上での面会」を導入しています。
あるいは、ガラス越しに会い、電話で話すという面会方法を取り入れている施設等もあります。
しかし、こうした“リモート面会”は、実は認知症のある高齢者にとってはなかなかの難物。相手が夫や妻、我が子であることが認識できなかったり、集中力が持続しなかったりするのです。
体に触れることも、耳元で話しかけることもできないリモート面会では、「同じ場に共にいる」ことによる満足感、安心感を得ることができません。面会自体はうまくできたとしても、やはりリモート面会では、もどかしさが残ります。
また、多くの施設等では、面会中止に加え、外部からのボランティア受け入れや、外出アクティビティも休止。外からの様々な刺激が一気に減りました。
そのため、認知機能が低下したり、精神的に不安定になったりする高齢者が増えていることは、すでに多くの介護職等が指摘しています。
「最期は一緒に過ごしたい」「看取り期を自宅で」高齢者を連れて帰る家族
「最期は自宅で看取りたい」という家族が増加
入院、入所すると会えなくなる。心身の状態が悪くなる。
そんな不安から、入院、入所を避ける本人や家族も。
入院・入所していた高齢者を退院・退所させて自宅に連れて帰り、家族が在宅介護するケースも増えています。
特に、看取り期にある高齢者の
最期を在宅で、と考える家族の増加はしばしば報道されるようになりました。
在宅での看取りを支える心構えは?
入院・入所中の高齢者を退院・退所させ、在宅介護する。あるいは、がん末期など看取り期にある高齢者を入院させず、そのまま在宅介護する。
それには、在宅での介護・療養を支えられる体制づくりが必要です。
複数の専門職によって在宅介護を支えるチーム体制になることから、まずは医療職の助言に従い、新型コロナウイルスの感染防止対策を徹底します。
全員が、「ウイルスを決して持ち込まない」という高い意識を持つことが大切です。
在宅介護の「安心」を支えるのは…?
看取り期の「安全」は医療職・「安心」は介護職が支える
介護職は、訪問診療を担う在宅医や訪問看護師と専門性に基づいて役割分担しながら、在宅での安心・安全な療養環境を整えます。
「安全」を主に医療職が担い、介護職は
「安心」の部分を担います。
つまり、本人が穏やかに過ごせるように、そして、家族が不安なく介護に当たれるようにサポートするのです。
介護職は、医療職に比べ、本人や家族と接する機会・時間が多いもの。
だからこそ、本人や家族の些細な心身の変化にもよく気づくことができます。
そんな介護職ならではの気づきを、必要に応じて医療職に伝え、対応、助言を求めるようにしたいですね。
在宅での看取りをサポートする介護職は、あらかじめ在宅での看取り経験のある医療職に、看取り期の身体の変化や家族の心理等について、レクチャーを受けておきたいものです。
家族の中には、在宅での看取りを決めても、いざ大切な親や配偶者の死が近づいてくると激しく動揺する人もいます。
そうしたとき、介護職が同じように動揺するのでは困ります。
あらかじめ、身体の変化等を理解しておくことで、動揺する家族を冷静に支えていく。
それは専門職として、在宅看取りを支えていく大切な心構えだといえるでしょう。
<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士
宮下公美子>