介護福祉士でもやっと旧姓使用が可能に?!
2019年3月、介護福祉士と保育士の旧姓使用が認められるよう、政府の規制改革推進会議から厚生労働省へ答申が示されました(*)。
有資格者に女性が多い国家資格にもかかわらず、介護福祉士と保育士にはこれまで旧姓の使用が認められていませんでした。女性の活躍を後押しするため、このような答申が出されたとのことです。
記事によれば、国家資格の内、保健師、歯科衛生士、看護師は、旧姓と結婚や離婚後の姓との併用が可能。
一方で、介護福祉士と保育士は旧姓の使用が認められていませんでした。しかし、美容師や栄養士は規定がないなど、国家資格でもその規定はバラバラ。
そのため、答申を発表した記者会見では、記者から「今後の検討として、国家資格統一で旧姓使用を認めるような形にしていくのか、それとも特定の何かかなり重立ったような国家資格についての規制緩和を検討するのか、どちらなのか」という質問がありました。
この質問に対し、規制改革推進会議の議長を務める政策研究大学院大学教授の大田弘子氏の回答は、「全部を統一で旧姓使用を義務づけるとか、そういうことは考えていない。私どもが調べた範囲で個々の資格について、取り上げていきたい」というもの。
美容師や栄養士については、結婚後の旧姓使用を認めるよう管轄官庁に求めていくようですが、その他の国家資格についてはバラバラな規定がこのまま続くようです。
この際、国家資格すべてについて、旧姓使用を認めたら良いのではないかと思うのですが、なぜ旧姓使用を「調べた範囲の個々の資格」だけにとどめるのかは不明です。
公表されている資料で、今回の旧姓使用の範囲拡大の対象として示されているのは、「介護福祉士・保育士など申請への書き換えが義務づけられている資格等」。
介護福祉士と同じ施行規則で規定されている、社会福祉士も旧姓使用が許可される対象になるのかも不明です。
介護職が働きやすい環境を得るため、発言力を高めよう!
現在、公認会計士や税理士、建築士などは制度上旧姓の使用が担保されています。医師や薬剤師も、制度上の担保はないものの、事実上旧姓の使用が可能です。
しかし、現在では旧姓の使用が可能なこれらの国家資格も、2001年時点の政府の調査では旧姓の使用は不可でした。公認会計士は2004年に、税理士は2003年に「旧姓使用に関する事務取扱要領」の制定により、建築士は2002年に「事務連絡」の発出により、使用可能になっています。
こうした制度変更が行われた経緯については、はっきりとしたことはわかりません。
一方、制度上の担保はないものの旧姓使用が可能になっている医師や薬剤師については、旧姓を使用したいという有資格者からの要望を受ける形で、運用が緩やかになったそうです。
介護福祉士は有資格者の7割が、保育士は9割が女性です。にもかかわらず、旧姓使用についての検討が行われず、制度変更まで公認会計士より15年も遅いのは、旧姓を使用したいと声をあげる人がいなかったからなのでしょうか?
介護業界は、強力な職能団体、業界団体がなく、政治力が弱いとよく言われます。それが、こうした制度改正にも影響しているとも考えられます。
介護報酬改定などもそうですが、自分たちが働きやすい環境をつくっていくために、介護職の発言力をもっと高めていくことが必要ではないでしょうか。
<文:介護福祉ライター/社会福祉士・公認心理師・臨床心理士 宮下公美子>
*保育・介護福祉士 旧姓でも 規制改革会議、資格要件の緩和答申へ(日本経済新聞 2019年3月10日)