厚生労働省は11月26日に社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)で、全介護サービスへの感染対策委員会の設置や、災害・感染症発生時の
事業継続計画(BCP)作成を求める方針を示した。また、感染症拡大などにより利用者が一時的に減少した通所系サービスへの経営的ダメージを最小減にするための報酬体系を構築する。
全サービスで感染対策やBCP義務化
新型コロナウイルスの感染拡大により、日ごろからの感染対策の重要性が再認識された。
同省は感染防止の取組み強化や、感染対策を図りながら継続的なサービス提供を求める観点から、全サービスの運営基準に▽委員会の開催▽指針の整備▽研修の実施▽訓練(シミュレーション)――を位置付ける案を示した。運用までには一定の軽措置期間を設ける。 現在、感染対策が義務付けられているのは施設サービスのみ。「感染症または食中毒の発生、まん延の防止のための取組み実施」として、委員会の開催や研修の実施などが義務付けられている。
通所サービスでは努力義務、訪問系サービスでは特に記載がなかったが、今後は全サービスで感染対策の取組みを義務付ける。
2018年から今年までの間で、介護報酬で臨時的な取扱いを行った災害は6回発生している。
感染症や災害が発生した場合でも、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービスの運営基準に、業務継続に向けた計画(BCP)等の策定や、研修、訓練の実施を位置付け、運用まで3年間の経過措置を設ける案を示した。
委員からは「小規模事業所では人的余裕もノウハウもなく難しい。運営基準に位置づけるのであれば、国の支援が必要」(浜谷豊美・全国町村会行政委員会副委員長)など運用に向けた支援を求める意見が挙がった。
一方、「準備期間が必要なのは理解できるが、いずれも喫緊の課題なので、支援を前提として経過措置は3年間ではなく1年としてはどうか」(伊藤彰久・日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)と早期実施を求める声もあった。
また施設・通所・居住系サービスの運営基準に、災害訓練の実施や、地域住民との連携を求める方針も示している。
通所利用控えでも経営維持する報酬体系
通所介護と通所リハビリテーションでは新型コロナ感染防止の観点から利用控えや、感染防止・3密回避による利用者の減少が発生し、経営への影響も大きかった。
同省は、基本報酬の区分を決める延べ利用者人数について、現行の前年度の平均延べ利用者数から、「直近の一定期間の平均延べ利用者数」への見直しを提案。
感染症などによる一時的に利用者が減少した際に、事業者の経営への影響を最小限にとどめ、事業継続に繋げる考えだ。
<シルバー産業新聞 12月10日号>
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