2024年度の次期介護保険法改正では、特別養護老人ホームの入所基準の見直しが検討される。
厚生労働省は8月25日に開催した社会保障審議会介護保険部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学法学学術院教授)で論点として示した。
地方での待機者減少や空きベッドの発生などが背景にある。
特養は在宅生活が困難な中重度者を支える機能に重点化するため、15年度の法改正で、原則として要介護3以上に入所者を限定した。
ただし、特例として要介護1、2でも▽認知症▽知的・精神障害▽虐待▽単身世帯などで地域の介護サービス供給困難――などのやむを得ない事情で、在宅生活が困難な場合に入所可能としている。
19年度の全国集計で、特養の入所申込者は29.2万人(うち在宅の申込者は11.6万人)だが、地域によって待機状況にバラつきがある。
厚労省は「地方を中心に、高齢者人口の減少により待機者が減少している、定員が埋まらずに空床が生じているという声がある」と説明した。
実際、要介護3以上の在宅待機者(19年度時点、以下同)は東京都で1万人を超える一方で、鳥取県では332人、高知県524人、徳島県531人、佐賀県558人に止まり、都市部と地方とでギャップがある(表)。
そこで、同省は「入所申込者の実態や、高齢化の進行の状況、介護ニーズは地域によって異なる実情を踏まえた特養の入所基準のあり方」を次期改正の論点としてセットした。
今年度は特養入所申込者の調査年であるため、同部会の年末のとりまとめに向け、最新の調査結果なども踏まえて議論される可能性もある。
入所基準の見直しについては、特養の事業者団体、全国老人福祉施設協議会(平石朗会長)は特例入所要件の拡充などを要望している。
「要介護1、2の高齢者が、サ高住、有老ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホームなどがない地域で介護サービスを受けるのが難しいにも関わらず、単身世帯でなかったり、低所得で利用困難だったりしても、特例入所の要件には該当しないために行き場を失い、家族が介護離職せざるを得ない場合もある」とし、現行の特例入所の要件でカバーされない要介護者に対しても、地域の実情に応じて入所できる特例入所要件の拡充を求めている。
また認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の人について、「要介護1、2であっても、実質的に要介護3以上の高齢者と同程度の介護サービスの負担を要している」とし、「認知症自立度Ⅲ以上は、特例入所ではなく、要介護3以上に準じた通常の入所要件の対象とすべき」と平石氏は主張している。
さらに全国老施協は、「特例入所の運用に抑制的な行政指導を行う自治体もある」と指摘し、利用者と施設のニーズに的確に対応した特例入所が円滑に進むよう、厚労省から自治体への周知も要望した。
介護保険部会は9月に2回開催を予定。下旬には「給付と負担」をテーマに議論される。
<シルバー産業新聞 2022年9月10日号>
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