東京都は、介護職員の確保に向け外国人人材の受入れを強化している。2023年度の介護関連職種の都内有効求人倍率は7.61倍と過去最高で、全産業の1.49倍を大きく上回る。30年には4万7000人の介護職員不足が見込まれ、魅力発信や職場環境改善などさまざまな取組みが行われている。その一環として、今年度から新たに「外国人介護従事者活躍支援事業」を開始。事業者に積極的な海外人材の受入れを促進している。
「外国人介護従事者活躍支援事業」は①海外に向けた魅力発信・マッチング促進②関係団体との連携体制構築③受入調整機関活用経費補助――の3つで構成される。
①の魅力発信は今年度、インドネシアを中心に展開する。国籍別特定技能在留者数がベトナムに次いで多く、国外での就労を国策としていることから、有力な人材獲得をめざす。7月27・28日には、初の試みとして、首都ジャカルタで開催された日本企業の就職イベントに出展。会場にはのべ1726人が来場する盛況ぶりをみせた。
ジャカルタのイベントの様子。
KaiToや日本の介護をアピールした
6月には、海外に住む外国人と都内事業所のマッチング支援サイト「かいごパスポートTokyo(KaiTo)」を開設した。11カ国語に対応。現在は事業所向けに、オンライン説明会(表1)や登録支援機関との合同説明会の申込を受付けるほか、補助金情報も掲載している。今後、求人情報や日本語学習コンテンツ、東京都で働く外国人介護職員へのインタビュー動画などを充実させた求職者向けページを更新予定。
(表1)KaiToオンライン説明会スケジュール
福祉局高齢者施策推進部介護保険課(介護人材調整担当)の松本侑真課長代理は「これまで日本での就労を希望していた外国人人材が、近年はより賃金が高い国へ流れている。東京の一番の特長は、安心・安全な都市であること。まちそのものやカルチャーなどを通じて東京の介護現場の魅力を発信していきたい」と話す。
③の受入調整期間活用経費補助では、事業所が外国人の受入調整機関を活用した際に、費用の一部を補助。特定技能・留学生を対象に、人材紹介料の2分の1にあたる補助金が支給される(1人あたり上限30万円)。「KaiTo」に求人情報を掲載した場合、補助率は3分の2まで拡大される。
都では、外国人人材を採用したことがない事業所でもスムーズに受入れが進められるよう、準備段階から手厚いフォロー体制を構築。関連制度の基礎知識や生活面での配慮等を学ぶセミナー・研修、個別相談会を実施している。昨年度のセミナー申込数は100事業所を超える。
受入れ期間の支援では、すでに行われていたEPAや技能実習に加え、特定技能の補助事業も新設。特定技能外国人を雇用している施設に、日本語や介護技能等の学習に要する経費の2分の1(上限67万円)を支給する。
介護分野の外国人留学生数(表2)をみると、特定技能は2万8400人と最多で、うち東京都は2304人。今後、さらなる増加が見込まれることから支援体制を強化した。
(表2)介護分野の外国人在留者数
すべての在留資格を対象に、外国人介護職員との円滑なコミュニケーションのための経費も補助。翻訳機の購入や日本人・外国人職員の異文化理解の学習を行った場合、3分の2を補助する(事業所あたり上限30万円)。
同課の西川篤史課長は、「これらの補助は、サービスを提供する上で必要な能力を身につけることが目的。今後は外国人介護職員の訪問介護従事拡大も予定されており、日本語や介護技術など広く活用いただきたい」と呼びかけた。
受入れから定着までさまざまな事業で支援
「KaiTo」事業所向けページ
<シルバー産業新聞 2024年9月10日号>
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