ＢｏｄｙＰｉｏｎｅｅｒ（東京都江東区、河合眞哉社長）が運営する通所介護「リハデイｎｏｉｅ」は、「みんなが輝く第２の居場所」をコンセプトに、利用者の自立や自己決定に重きを置く。事業所内での家事活動もその一環。本人のやりたい活動を促し、かつ生活・認知症リハビリの効果も表れている。
リハデイｎｏｉｅの平均要介護度は2。自力で歩ける人が多いが、認知症の人も7割以上いる。定員20人で、稼働率は連日9割超。
割り当てられる家事活動は▽昼食当番▽洗濯物取り込み▽食器洗い▽庭の水やり▽階段掃除▽洗濯物干し――など多岐にわたり、料理は女性、庭の手入れや掃除は男性が担当することが多い。利用者自身へのヒアリングや、その日の体調等を鑑みて活動内容を決めていく。
家事以外でも各々が得意なことを活かせるよう、行事の際に折り紙で箸袋の制作や、達筆な利用者に「寿」の文字を入れてもらうなど、利用者による積極的な居場所づくりへの参加を促している。
管理者で理学療法士の岩崎巧さんは「前任の管理者が作業療法士だった頃から、生活背景なども聞き取って利用者一人ひとりへの理解を深める習慣があった。決まった項目に沿ってヒアリングしているというより、日頃の関わりのなかで人となりを知ってきた」と話す。
洗濯物を夕方に干して翌朝取り込むのも利用者の役割
「リハビリ＆デイサービス」を掲げているが、事業所内に運動機器は見当たらない。手先を使う料理や裁縫、身体全体を使う掃除など、家事活動が生活リハビリとして機能維持・改善に寄与。ＡＤＬ維持等加算（Ⅰ）も算定している。
家族と暮らす認知症の利用者は、自宅では危険を避けるために行動を制限されることが多い。そんななか事業所に訪れれば「今日は皿洗いをお願いします」などと頼られることで、生活意欲につながる。
「認知症の人はリハビリを拒否することも多い。当事業所でも、短期記憶で新しいことをしてもらうのは難しいが、手続き記憶による作業をお願いすると、身体が覚えている場面がよくみられる。認知症の人へのアプローチ方法として有効だと考えている」と岩崎さん。事業所内での行動が習慣化し、家族から「最近自宅でも洗濯物をたたむようになった」と報告を受けたこともあったという。
「今後は独居の高齢者も増えていく。事業所での活動が自宅における自立の継続にもつながっていってほしい」（岩崎さん）。
取材日（9月17日）は中秋の名月。昼食明けには、おやつの月見団子を調理するグループと画用紙に大きな月を描くグループに分かれて月見の準備を進めていた。
思い思いに描いた月は、団子のお供に貼りだされる
団子づくりでは、材料を混ぜる人、団子を丸める人、作業の監督をする人を、利用者の特性にあわせて職員が担当分け。声をかけあいながらあっという間に人数分の団子を作り終えると、キッチンに移動してさつまいも餡の調理を始めた。鍋を焦がすことなく、月のようなまろやかな黄色の餡を完成させた手際の良さには職員も感服。利用者は「ずっと台所に立っていたから慣れているのよ」と、長年の経験の賜物だと語った。
「耳たぶくらいのやわらかさ」で団子を丸めていく
あっという間にホクホクで美味しそうな
さつまいも餡が完成
＜シルバー産業新聞 2024年10月10日号＞
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