東京都健康長寿医療センター研究所は4月に「認知症の人のお口の支援実践ハンドブック」を策定した。
認知症の特徴を踏まえた口の中や食事の観察ポイント、口腔ケアの手法、加算算定の方法等を整理。厚労省の昨年度老健事業で行った。
認知症の人が陥りやすい口のトラブルについて ▽食物残渣の停滞 ▽清掃不良の義歯 ▽乾燥した痰 ▽褥瘡性潰瘍――などを写真付で紹介。
セルフケアや歯科へのアクセスが難しく、口腔機能低下、低栄養のリスクが高い傾向にあるため、歯科専門職のより早期介入が必要だと強調する。
口腔機能維持・向上に必要なケアは(1)口腔内の清潔保持(2)食べるための支援――の2本柱。
(1)では歯ブラシの持ち方から当て方、動かし方、磨く歯の順番などを図示し、歯間ブラシやデンタルフロスを用いた歯間の清掃も勧める。舌・粘膜ケア、義歯清掃、うがいの方法についても網羅する。
口腔ケアを拒否する人への対策も。
例えば家族や他の入所者が歯みがきをしているところを見せて不安や恐怖を取り除く方法や、介助者が口腔ケアを行う場合は口の中をいきなり触らず、肩や腕のマッサージから徐々に顔・口へ移る方法などを示す。
仮にスポンジブラシを噛んでしまった場合は、スポンジ部が外れて誤嚥を起こさないよう、無理に引き抜かないことも注意点に挙げている。
(2)の食べることへの支援では積極的な食事の観察と推察を求め、観察結果に応じた対策を整理。
例えば「配膳してもじっと座ったまま食べようとしない」では、食べ物の認知を高める工夫として ▽ひと口だけ介助する(味覚の活用) ▽香り立つ食材の配膳(嗅覚の活用) ▽なじんだ食器類の活用――を提案する。
周囲の物音や室温、食事姿勢など食事環境に関するチェックリストも設ける。
このほか、介護報酬の口腔関連加算の要件や記録様式、居宅療養管理指導(歯科医師・歯科衛生士)利用の流れなども。
<シルバー産業新聞 2023年6月10日号>
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