筑波大学発ベンチャー、PLIMES(茨城県つくば市、鈴木健嗣社長)が開発した「GOKURI」が、嚥下機能評価ツールとして関心を集めている。
GOKURIは生体音・温度・脈拍・姿勢の4つのセンサを塔載したネックバンド式デバイス。生体音からリアルタイムに嚥下音を抽出し、AIが識別する。姿勢などの情報を踏まえ誤嚥の可能性を判定・評価する。
本体先端は頸部に当たる位置に。
ここから嚥下音を抽出する
嚥下の正常・異常は本体ランプでもリアルタイムに確認
測定方法は最大10種類。▽RSST(30秒の間に唾液を飲み込むテスト)▽GOST(適した食形態の目安を判定)▽SST(5mlの冷水で測る簡易嚥下テスト)――などがある。本体とブルートゥースで接続した専用アプリから測定の指示を行い、判定結果が表示される。
GOSTの判定例。
下段の星マークの数で推奨食形態を把握する
結果はクラウドデータで自動保存。利用者別に全テストの履歴が確認でき、嚥下が正常だと緑色、異常が見られる場合は赤色で表示される。
アプリに沿ってテストを実施するので、職種を問わず正確かつ効率的な嚥下評価が可能に。同社マーケティング&プロモーションマネジャーの松田佐保氏は「判定を目視に頼る必要がない。例えば多職種で入るミールラウンド(食事観察)も人員・時間の最適化が期待できる」と話す。導入施設では職員が測定した結果を連携先歯科に共有することで、歯科医師の訪問回数が減ったところもある。
動画撮影が必要な測定の場合は
アプリからスマホカメラを立上げて行う
開発のきっかけは脳外科医からの相談。脳腫瘍の摘出後、麻痺が残り、食事が上手く食べられず低栄養に陥る患者が一定程度いた。術後のQOLを落とさないよう摂食・嚥下リハビリに役立てるシステムが必要とのことだった。
現在の導入先は医療機関、歯科医療機関が大半だが、「最近は介護施設からの問合せも多い。介護テクノロジー重点分野の動きも後押しし、補助金や報酬について聞かれることも増えてきた」と松田氏。「新規入所者の初回アセスメントにぜひ役立ててほしい。嚥下機能や食形態は、入所前の病院・施設からの情報とズレがあるケースも多い」と説明する。
また今年度は、福島県浜通り地域で研究成果等の社会実装を支援する「イノベーション創出プラットフォーム事業」に、同社「『食べて飲み込む』を測り、支える地域ネットワーク事業」が採択。訪問看護がGOKURIを携行し、在宅患者・利用者の嚥下評価、適切な支援のためのモデル事業を行う。
価格は1台30万3000円+年間使用料12万円(税込)。
問合せは同社(TEL 029・853・7211)まで。
<シルバー産業新聞 2024年11月10日号>
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