音楽というツールで、楽しい「場」を作り、高齢者の方々に希望を授けたい。その思いを込めて、株式会社リリムジカを運営する管偉辰さん。老人ホームのレクリエーションを中心に、どうやってビジネスを展開するのか。そこに、経営者としての悩みはあるようです。慰問演奏と一線を画した、質の高いプログラムをどう提供するか。今回もまた、熱く語ります。
○●○ プロフィール ○●○
管偉辰(かん・いたつ)さん/株式会社リリムジカ 代表取締役 共同代表
1986年、東京都生まれ。台湾人の両親のもとに生まれ、日本人として生活する。一橋大学商学部在学中から起業家を志す。2008年、創業時代表の柴田萌さんと共に株式会社リリムジカを設立。2011年に柴田さんと交代して代表取締役に就任。プログラムを実施する介護施設の開拓やミュージックファシリテーターの後方支援に尽力。
株式会社リリムジカ
プロとしてお金をいただく理由
積極的に会社説明会を行い、将来のミュージックファシリテーターを募っている
――老人ホームにはボランティアの方々も多く来られますよね。リリムジカのプログラムは、いわゆる慰問演奏と何が違うのですか?
リリムジカのプログラムは、慰問演奏とは目的が異なります。慰問演奏は演奏者側ができる曲を聴いてもらうことが多いと思います。私たちは、ご参加者が心地よく楽しめる場をつくるために接し方や選曲を工夫しています。たとえば年齢を重ねると、声は低くなっていきます。ミュージックファシリテーションはご参加者が気持ちよく歌えるキーを探して伴奏します。また、歌いやすいようにテンポは原曲よりも落とすことが多いです。
一見微妙な違いですが、それを追求しているからこそ施設の職員さんから「こんなに活き活きしている姿は初めてみた」というような声をいただけているのだと思います。
「なんとなく楽しかったね」というだけでなく、本当に充実した時間が過ごせるようなプログラムを目指しています。慰問演奏との違いに気づいてくれる介護事業者さんはいらっしゃいます。
――事業者さん側との信頼関係も大事ですね。
プログラムが終わったあとに、アンケートをとらせていただくと、「また参加したい」という声をいただけるんです。その積み重ねが信頼感になっていくのかな、と思います。
また、私たちは、利用者さんとの接し方についても日々努力していますので、いっしょにプログラムに参加してくださる介護職員の方が「こうやれば(高齢者の方に)わかりやすいんだ」などと、日々のお仕事のヒントにしてくだされば、という思いもあります。
そんな思いが伝わって、「今度新しくまたデイサービスをオープンするから、そちらでもよろしく」なんて声をかけていただけることが、大変ありがたいです。
プロセスの改善を積み重ねる
リリムジカ5周年事業報告会で登壇する管さん
――大事なのは、積み重ねでしょうか。
それは、日々感じているところです。まず、私たちの存在を知ってもらうことが大切だと考えて、お電話でプログラムの説明をさせていただいています。そして、興味を持ってくださった事業者様に、プログラムを体験していただくところから始めています。体験をとおしてプログラムの質の高さを感じていただけるよう、プロセスの改善を積み重ねています。
――実際に、事業は拡大していますか?
2010年の1月に4カ所だったプログラム実施先が、翌年は9カ所、2012年は12カ所、2013年は21カ所、2014年は42カ所、そして2015年1月には60カ所になる見込みです。
リリムジカが入っていくことで、新しい風が入っていく。外から風が入ると、介護職員の方にも、新鮮さを感じてもらえるのではないかな、と思います。それが、働きがいにつながっていただければ、さらにうれしいですね。
この連載の最終回、4回目は、「組織と人」に焦点を当てたお話をお伝えします。
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