毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「ヘルパーは仕事が早すぎてもダメ?」という話題について紹介します。
利用者から出入り禁止命令!
どんな世界であれ、「仕事が早い」というのは褒め言葉のはず。仕事ができる人というのは、時に嫉妬の対象となったりすることはあるが、それは“同僚や上司の側”からの話。
“お客さんの側”が仕事ができる人よりも、モタモタと仕事をする人を選ぶとは考えにくい。
ところが、都内の事業所で働くあるベテランの訪問ヘルパー・Tさんは、若かりし頃に「仕事が早すぎて利用者から出入り禁止を命じられる」という経験をしたことがあるという。
Tさんは体育大学を卒業後に介護の世界に飛び込んだ現在40代の女性。学生時代は陸上競技の選手として大会などにも出場していたTさんは、体力に自信があったため、すぐに現場でも大変重宝され、持ち前のあっけらかんとした性格もあいまって、どんなお宅を訪問しても、「あの人はよく働いてくれる」「とても感じが良い」と大変評判が良かった。
仕事の早さが、なぜ不評?
ところがある時、利用者のお宅を訪れたところ、2~3回目の訪問後に「Tさんという人は変えて欲しい」という連絡が事業所に入った。そのことを事業所のスタッフから告げられ、まったく思い当たるフシがなかったTさん。スタッフにその理由を尋ねたところ、「仕事が早過ぎる」という返事が返ってきたという。その返事に納得がいかなかったTさんがスタッフに食い下がると、スタッフからこう諭されたそうだ。
「そんなに急がなくていいのよ。『忙しそうにしているあの人を見ていると、こっちが疲れてしまう』って言われたのよ」
Tさんは、限られた時間の中で、少しでも多くのことをこなすのが最良のサービスだと信じて疑っていなかった。時には、家の中を小走りして仕事をこなすようなこともあり、しゃべり方もどちらかと言えば早口。そんな姿勢が利用者には不評だったようだ。
今となっては、「あんなペースで働いていたら、こっちが体を壊しちゃうわ」と、その時のことを笑い話にできるようになったTさん。
結局、そのお宅に“リベンジ”をする機会はなかったが、張り切りすぎていた当時の自分を戒めてくれたその利用者には、今でもとても感謝しているそうだ。
公開日:2015/5/4
最終更新日:2019/5/25