毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「介護施設でのオンライン面会」という話題を紹介します。
新型コロナでやむを得ず「面会制限」になった老人ホーム
誰もが予想し得なかった新型コロナウイルス騒動。
その影響は介護業界にも及び、多くの介護職員が普段以上の負担を強いられているが、6月に入ってなお対策が必要となっているのが、
利用者と家族との面会の問題だ。
都内のある介護付き有料老人ホームでは、新型コロナウイルス感染拡大防止のための面会制限が丸2か月以上に及び、入居者と家族の双方から不満の声が殺到しているという。
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新学期や新年度、連休には面会者が増加
有料老人ホーム職員のマルヤマさんはこう語る。
「普段なら、年度が変わる春休みやゴールデンウイークは、ご家族の面会が増える時期です。
3月から4月にかけては、ピカピカのランドセルを背負った男の子、可愛らしい新品の制服を着た女の子、おろしたてのスーツに袖を通した青年など、お孫さんたちがたくさんやって来ますし、ゴールデンウイークは大勢の面会客が揃う絶好の時期。
入居者の方を中心にして、さながらクラス会のように盛り上がっている光景を見かけることもしばしばです」
「家族に会えない」ストレスに感じる利用者も
「ところが今年は、そういった面会のピークの時期がまるまる面会禁止となってしまったので、入居者の方たち、家族、ご親戚、ご友人の方々は本当に落ち込んでいますし、健康状態や精神状態が思わしくない状況になってしまった方も施設にはいます」
施設内はいつでも清潔で快適な状態が約束されており、ケアも行き届いて何も心配ない生活が送れるが、施設内から出られず、家族に面会もできない状況は、想像以上にストレスがあるようだ。
オンライン面会導入で珍事件続出?!
それゆえマルヤマさんの施設では、ついに
オンライン面会の導入に踏み切ったが、珍事件が続出しているという。
「ある男性の方がオンライン面会で5分近く会話をした挙げ句、『この人は誰かね』と言うのです。確認すると、スタッフがうっかり同じ名字の別の男性を訪ねてきた人と繋いでしまったようでした。
男性は『誰かなと思ったけど、画面がよう見えんもんで……』と仰っていましたが、
画面が荒くてお互いに顔をはっきり認識できないまま会話していたようでした。それでも会話が5分続いたのがスゴいですよね(笑)。
90代の女性の方は、『お話して下さ~い』とスタッフがどれだけお声がけしても、ピタッと固まって笑顔を作るばかり。どうやらカメラで撮られていると勘違いしていたようでしたが、ご家族は
『顔が見られて良かった』と仰って下さり、ホッとしました」
オンライン面会については、厚生労働省がこれを推奨する通知を出し、具体的な利用例を挙げて周知に努めている。ただ、マルヤマさんの施設では、速やかな導入を妨げる障壁もあるようだ。
介護はベテランでも、機械は苦手!!
「オンライン面会のセッティングは施設の職員がやっていますが、ウチの施設は職員の平均年齢が高く、機械にとにかく弱い人ばかり。高齢の入居者が機械についてチンプンカンプンなのは驚きませんが、スタッフの中にも『私は無理だわ』とさじを投げる人もいて、機械に強い若手が重宝されています。
たしかに、還暦を越えたスタッフが、使い慣れないSkypeやZoomやLINEのビデオ通話だのをセッティングしろと言われても困るでしょうからね。
そのあたりは臨機応変に、事情に通じたスタッフの助けを借りてやっています」
介護全般についてはまだまだひよっこの新人スタッフが、オンライン面会の機器を手際よくセッティングして、一躍評価を上げる“事件”もあったそう。
「やっぱり直接会って話がしたい」
ただ、入居しているお年寄り達は、「やっぱり直接会って、顔を見て話したい」と言っているという。
オンライン面会の便利さを知った家族が、新型コロナ騒動が収束してもオンライン頼みにしてしまわず、落ち着いたら施設に会いに来てほしいと気を揉んでいるマルヤマさん。
施設の職員たちは、透明なついたて付きの面会室や、施設の庭で行う青空面会など、『新しい面会方法』を模索しているそうだ。