毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「認知症のお年寄りのマイナンバー」という話題について紹介します。
介護事業所で“マイナンバー講習”を受けたけれど…
2015年10月からマイナンバー制度がスタートし、通知カードの発送は終了。個人番号カードの交付も始まり、活用が徐々に始まっている。事前の周知徹底が不十分だったため、個人情報漏洩への懸念や、そもそもの必要性を問う議論が勃発したマイナンバーだが、介護事業所にも混乱をもたらせている。
すでにご存知かと思うが、マイナンバーとは国民一人ひとりに与えられる12桁の数字のこと。これを導入することにより、「諸々の行政手続が簡略化できる」「生活保護などの不正受給を減らせる」「『失われた年金』といった問題がなくなる」「災害時の支援が円滑になる」等のメリットを政府はアピールしているが、多くの市民はいまだメリットを体感できていないのが現実だ。
上述の通り“国民一人ひとり”に与えられるということは、マイナンバーは認知症の人にも発送されている。これに関して東京の介護事業所で働くヘルパーのAさんは、こう語る。
「私が働いている事業所でも、去年の秋に急遽マイナンバーに関する講習会がありました。けど正直に言えば、講習の最後に試験があるわけでもなく、講習が終わった後の雰囲気は『何だかよく分かんなかったわね』みたいな感じでした。『要するに(利用者のマイナンバーは)見ちゃいけないのね』ぐらいの認識でした。
けれども、当然、利用者のところにも通知カードは届いてきます。当然我々はそれを開封したり、番号を見ちゃいけないんですけど、『よく分からないからやっといて』みたいなことを利用者や家族に言われたことはあります」
事件が起きても、おかしくない!?
認知症の人のマイナンバーの扱いについては国も考慮しており、家族や後見人が管理したり、認知症の人にはマイナンバーの記入を免除するなど、適宜対応は取られている。しかし、実家に住む父が認知症だという男性はこう語る。
「私自身がマイナンバーのことをよく分かっていないのですが、『どうやら番号が漏れたら大変』ということぐらいは分かりました。それを踏まえて言いますが、もしヘルパーさんが見ようと思えば、利用者のマイナンバーなんか簡単に見られますよね? 届いている郵便物を開けるだけなんですから。
もちろんヘルパーさんがそんなことをしないのは分かっていますが、そもそもそんな重要なものが、簡単に見られるリスクがあるってこと自体、おかしくないですか?」
先述のAさんは実際、利用者の家で、冷蔵庫にマグネットでペタリと貼られた通知カードを見てしまったことがあるのだとか(撮影、記録等をしなければ問題はない)。鳴り物入りで始まったマイナンバー制度だが、Aさんは、「きっと誰もが危惧しているような事件がそのうち出てきますよ」と、マイナンバーに関する不信感を露わにしている。
介護事業者のマイナンバーの対応方法について、弁護士に聞いた記事はこちら。
→ 認知症の人にマイナンバーが届いたら…介護事業者や家族は、どう対応する?
公開日:2016/2/29
最終更新日:2019/4/11