毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「近頃の若者は……」という話題を紹介します。
介護の世界の「最近の若者」は?
「我々が若い頃は……」「最近の若者は……」
自分が若かった頃は、年配者からそのようなセリフが飛び出すと渋い顔をしていたのに、いざ自分が年齢を重ねると、同じことを言ってしまう人も多いのでは?
自分の世代と同じ価値観を年下の若者にも求める気持ちは分かるが、ジェネレーションギャップを理解することは大切だ。
都内の訪問介護事業所で多くの若手スタッフを統括するヨシダさんは、最近の若者の変化を日々、肌で感じているという。
「できること」より「●●さ」をアピールする若者
ヨシダさんは介護業界一筋で働いてきた40代の女性。
現在働く訪問介護事業所では、自らも訪問ヘルパーとして稼働する一方、採用面接、若手スタッフの育成など、大車輪の活躍をしている。
ヨシダさんいわく、ここ数年、採用面接で大きな変化があるそうだ。
「面接の際に必ず提出してもらう履歴書には志望動機や自己PRが記されていますが、最近目立つのが、
謙虚さをアピールする人です。
従来なら自己PRは、『私はこんなことができる』『こういう能力に長けている』といったことをアピールするものでしたが、最近の応募者は『周りに合わせて行動できる』『人の意見に耳を傾けられる』といった具合に、謙虚さや協調性をアピールする人が多いように思われます」
主張を通すより「浮きたくない」
「最近の若い子は、自分の主張を押し通すことよりも、“自分がその場から浮いていないか”をとにかく気にしているような気がします」とヨシダさん。
今や若者の間で「KY=空気が読めない」という単語は常識。突出することを望まず、「KYと呼ばれたくない」という傾向が強く見られるという。
"最近の若者が介護職にピッタリなワケ
自己主張しない若者の姿勢に初めは戸惑いを覚えたヨシダさんだが、実際に介護現場で働き始めた彼らの評価が低いというわけではないようだ。
「私たちヘルパーの仕事は、物を売ったり、競争して数字を上げたりするのが目標ではありませんから、謙虚な姿勢は大歓迎です。
ヘルパーに重要なのは、利用者の“こうして欲しい”という意思を汲み取ることで、自己主張することではありませんからね。相手の気持ちを推し量ることに長けている最近の若者たちは、利用者さんの思いを感じ取ることも得意なようです」
「相手に悪いから」はヘルパーとしてNG!
ただ、ヨシダさんは「空気を読む」ことが得意な若いヘルパーたちに特に言い聞かせていることがあるという。
「いつも口酸っぱく注意しているのは、『“断ったら相手に悪いから”という理由で、やってはいけないことをやらないで』ということです。
『家族の分の食事も作って』『お酒を買ってきて』『プレゼントを受け取って』といった行為は原則としてヘルパーはやってはいけませんが、空気を読む能力に長けている最近の若者は、なかなか断りづらいようです。ですからその点だけは、『きっぱり断りなさい』と、繰り返し注意しています」
どの世代にも必ず特徴はあり、それを上手くリードするのは年配者の役目。
空気を読む若者がネガティブに捉えられるシーンも見受けるが、介護の世界で言えば、“謙虚さ”や“空気を読めること”は、堂々とアピールして良いようだ。