毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「ホームヘルパーの彼女が金髪をやめない理由」という話題について紹介します。
かつては会社で決められていた髪の色。介護現場では…?
かつて「金髪」と言えば、反抗や不良の象徴のようなものだったが、今や金髪など珍しくもない時代。とは言え、一定以上の年代の方にとっては、いまだに金髪に偏見もあるだろう。
介護現場で働く介護職の“髪の色事情”はどうなっているのだろうか?
都内の訪問介護事業所で働く40代の女性・ハセガワさんはこう語る。
「私が介護業界で働き始めた2000年頃は、髪の色について口うるさく指導するのがまだまだ一般的。ウチの会社にも、髪の色を調べる『レベルスケール』というチェックシートがありました。
どこまで髪を染めて良いかは会社で決められていて、一定の色より明るい色に染めてはいけなかったのです。
しかしある時、若い女性スタッフから『髪の色をもっと明るくしたい』という強い希望がありました。
そこで社内会議で検討したところ、所長をはじめ、幹部は軒並みルール改定に消極的でしたが、一番若いスタッフが『髪の色が変わっても、我々のサービスは変わりません!』と述べたところ、所長がその言葉に納得。
チェックシートの“明るい色”の数値が1つまた1つと、徐々に許されるようになりました」
金髪のホームヘルパー!利用者さんの反応は…?
しかし、介護はあくまでも、お客様である利用者さんあっての仕事。明るい髪の色は介護現場で問題にならないのだろうか?
ホームヘルパーのクワタさん(女性・30代)は、本人は「ちょっと明るくしただけ」「こんなの金髪じゃないですよ」と言うものの、世間的に見ると完全に「金髪」。
自分の“髪の色事情”について、こう言う。
「私の経験で言うと、実際に介護を受ける利用者さんよりも、家族の方から嫌そうな顔をされることが多いです。
ただ、仕事をしっかりやり、言葉遣いさえきちんとできていれば、すぐに利用者さんからもご家族からも笑顔で接してもらえるようになります。
特に利用者さんは、何度か通ううちに私の髪のことを話題にする方も多く、『私も若かったら1回やってみたかった』『いくらかかるんだい?』『どこでやるんだい?』など、みなさん好意的です」
クワタさんが担当した利用者の中には、クワタさんに触発されて、生まれて初めて白髪を黒く染めた人もいたのだとか。そんな彼女だが、かつて上司にこんなことを言われたことがあるそうだ。
「金髪だからダメだ、と言われないように!」
「私が今の髪の色にした時、ある先輩から『“やっぱり金髪のヘルパーなんて”と、言われるようなことをするなよ』と、言われたのです。
『お前はわざわざマイナスイメージからスタートしてるんだから、ちょっとのミスをしても“やっぱりな”と言われるんだ』
『そんな髪の色をしているんだから、人並み以上にきちんと仕事をして、ようやく認めてもらえるんだぞ』
とも言われました。
それを初めて聞いた時は、“そんなのはおかしい”と反発しましたが、今は先輩が言うことがよく分かります。
もし適当な仕事をしたら、『やっぱり金髪のヘルパーなんてダメだ』と言われるでしょうし、会社も『金髪は禁止にしよう』と言うでしょう。それは私にとって耐え難いことです。だからこそ私は、この髪の色を止めないのです」
金髪であることは、彼女のホームヘルパーとしてのプロ意識の高さの象徴になっているようだ。