毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「福祉系専門学校の現実」という話題について紹介します。
「アイドルも介護職も、人を笑顔にする仕事」
人気アイドルグループ「モーニング娘。」の鈴木香音さんが2月初め、3月12日から始まる全国ツアーを最後にグループから卒業し、芸能界を引退することを発表した。「幼い頃から『人の役に立ちたい』と思っていた」という彼女は、
「『人の役に立つこと』…いろんな形があると思うけれど、これからはまた別の形で人の手助けをしたい、その人に笑顔になってもらいたい、幸せになってもらいたいと強く感じるようになりました」
と、述べ、「福祉に関わるお仕事をしたい」と、卒業後の夢を発表して大いに話題になった。彼女がどのような場所で福祉を学び、どのような形で福祉に携わるのかは分からないが、福祉系の専門学校を卒業し、現在介護事業所で働く女性・Aさんは、福祉系専門学校の現実の厳しさについて語る。
「学校は半日で終わるので、周りには遊びに行ったり、ファストフード店などでダラダラとおしゃべりしているような子もいました。けれども私は、少なくとも自分の食いぶちぐらいは稼がないといけなかったので、授業が終わったら飲食店などでバイト。合間を見つけて予習や復習。通学にも片道1時間半ほどかかったので、遊ぶ時間はまったくなかったですね」
そう語るAさんは、高校卒業後に介護関係の資格を取得するべく専門学校に入学した。経済的にあまり余裕がない家庭に育ったAさんは、一生懸命、学費が安い専門学校を探し、奨学金や助成制度を「探しまくって」(Aさん)それらを活用。しかし、卒業するまでに学費だけで200万円近くかかってしまった。
Aさんは希望通りに資格を取り、望んだ仕事に就くことはできたが、手にした奨学金は返済が必要なタイプのものだったため、社会人としての旅立ちは“マイナスからのスタート”を余儀なくされた。
「奨学金制度の充実が求められている」
「介護の仕事って、友達には『給料安いんでしょ?』なんて言われるんですけど、苦労して資格を取った甲斐があって、同年代の友達よりは良いお給料をもらっています。仕事はハードですけど、夜勤手当などもあるので。ただ、奨学金の返済が大変です」
Aさんは知らなかったようだが、安倍晋三首相は今年1月の施政方針演説で、介護福祉士を目指す学生に対する奨学金制度を充実させる意向を示した。しかし、すでに学校を卒業してしまったAさんには関係の無い話だ。Aさんは、「専門学校の学費は高すぎる」と、不満を述べたうえで、
「人手が足りないと分かっているのだから、(資格を)取りやすくして欲しい」
と、主張。現場職員のスキル低下を招くようなことがあってはならないが、“新・奨学金制度”の内容には注目が集まりそうだ。
※参照
鈴木香音さんのコメント(ハロー!プロジェクト)
国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説(首相官邸ホームページ)
公開日:2016/3/28
最終更新日:2019/4/12