毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「訪問介護で直行直帰はトラブルのもと?」という話題について紹介します。
直行直帰で働けるホームヘルパーの仕事に、まさかの落とし穴が
社会人として生きていくのは大変なことばかりだが、その中でささやかな楽しみを見つけるのが仕事を長く続ける秘訣。
家から直接取引先に向かったり、打ち合わせの後にそのまま家に帰ったりする「直行直帰」は、ささやかな喜びの代表的なものだが、時にはそれがトラブルのもとになることもある。
ホームヘルパーは直行直帰型の就業形態をとるパターンが多いが、直行直帰が問題になることはないのだろうか。
訪問介護の仕事は、ホームヘルパーが利用者のお宅を訪れ、サービスを行うもの。
スタッフの管理面だけで言えば、一度ホームヘルパーが事業所に寄り、諸々の注意点を確認した上で利用者のお宅に向かうのが理想だが、ホームヘルパーが自宅から利用者のお宅に向かい、介護の仕事が済み次第自宅に戻れば、大きく時間を節約できる。
直行直帰で移動時間が節約できれば、ホームヘルパーにとっては体力的な負担が減り、時間を有効活用することができる。
さらに、ホームヘルパーの拘束時間が減り、人件費を減らすことができるので、事業所側にはコストカットというメリットがある。
ホームヘルパーと事業所のお互いのニーズが合致するように見える直行直帰だが、上手に労務管理をしないと、やはりトラブルの種になってしまうようだ。
都内の訪問介護事業所で働くマナカさんがいう。
「私はいくつかの事業所でホームヘルパーとして働いたことがありますが、事業所によって、介護記録の提出スパンが毎回だったり、1週間ごとだったり、月末提出だったりすることがあります。
ある事業所では、直行直帰できるかわりに、あらゆることが電話連絡でした。
利用者のお宅に到着する度に電話で連絡することになっていましたが、電話をした時に色々指示をされて長電話になることもあり、電話代が跳ね上がったので、そのことを申し出たところ、のらりくらりとかわされてしまったこともありました」
訪問介護での移動中にはこんなトラブルも…
一方、雇用者側としても直行直帰で頭を悩ませられることは多いという。
トラブルでもっとも多いのは移動中の交通事故だ。都内の訪問介護事業所で働くナスさんがいう。
「自転車や原付バイク、自動車など、ホームヘルパーの移動手段はさまざまですが、どれだけ気を付けていても交通事故をゼロにはできません。
利用者のお宅への移動中に起きた事故は基本的には労災になりますが、労災を適用するかどうかでモメたケースも少なくないです。
利用者のお宅とヘルパーの自宅の最短距離から明らかに外れていたり、サービスを終えてから事故に遭うまで時間が経ちすぎていたりすると、労災の適用は厳しいです」
さらにナスさんは、直行直帰に関して驚くべき広告を目にしたことがあるという。
「求人広告で『直行直帰!』をセールスポイントにしている事業所は多いですが、ある事業所の広告に、『事務所に寄る必要、一切なし』『スタッフ同士が会うことはありません』という文言が添えられていたのです。
確かに介護業界は、人間関係が原因で退職する人が少なくありませんが、まさかこんなキャッチセールスが成立するとは思いませんでした」
改めて言うまでもないが、ホームヘルパーは人と会い、お世話をするのが仕事。
ナスさんは、「そんなに人嫌いな人がホームヘルパーなんてできるのかしら」と、首を傾げざるを得なかったそうだ。