毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「NHKの『24時間訪問介護』特集に現場は」という話題について紹介します。
知っておきたい24時間訪問介護とは?
介護をするために仕事を辞めざるを得ない「介護離職問題」は、ほんの数年前まではマイナーな社会問題だった。しかし、安倍晋三首相が「1億総活躍社会」を掲げ、「介護離職ゼロ」を訴えたことで、一気に認知度が上昇。にわかに関心が高まっている。その解決の糸口を示す番組をNHKが放送し、ネットで大いに話題になっている。
7月6日、NHKの『クローズアップ現代』は、「介護離職こうして切り抜けました~知っておきたい訪問介護」というテーマを取り上げた。
番組では、24時間訪問介護(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)を掘り下げた。「驚きの24時間訪問介護とは?」「朝昼晩 いつでも必要なサービスが!」と銘打ち、24時間訪問介護について紹介。
・1日何度もヘルパーが訪問
・ヘルパーの対応は夜間も可。24時間態勢で緊急時には駆けつける
・利用回数に限らず定額
といった同制度のメリットについて説明し、
「今はこんな介護があるのか」
「楽です、本当に」(母の介護で介護離職寸前だったという男性)
「家族の笑顔が増えたっていうのがいちばん良かった」(介護と育児の両立に悩んでいた主婦)など、実際の利用者の声を紹介した。
働き手の視点からみると厳しい現実が…
番組を見た人からは、評価する声が多数あがった。
「この制度が広がって、利用する人が増えると助かる人がたくさんいるでしょう」
「おもてなし大国、シニア大国だからこそ、さらに介護先進国になってほしい」
「もっと利用者が増えて、体制を整えて、上手く利用できるようになればいい」
しかし同番組を見た現役のあるヘルパーAさんは、こう語る。
「この特集には、“働く側”の視点がなかったですね。 専門家は『いいサービスがあるのに、介護家族に知られていないことが問題』というようなことを言っていました。でもサービスがあり、利用者がいても、働くヘルパーがいなければ成立しません。いざ、サービスが知られてたくさんの人が利用したいと思っても、介護人材が不足している中で本当に対応できるのか…?
それに定期訪問について、『最短15分で1日何回も』『ヘルパーが効率よく利用者のお宅を回れるようなシステムを作り…』と言いますが、裏を返すとヘルパーは移動ばかりです。移動の負担をどう考えるか、移動時間がどのように給与に反映されるかも気になります」
ヘルパーのAさん以外にも、働く側への視点が足りない、と指摘する声がネットにあふれた。
「働く介護士の負担が大き過ぎる」
「夜間に訪問するヘルパーの身にもなってほしい」
「働く人の賃金や勤務時間にもスポットを当てるべきでは」
介護離職を防ぐためには、介護保険サービスや介護施設を利用してもらうことが重要だ。サービスや施設を、必要に応じ増やすことも重要だろう。しかしそこで働く人がいなければ、サービスも施設も機能しない。
今回の特集は、介護家族には便利なサービスを知るいい機会になったと思われるが、現場で働く介護職には、不満が残るものだったようだ。
今後は、ぜひ「介護家族」だけでなく「介護職」の離職も減るような、番組に期待したい。