毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「若者語は使うべからず」という話題について紹介します。
高齢者が悩む、若者言葉
介護施設や介護サービスを利用する高齢者と、働くスタッフ。きっと、祖父母と孫くらいに年が離れていることも多いだろう。そんな目上の高齢者に、介護職がきちんと敬意をもって接するのは当然のこと。もちろんケース・バイ・ケースではあるが、利用者に敬語をつかうのは、そのなかでも基本のひとつ。しかし現実には、使い慣れていない敬語は口から出てこず、染み付いてしまった言語感覚は、そう簡単に抜けるものではないようだ。
10人近くの若手スタッフを統括する立場にある施設職員のHさんが、“若手スタッフの言葉の乱れ”についてこう話す。
「我々40~50代ぐらいの“一世代違い”の人間だと、若い子たちが変な言葉や表現を使った時、『若い子が使う言葉なんだ』『こういう意味・こういうニュアンスなんだろうな』っていうのは何となく分かるじゃないですか? けれども利用者のお年寄りのように、若者と二世代違う人になると、本当に意味が分からないんですよ」
Hさんがこれまで利用者から尋ねられた“意味が分からなかった言葉”は、「逆に」「ヤバい」「ガチで」「ハンパなく」など。「逆に」というのは、それだけなら普通の日本語だが、最近の若者の間では、逆でも何でもないのに、「逆に言うと」「逆にアリです」などと使う例が増えている。Hさんによれば、お年寄りにとって「逆に」は特に分かりにくいようだ。
「例えば『ヤバい』とかは、お年寄りも使い方を心得てきていて、美味しいお菓子を食べた90代のおばあちゃんに、『こういう時に“ヤバい”って言えばいいんでしょ?』って聞かれたことがあります。
けれども『逆に』の場合、若いスタッフが『逆に○○しましょうか?』とか『逆に○○だと思います』とか言うと、お年寄りは本当に意味が分からないみたいですね。まぁ我々でもよく分かりませんけど(笑)。『“逆に”って何が逆なんだ?』みたいなことを言われたっていう、スタッフからの報告を何度か聞いています」
他にもある、高齢者に不評な言葉
また最近よく使われる「大丈夫です」という表現も、これまたお年寄りには不評だそうだ。
「もともとスタッフは利用者から物をもらってはいけないんですが、『お菓子を頂いたからおひとついかが?』みたいなシーンはしょっちゅうあるわけです。そんな時に若い子は『大丈夫です』って答えるんですね。男性の利用者に『“大丈夫です”ってどっちなんだ!?』って怒鳴られた女の子のスタッフがいますよ」
ちなみにHさんによれば、「超」「全然大丈夫です」「マジ」といった単語については、「あまりに若者がしょっちゅう使うので、お年寄りたちもすでに意味を理解しているはず」とのこと。何年か後には、「逆に」が“市民権を得る”日がやって来るかも?