毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「親のウソで介護業界に」という話題について紹介します。
ひいばあちゃんの世話をしたことを思い出して介護職に
毎年、いろいろな機関が「子どもがなりたい職業」という調査を行うが、結果的には、子どもの頃は想像もしていなかった職業に就いた人の方が多いはず。
現在、都内の介護付き有料老人ホームで働くナオミさんは、母親の罪のないウソにより介護業界で働くことになったという。
北関東出身のナオミさんは、高校卒業後に東京の専門学校に入り、卒業後は色々な職業を転々としたという現在30代の女性。
20代の頃は、年に1回実家に帰る度に職業が変わっているような気楽な人生を過ごしてきたが、30代に入って「そろそろ一生の仕事を見つけなければ」と思った時に、ふと頭に浮かんだのが、中学高校時代に一緒に暮らしていた、ひいおばあさんの面倒をよく見ていた記憶だった。
当時、ナオミさんのひいおばあさんは90代で、寝たきりの状態。
基本的にはナオミさんの母親が面倒を見ていたのだが、とりわけ食事の世話をするのはとても大変そうだった。そのため、ひいおばあちゃん子だったナオミさんは、時間のあるときには母親に代わって食事の世話をしていた。
そして、30代になって仕事を探す際、母親の「ナオミは、ひいばあちゃんの世話が上手だわ」という言葉が頭をよぎり、介護業界に就職した。
母親の言葉がきっかけで、介護の世界へ転職したのに…
しかし介護業界に飛び込んで数年後、ナオミさんは母親からある話しを聞かされ、呆然とすることになる。
母親に、「何で介護業界で働こうと思ったわけ?」と聞かれたナオミさん。
彼女は求人が多いこと、これからニーズが高まる仕事であることなどを説明した上で、こう語った。
「でも一番の理由は、高校の時によくひいばあちゃんの世話をしてたことかな。ばあちゃん、とっても嬉しそうにしてくれたし、お母さんも『世話が上手だ』って言ってくれたじゃない」
すると、母親は少しの間、沈黙した後、気まずそうにこう告白したという。
「実はあの頃、ひいばあちゃんの世話をするのに疲れ果てていて、お父さんにはしょっちゅう『老人ホームへの入居も考えよう』って提案してたのよ。
けれどもナオミが世話を手伝ってくれるっていうから、『ナオミは上手ね』『ひいばあちゃんも嬉しそうね』って言えば、ナオミがもっと手伝ってくれると思って、そういう風に言ってたのよ」
それを聞いた時には、罪のないウソとはいえ、それを信じ込んでしまった自分への怒りと恥ずかしさから、ナオミさんは涙をこぼしてしまったのだそう。
ナオミさんは、介護業界を選んだことについての後悔はなく、ひいおばあさんの世話をしていた時のような気持ちを持ち続けている。
いいかげんな母親の言葉に怒りを覚えながら、その反面、いまでは天職に就くきっかけになったことを感謝しているそうだ。
公開日:2017/4/24
最終更新日:2019/10/22