毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「介護業界に男女差別はある?」という話題について紹介します。
介護業界では圧倒的に女性が多い
かつてならば「女の子はいらない」という企業側の言い分が通っていた就職事情は、今や過去の話。
男女雇用機会均等法で「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と、定められており、求職の条件として、「男性のみ」「女性は未婚者のみ」「○○歳まで」など、性別や年齢などを限定する求人は禁止されている。
しかし実態としては、まだまだ男女間の差別が残っていると感じる人は少なくないだろう。
そんななか、女性が重用されている数少ない業界が介護業界だ。
厚生労働省が発表した2013年度のデータによれば、正規職員の介護職員の男女比は男性32.6%に対し、女性は67.4%で、ほぼ2倍となっており、訪問介護員については男性23.7%に対し、女性は76.3%。
非正規職員に限れば、介護職員は86.0%、訪問介護員については95.9%を女性が占めており、女性の力なくしてこの国の介護が成り立たないことは明らかだ。
複数の現場スタッフに話しを聞くと、男女差別は存在しないというのが、介護業界で働く人の共通認識だ。
これまで数か所の介護施設を渡り歩いてきた40代の女性・ミホさんはこういう。
介護業界では男性のほうが不満を持っている?
「私がこれまで働いてきた会社は、いずれも圧倒的に女性が多い職場でした。
オーナーはいずれも男性でしたが、男性を優遇するようなことはもちろんゼロ。もしそんなことをしたら、女性陣の突き上げがスゴいでしょうから、やりたくても絶対にできないでしょうね。
待遇の問題に関しては不満が起こりやすいのがこの業界ですが、男性が昇進などで優遇されたり、逆に数の多い女性が優遇されることは、少なくとも私の周りでは聞いたことがありません」
安倍晋三首相は「女性が輝く日本へ」というスローガンを掲げ、しきりに女性の社会進出を促しているが、これはすなわち、世の女性がそれだけ不条理な思いをしているということ。
女性が悔しい思いをしないだけでも、介護業界は一歩先を行っていることになる。だが、一方では、男性が不満を抱えやすい側面もあるという。
都内の介護事業所で訪問ヘルパーとして働く30代の男性はこう語る。
「私はこれまで一度も、男性か女性のどちらかが優遇されていると感じたことはありませんが、不満があるとすれば、力仕事は男性に回されることでしょう。
数少ない男性スタッフはしばしば力仕事に駆り出されるので、純粋な仕事量という面では、男性の方が明らかに多くなります。
『給料は同じなんだから、女性も重いものを持て』なんてことを言う気はありませんが……」
労働条件が問われることも多い介護業界だが、こと「男女差別」という側面をクローズアップすれば、なかなか進歩的なよう。
男女比の不均衡は、更なる超高齢社会に向けての大きな課題だが、女性が不利益を被らないというメリットは、高く評価して良さそうだ。