毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「100歳のお祝いを孫が企画」という話題について紹介します。
100歳になるAさんのお祝いを、孫が企画
老人ホームの生活は、曜日や気候にはあまり左右されないが、それでも華やいだ雰囲気になるのが年末年始やゴールデンウィークの時期だ。
息子や娘、孫やひ孫の訪問を受けた入居者たちが、普段は見せないような笑顔で談笑する光景は心温まるもの。
都内の介護付き有料老人ホームに勤める40代の介護職・マキさんは、先日、“あまりにも美しすぎる光景”を目にし、思わずもらい泣きしたという。
マキさんが目撃したのは、Aさんというおばあさんの一家が、ゴールデンウィークに集まったときのひとコマ。
Aさんは子どもが6人、孫が10人以上、さらにひ孫も数人いるという恵まれた立場。しかし、子どもたちは全国各地にてんてんばらばらに住んでおり、普段やって来るのは、近所に住んでいる長男夫婦だけだった。
しかしAさんがまもなく100歳を迎えるため、孫の発案によりお祝いをすることに。子どもや孫、ひ孫が全国から集まり、施設内のパーティールームでお祝いの会が行われた。
当日は、お祝いの会を取り仕切った孫が仕出し弁当を手配し、一人ずつお祝いの言葉、プレゼントの贈呈、Aさんからの感謝の言葉など、滞りなく進行。
さらに“二次会”として、同じ会場でカラオケが始まった。
介護職が涙した、お祝いの一場面
介護職のマキさんが言う。
「当日は、ご家族が『私たちが面倒を見ますから』と仰ってくださったのですが、時々、顔を出して様子を見るようにしていました。
カラオケが始まると、Aさんの息子や娘は“懐メロ”を、お孫さんたちは最近の歌を歌ってらっしゃいました。
『最後におばあちゃんも1曲』という話になると、Aさんは『これしかわからないから……』と言って、童謡を選曲したんです。
すると、お孫さんが抱いていたひ孫が、言葉にならないような言葉でその童謡を一緒に歌い始め、それにつられて全員が一緒に童謡を歌い出して。
歌が終わると大きな拍手がわき、みなさんが『おばあちゃん、まだまだ長生きしてね』と声をかけて……。それを見ていたら『なんて良い家族なんだろう』と思って、ボロボロと涙がこぼれてしまいました」
ちなみに会の終了後、マキさんがお孫さんから聞いた話では、Aさんはお祝いの会で用意された仕出し弁当をペロリと平らげたそう。
お孫さんはマキさんに「あれだけ食欲があれば、まだまだ大丈夫そうです」と話したという。
こんな幸せな光景は介護職でないとなかなか目にすることができない特権。その言葉を聞いて、マキさんもさまざまな思いを胸に、深く頷いたそうだ。