毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「人の評価は難しい」という話題を紹介します。
介護中の利用者とのおしゃべりは、コミュニケーション?それとも無駄口?
世の中には、誰もが口を揃えて「○○さんは良い人だ」と言うこともあるが、同じ人を評しているのに、ある人は「気が優しい」と言い、別の人は「短気だ」と言うような、正反対の答えを聞くこともある。
都内の介護付き有料老人ホームで介護職として働くスズキさんは、最近立て続けに「人の評価は難しい」と思うようなケースに巡り合った。
スズキさんはその施設で働き始めて十数年目。40代の彼女は介護スタッフの中ではベテランで、新人や若手の教育も任されている。
先日、働き始めて2年目の若い女性スタッフAさんとこんな会話になった。
スズキさん「入居者の方のお世話をする時は、黙っていないで何か会話しながらやるといいわよ。ずっと黙って介助していたら、入居者の方だって不気味でしょうし、おしゃべりをしてコミュニケーションを取るのも我々の仕事なのよ」
Aさん「ハイ……でも実は先日、先輩から、『お年寄りとは無駄口なんてきかなくて良いんだからな。こっちはやることがいくらでもあるんだから、おしゃべりなんかしてたらいつまで経っても仕事が終わりやしない』って、言われたんです」
そしてAさんの先輩は、スズキさんの名前を挙げ、「おしゃべりばかりしている」と言っていたのだとか。
おしゃべりを無駄口と捉えられたことにスズキさんは大いに驚き、かつショックを受けたが、確かにAさんの先輩が言うようにおしゃべりばかりだと仕事が進まないということも一理ある。これ以降、スズキさんは仕事中に余計な無駄口が増えないように気をつけるようになったという。
新人介護職は「素直で良い」と見るか「教えないと何もできない」と見るか
一方、スズキさんが大事に育てている新人スタッフのBさんについても、評価が割れる事件があった。
その新人Bさんは、とにかく融通が利かず、「教わっていません」「やったことがありません」が口癖。手取り足取りひとつひとつ仕事を教えなくてはいけないのだ。
それでも、非常に素直で、仕事を頼めば嫌な顔ひとつせずに何でもやってくれるため、スズキさんはBさんの仕事ぶりを大いに買っていた。
しかし先日、上司と話しているときにBさんについて話が及ぶと、上司によるBさんの評価はスズキさんが考えているものとはまったく異なっていたという。
スズキさん「Bさんはまだまだ教えることがたくさんありますけど、人柄が良くていいですね」
上司「『人柄が良い』じゃなくて『人柄だけ良い』でしょ!何でも教えなきゃいけない子なんてダメよ」
これを「スズキさんがポジティブで、上司がネガティブなだけ」と考えてしまうのは簡単だが、例えば面接なら、どちらの人にあたるのかはまさに運次第。
スズキさんの息子は現在、就職活動の真っ最中だが、面接で落とされて落ち込む息子に、「そんなに落ち込まなくても良いの。その面接官とは合わなかっただけよ」と、アドバイスしているそうだ。