毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「オートロックと訪問介護」という話題を紹介します。
防犯対策のオートロックが介護の妨げに?
今や防犯対策の常識となったのが、集合住宅の入口のオートロック。
一人暮らしの女性が部屋を探す際には、「オートロック付き」を絶対条件に挙げるケースも多いが、介護を必要する人にとっては、オートロックが時にデメリットになることがあるという。
一人暮らしの叔母が要介護認定に
中部地方に住むシバタさんは、近所に住む叔母の介護でオートロックが大きな問題になった。
「叔母は数年前に夫を亡くし、それ以来、一人暮らしをしています。私は叔母の家から車で15分くらいの場所で暮らしており、同居を勧めていますが、叔母の答えは『NO』。
最近、要介護認定を受け、ヘルパーを頼むようになりましたが、そこで大きな問題になったのがオートロックだったんです」
ヘルパーが訪問しても反応がない?!
これまで「一人暮らしでも大丈夫だから」というセリフを信じてきたシバタさんだったが、叔母の身体は思いのほか衰えていた。
時に起き上がれなかったり、トイレに入っていて、すぐに立ち上がれなかったりすることがあり、ヘルパーからシバタさんに、
「インターホンを押しても反応がない」という連絡が入る事件が続いたのだ。
訪問ヘルパーがオートロックを外から開けられない!
「叔母のマンションのオートロックを解除する方法は、『カギで開ける』『暗証番号を押す』『インターホンで住民を呼び出して、ロックを解除してもらう』という3種類です。叔母が解除できないとなると、残りはカギを渡すか暗証番号を教えるかですが、カギを渡すのは、防犯上、介護事業所側から断られています。
となると、暗証番号を教えるしかありませんが、もしマンションで何かが起きた場合、責任を問われそうですよね」
部屋のカギは、ドア付近にキーボックスを置くことで何とかなりそうだが、エントランスにはキーボックスを置く場所はない。管理人に事情を話してみたものの、「対応できるか約束できないので、家族で対応して欲しい」と、あっさり却下。
仕方が無いので、ヘルパーが来る時間にミチコさんが叔母の家に行き、入り口でオートロックを開けることになったが、移動だけでも往復30分、それをほぼ毎日続けるのはかなりの負担だ。
「オートロックを開ける」負担の解決方法は?
そこでケアマネジャーに相談すると、現実的な解決策が提示されたという。
「マンションの管理センターに相談し、『○○(訪問介護事業所の名前)です』と名乗ることで、オートロックを開けてもらえるようにしました。ヘルパーの名前も伝えることで、トラブルを避けるようにもしています。これで、週に何度も叔母の家と自宅を往復しなくても済むようになりました」
ただ、ケアマネジャーの話では、「今回は運が良かった」「防犯上の理由から、こういった交渉に応じてくれないマンションも多い」のだそう。
介護サービスの利用者やその家族の笑顔の影には、人知れぬ苦労が色々とあるようだ。