毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「あまりに無教養なスタッフ」という話題について紹介します。
戦争を生き延びた利用者さんが、若いスタッフと話していて…
介護の仕事にはさまざまな資格が必要とされる職種も多いが、その前提として“最低限の常識と教養”が要求されるのは言うまでもない。
しかし、都内の介護付き有料老人ホームで働くヨシダさんは、先日、若いスタッフの常識のなさに愕然としたという。
ヨシダさんを呆れさせたのは、20代前半の女性スタッフAさん。
Aさんは高校を卒業後に介護の世界に進み、介護福祉士の資格も持っている幹部候補生だ。
マジメな仕事ぶりで利用者からの信頼も厚いAさんだが、今年の夏、ヨシダさんは驚きの会話を耳にしたという。
「ウチの利用者さんの中には80代の方もいらっしゃって、その中に1人、戦争の時に満州にいたという男性がいるんです。その方は当時まだ子どもだったのですが、親に連れられて満州に渡ったものの、日本が戦争に負けたため、大混乱の中で命からがら帰国。
ご兄弟を現地で亡くされたそうで、ことあるごとに『今の日本は……』『日本が戦争をしていた頃は……』と、戦争の話を繰り返しているのですが、ある日、Aさんに満州での生活の話をしていたんです」
第二次世界大戦が終わったのは1945年のこと。
日本人は平和ボケしていると言われることも多いなか、まさに生き証人のような人だが、Aさんは見事にその男性利用者を落胆させたそうだ。
若い介護スタッフの驚きの一言「日本も戦争したの?」
「まず、Aさんは『満州』という単語を知らなかったんです。男性はその時点で呆れ果てていました。
それでも、『戦争の時は、中国の一部は日本だったんだよ』と丁寧に説明していたんですが、Aさんは『戦争って言われても……』と笑って、さっさと話を済ませようとするばかり。
Aさんを呼び寄せ、問い詰めたところ、彼女は日本が戦争をしたことを知らなかったのです」
日本の歴史については教科書で一通り学ぶはずだが、Aさんは第二次世界大戦のことをまったくわかっておらず、「日本は勝ったんですよね?」と、聞いてきたのだそう。
そこでヨシダさんが簡単に内容を説明すると、不思議そうな顔をして「日本は戦争に負けたのに、こんなに栄えているじゃないですか」と言ったそうだ。
ヨシダさんは、Aさん以外の若いスタッフでも常識のなさに唖然としたことがあるという。
「若いスタッフで、『生まれてから1冊も本を読んだことがない』という子がいます。『マンガはたくさんあるけど、字だけの本は1回も読んだことがない』そうです。
『日本の大統領って誰?』と言っているのを聞いたこともあります。聞かれた相手も『えっ? 安倍さんでしょ?』と言っていましたが……。
何度説明しても、円高と円安の意味がわからない子もいました」
ただ、いわゆる“常識”とされることを知らない若い子が仕事ができないかと言えば、それはまたまったく別の話なのだそう。
たとえば、根はマジメなAさんは、その後歴史の本を読み、今ではお年寄りが話す戦争話に、興味深そうに耳を傾けているという。
介護職にとっては、知識のあるなしだけでなく、「人の話を聞ける素直さ」が大切なのかもしれない。