毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「訪問介護の利用者が亡くなったら、お通夜や葬儀はどうする?」という話題について紹介します。
介護の現場で否応なく訪れるのが“別れ”。生きとし生けるもの、必ずいつかは亡くなることが世の常であり、介護業界と“死”は切っても切り離せないのが運命だ。
人が亡くなれば、お通夜やお葬式が執り行われるが、訪問介護を受けていた利用者が亡くなった場合、ホームヘルパーはどうしているのだろうか?
ヘルパーがお葬式に行くのは禁止~ハセガワさんの場合~
都内の訪問介護事業所の管理者であるハセガワさんはこう語る。
「私の事業所では、利用者が亡くなった際にヘルパーがお通夜や葬儀に参列することを禁止しています。非常にドライな考え方ですが、会社としては、利用者が亡くなった時点で契約は終了という解釈です。
参列するかしないかで不公平が生じてはいけないので、もし参列するなら、必ずすべての利用者のお通夜かお葬式に出なくてはいけません。それを仕事とみなすのかどうか、そのための人員を常に確保できるのか──そういったことを考えた上での判断です。
『お通夜やお葬式に出たい』『最後のお別れをしたい』というヘルパーの気持ちは痛いほどよく分かりますが、会社としてはお香典を経費として認めるわけにはいきませんし、ヘルパーにも負担が大きすぎます。中には、担当している利用者が年に5~6人亡くなるヘルパーもいますから」
ハセガワさんの事業所では、ヘルパーがお葬式に参列する代わりに事業所から花を送ることになっているのだとか。
ヘルパー個人の判断で、お葬式に出席~ヤスダさんの場合~
都内でホームヘルパーとして働くヤスダさんの会社では、利用者が亡くなったときにお葬式に参列するかどうかは、完全に個人の判断に委ねられている。ヤスダさんはいう。
「会社からは特に何も言われていませんね。長い間担当したり、家族とも顔見知りになったような人だったら、お通夜かお葬式には出ることもありますし、スタッフ同士で有志を募って香典を包むこともあります」
お葬式の参列をめぐって、利用者家族とトラブルに~シミズさんの場合~
一方で、ヘルパーの中には、利用者のお通夜や葬儀に一切行かなかったことでトラブルになってしまった人もいるという。
関西地方でホームヘルパーとして働くシミズさんが振り返る。
「私が以前、勤めていた訪問介護事業所では、利用者が亡くなった際の葬儀に関するルールは特にありませんでした。お通夜やお葬式に出る・出ないは、すべてヘルパーの裁量に任されていたのです。
しかし、利用者の葬儀をめぐって、同僚がちょっとしたトラブルに巻き込まれたことがありました。
その同僚は、家庭の用事を優先させ、3年ほどお世話をした利用者のお通夜やお葬式に参列しなかったのですが、そのことで遺族が『線香の1つもあげに来ないなんて非常識だ』と怒ってしまったのです。狭い街なので、すぐにその噂は我々スタッフの耳に入り、上司がお詫びがてら自宅に伺い、線香をあげさせてもらったそうです」
シミズさん自身は、「担当した人が亡くなったことが分かった時は、可能な限りお通夜に行くようにしています」とのこと。
利用者さんが亡くなったときに、ヘルパーがお通夜やお葬式に足を運ぶと、ご遺族は例外なく大変感謝してくれるそうだ。しかし、不要なトラブルを避けるためにも、会社にルールを確認するか、自分なりのルールを決めておくと良いだろう。