毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「モンスター上司」という話題について紹介します。
話しやすく、頼りになる先輩だと思っていたら…
近年、誰がどう見ても理不尽だとしか思えないような要求をする客「モンスタークレーマー」や、学校・教師に対して過剰なクレーム・要求を突きつける親「モンスターペアレント」が社会問題化している。こういった「モンスター○○」が1人いるだけで、組織はメチャクチャになってしまうことがある。
現在、介護事業所でヘルパーとして働くTさん。かつて働いていた施設で出会った先輩は、さながら「モンスター上司」だったという。
そのモンスター上司・Kさんに出会ったのは、Tさんがまだ介護の世界に入って間もない頃のこと。介護の右も左も分からないTさんに対して気さくに話しかけてくるKさんは、話しやすくて頼りになる先輩のように思えた。が、実はそれはとんでもない間違いだった。
介護には、一定の「正しいやり方」というものが存在する。例えば、「利用者の手を引いて歩く」「車椅子から立たせる・座らせる」「寝返りを打たせる」「食事を食べさせる」─こういった行為にはすべて、ある程度のマニュアルがある。しかし新米のTさんが初めからそれらをすべて完璧に行えるわけがない。Tさんが間違えてしまった時、先輩であるKさんがそれを注意するのは当たり前なのだが、その注意の仕方が“モンスター”だった。
部下をダメにする「モンスター上司」にどう対応すれば…
モンスター上司・Kさんの“やり口”は、おおよそ以下のような経緯をたどる。
(1)まず些細なミスを指摘し、非難する
「いつもあんなやり方してるの?」「どこであんなこと教えられたの?」「前に『絶対ダメ』って言ったよね?」
(2)コトを大きくする
「前もあったんだけど、○○さん(利用者)怒らせると面倒なんだよねー」「△△さん(他の職員)にバレちゃったらヤバいなー」
(3)さらに追い打ちをかける
「まいったなー…」「マジかー…」「やっぱ上に報告しないとマズいなー…」「自分がやったことの意味分かってる?」「一歩間違ったら○○(「大問題」「大怪我」など)だよ」
(4)結局恩を売る
「分かった、この件いったん私が引きとるわ」「私が謝ってくるから」「後は私に任せて」
これだけを見れば「そこまで問題なの?」と、お思いの方も多いだろう。
しかし後に分かったことなのだが、実際は、
(1)「Tさんがやったことは、それほど大げさに非難されるようなことではなく」
(2)「○○さん(利用者)は怒らせると面倒でも何でもなく」「△△さん(他の職員)にバレても、何の問題もなく」
(3)「Kさんは謝りもしなければ、利用者に説明もしない。要するに何もしていない」
のだった。当時のTさんは、あまりにも毎日のように上司のKさんに叱責されるため、自分の介護職としての適性を疑っていた。だが、ある日そのことを別の先輩に相談すると、あっさり「Kさんの言うことは聞き流していいから」と言われたのだという。
周囲の評を総合すると、施設側は、Kさんの下についた新人がどんどん辞めてしまうため、Kさんを辞めさせたいということ。しかしKさん自身が何かをやらかすわけではないので、それも叶わない状態が延々と続いているのだそうだ。Tさんは、「世の中にはKさんのような上司もいるってことを学べただけでも良かった」と、大人の態度で振り返る。
もしあまりに1人の上司から、根拠のない叱責が続く場合は、別の上司からも意見を仰いでみても良さそうだ。