介護の世界で、情熱を持ってキラキラと輝いて生きている「情熱かいごびと」。その筆頭にあがったのが、高瀬比左子さんです。介護に関わる人たちの横のつながりの場=未来をつくるkaigoカフェを立ち上げたその原動力についてうかがうインタビュー。第2回目は、高瀬さんのルーツに迫ります。
○●○ プロフィール ○●○
高瀬比左子さん
「未来をつくるkaigoカフェ」主宰
介護施設のケアマネジャーとして勤務するかたわら、未来をつくるkaigoカフェを主宰。職場や仕事のジャンルを超えて対話をする場を作ることで、理想の介護のあり方を模索する。(未来をつくるkaigoカフェとは?については
第1回のインタビューをご参照ください)
未来をつくるkaigoカフェ
*掲載内容は取材時(2014年)の情報となります。
介護の現場を知り、もっと貢献できる自分になりたい
kaigoカフェでの一場面。好きなカップを選んで美味しいコーヒーを飲むことができます。
――そもそも、高瀬さんはどういう経緯で介護の世界に入ってきたんですか?
実は、最初からこの業界を目指したわけではないんです。女子大を出て、新卒で入ったのは一般企業。秘書をしていました。でも、就職してすぐに、「これは私がやりたいこととは違う!」と思ってしまって。思い立ったらすぐ行動の私ですから、後先も考えず辞表を提出してしまいました。
――その後はどんな仕事を?
自分が一体何をやりたいのか?模索をする日々の中、阪神大震災をきっかけに日本全国に介護ボランティア団体を広げようとしている方が書かれた本に出会ったんです。
そこでもしかしたら、
福祉ボランティアの世界で自分が活かせる場が見つけられるかもしれない…と思いました。ボランティア団体の設立支援を様々な形でサポートする団体だったのですが、活動をする中で、側面支援としての関わりではなく、もっと現場を知って、今よりも貢献できる自分になりたい、という気持ちがどんどん強くなって。介護保険制度が始まった年から訪問介護の現場で働きはじめるようになります。
――ちょうど介護保険制度が導入される年ですね。
はい、この制度が介護の世界を変える、新しい介護の時代が始まるのだと、意気込んで働き始めました。介護福祉士、ケアマネジャーと資格を取得することで、介護のスキルもマインドもアップし、よりよい介護ができると思っていました。
……けれど、すべてが理想どおり、というわけにはいきませんでした。「その人らしさを活かした支援」「住み慣れた地域でいつまでも」を示唆した制度
なのに、現場で働く者は、今、目の前にある膨大な仕事を片付けることに追われてしまう。利用者様にとって最良と思える計画を立てようと思っても阻(はば)まれることもあって、またまた、悩みました……。
――具体的にはどのようなことで悩みましたか?
たとえば、お元気でよく歩く利用者様が、「ひとりで外出したい」とおっしゃっる。現場スタッフは全員、「問題なく大丈夫」と思っています。けれど、利用者様のご家族が、「よけいなことをしなくてもいい、安全に部屋で過ごしてほしい」とおっしゃっる…。すると、利用者様の自己決定、個人の尊重が第一と考えていても、実現できないのです。
けれど、これはご家族のせいだけではないのですね。突き詰めれば、自分の力量の問題なのです。
どんなアクションを起こし、どう対話したら利用者様の幸せにつなげられるのか。その答えが自分の中にみつかっていなかったということも、今思えば大きかったですね。
Facebookで自分らしさを発信して気づいたこと
――心の支えになったのは何ですか?
2010年から始めたFacebookでした。職場ではなかなか口にできない気づきや思いを、発信していました。すると、共感して投稿してくださる方がいる。そんなやりとりに癒され、また新たな気づきもいただきました。ひとりで悩んでいるときとは、まったく違う気持ちになり、前向きな思いも生まれてきました。また、Facebookで知り合う方には、さまざまな分野で活躍する方がいて、刺激を受けることも多かったんです。
そんな中、自分自身の対話力不足や現場での対話の必要性を日頃から感じていたので、ソーシャルネットワーク上ではなく、介護についてフラットに対話できる場ができないか、介護職が主体となってそのような場がつくれないか…、と思ったんです。
未来をつくるkaigoカフェfacebookページ
――実際に会って対話することに、どのような価値がありますか?
介護職の人は、人見知りな人が多いんです。私自身もそうで、対話力が足りなくて。でも、
介護の専門職としてさまざまな専門職と連携する中では、対話力は絶対に必要です。だから、Facebookだけではなく、リアルな場で対話することが必要だと思ったんです。それに、
介護現場では閉鎖的な職場環境に悩んでいる人も多く、そこを開いていくためにも、実際にさまざまな人と対話していくことが必要だと考えました。
――それが、kaigoカフェにつながっていくのですね。
はい。Facebook上で呼びかけて、はじめての会を開いたのが、2012年7月なんですが、その場に約50人程集まってくださったんです。みなさんがこうした場を求めていたんだなということを、改めて実感しました。
第3回に続きます。