毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「採用面接では面接官も緊張している?」という話題について紹介します。
面接を受けるのは慣れていても、面接をするのは初めて
就職や転職をする際、まず間違いなく行われるのが面接。
緊張で声が震えてしまったり、頭が真っ白になって、上手にアピールすることができなかったりといった失敗をしてしまうことは珍しくないが、実は緊張しているのは応募者だけではなさそうだ。
都内で訪問介護事業を展開する会社で、自らホームヘルパーとして働くかたわら、採用活動時には面接官もしているシイナさんは、初めて面接する側になったときに“ある失敗”をしてしまったという。
「今から10年ほど前、私が30代半ばだったときのことです。当時の私は入社して数年目で、ようやく仕事に慣れてきた頃でした。
最初は派遣スタッフとして働いていましたが、その後、正社員として登用されたため、『アナタもやってみなさい』ということで、採用面接の面接官を任されたのです。
私は20代の頃、何度か転職を経験していたので、面接を受けるのには慣れっこでしたが、面接する側になるのは初めてでした」
初めてとはいっても、シイナさんが働く会社には面接マニュアルがあり、その手順に沿って進めるだけのこと。面接マニュアルには質問事項や応募者のチェックポイントも記されているので、面接での会話はあらかじめ想定していたという。
しかし、シイナさんが面接官としていざ面接に臨むと、想像もしていなかった事態が起こったそうだ。
緊張でガチガチの応募者への対応が…
「私が初めて面接をしたのは20代の女性だったのですが、『どうぞ』と言って女性を招き入れると、見るからにガチガチに緊張していたんです。
今の私なら、『そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ』と話しかけたり、まったく関係のない天候の話などから話し始めたりして、応募者の緊張をほぐすように努めるのですが…。
そのとき、面接官の経験がなかった私は、『弊社を志望した動機は?』と、いきなり本題に入ってしまったんです。
その女性は緊張のあまり言葉に詰まってしまい、『ウッ、ウッ……』と下を向いて涙を流し始めてしまいました。
さすがにこれはマズいと思い、慌てて先輩を呼ぶと、『じゃあ私が変わるから』と言われました。
先輩が面接中に女性から聞き出した話によると、私は厳しい目つきで応募者をにらんだ挙げ句、女性が言葉に詰まると深い溜め息をついていたとのこと。
面接を受けていた女性は『これはもうダメだ』と思い、泣いてしまったようでした。
初めて面接官になって、私も緊張してしまい、応募者の表情や様子が見えていなかったんですね」
その女性は、先輩社員の巧みなフォローで緊張もほぐれ、めでたく採用に至ったが、一方のシイナさんは、いまだに社内で「応募者を泣かせた女」と呼ばれてしまうとか。
面接で緊張してしまう応募者は多いが、面接官も緊張していると考えれば、少しは緊張がほぐれそうだ。