飲食店で働くことが大好きで、「天職」と考えていたOさんが、不安定な雇用に悩み、将来を見据えて選んだのが介護の仕事。しかし、始めてみたら、こちらのほうが「天職」と思えてきて――。2回目は、少しずつ介護の仕事にシフトしていくOさんの様子をお伝えします。
*O・Mさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
O・Mさん(37歳)の転職経験
高校卒業後、老舗の高級和食店に就職
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妊娠が発覚し、1年で退職、9年間専業主婦に
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第2子が5歳になると昼間のみ、和風ファミレスにパート勤務
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「ファミレス勤務」と「訪問介護の登録ヘルパー」と二足のわらじ
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ファミレスをやめ、「訪問介護の登録ヘルパー」と「グループホームのパート」の二足のわらじ
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グループホームにフルタイム勤務、のちに正職員になり、現在はホーム長
訪問介護で「自立支援」に開眼!
勤務していた飲食店には、介護の仕事を始めることはまだ言っていませんでした。介護の仕事が本当に自分に合っているのかは、やってみなければわかりません。だから、まずは試してから、と思って。
幸い、訪問介護は自分の都合のいい曜日や時間帯で仕事が選べ、飲食店の勤務の曜日に重ならないようにして働くことができたので、しばらくは二足のわらじをはくことにしたのです。
でも、訪問介護の仕事を始めてみたら、おもしろくって! のめり込みました。
ヘルパーの実習を受ける前は、介護って、手とり足とり、高齢者の方をお世話するのだと思っていたんです。けれど、「自立支援」って、そういうことじゃない。ご本人の力を引き出すために、背中を押して差し上げることなんですよね。
片手が不自由な方の家で、お料理を代わりに全部作ってしまうのではなくて、動くほうの片手でどうやって食事のしたくをしようか、一緒に考えてご自分でできるように支援していく。「筋力がなくてベッドからうまく起き上がれない」と思っている方に、サポートしながらどこに手を置いたらいいのかをお声がけする――。
そういう支援で、昨日できなかったことが今日はできる、という経験を何度もし、「この仕事は本当に役に立つ仕事」だと思えてきたんですね。
もちろん、どうにもできないことに関しては、お世話させていただくのですが、そんなときは、「ありがとう」「助かったわ」なんて言っていただけることも多くて、胸にグッときます。飲食店にいらっしゃる方は、生活力もあるし、自分でなんでもできるわけです。でも、目の前にいるこの人には、支援する私が必要なんだ、と思うと、使命感を感じました。
なかには気難しい方もいらっしゃるけれど、それも体が動かなくて気持ちがざわついてしまうからだ、と思えば、理解できます。昨日できなかったことが今日、目の前でできるようになられたのを見れば、怒鳴られたことも「全部チャラ!」と思えました。
夫と別居するためにも介護の仕事をがんばる!
飲食店の勤務は週に3回程度。店長には「この店が続く限りいてくれないか」と言ってもらっていたので、とりあえず続けました。でも、その勤務の合間を埋めるかのように、どんどん訪問介護の仕事を増やしていきました。やればやるほど、新しい体験が増え、感動も増えて、だんだん「この仕事だけでやっていきたい」と思うようになりました。
実は、この頃から、夫と別居を考えていました。夫自身はいい人なのですが、義父との確執がどんどんひどくなってきて。義父が激怒するに決まっているので、ほかの仕事をしていることは内緒でした。簿記の勉強はしたけれど、相変わらず義父の経営する会社の経理の仕事はしていません。私のことを家政婦のように扱い、徹底的に否定してくる義父のために働く気には、どうしてもなれないのです。
間にはさまれた夫は困った様子を見せるだけで、積極的に義父に抗議してくれることもなく……、男の人ってそういうものかもしれませんよね(苦笑)。
もどかしさや情けなさも感じましたが、どこかで、「もういいや!」という思いもありました。夫が困るなら、私が身を引いてしまおう、という気持ちでした。
そんなわけで、将来別居する可能性を考えると、もっと生活も安定させなければなりません。介護の仕事は責任が重いですし、夜勤があるなど、体力的にも全力投球したい仕事です。とはいえ、小学生ふたりの子どもの母でもあるわけで、学校行事や役員なども避けて通れません。そして、夫の実家には働いていることを伝えていないので、「草取りに来て」と言われれば、すぐに行かねばなりません。
飲食店、訪問介護のほかに、学校にも役員として通い、週に1度は夫の実家に。毎日自転車に乗って行くところが違うのですから、めまぐるしい毎日でした。でも、それも「将来、介護の仕事で身を立てる」という目標があってのこと。体も心も元気そのものでした。
そして、そんな中、夫は一人、家を出て実家に戻って行きました。
次回は、グループホームにも勤務し始めたOさんの様子を伝えます。
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