20年近く事務職で働いていたのに、40歳になってから介護の道にすすんだM・Rさん。戸惑いや不安もあったと思います。しかし、知らず知らずのうちに、「使命感」を感じていく……。2回目の今回は、Mさんがなぜ介護の仕事に魅力を感じたのかを、ひもといていきます。
*M・Rさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
M・Rさん(52歳)の転職経験
10代で結婚。短大卒業後、大手メーカーで事務として9年勤務
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東京に上京し事務として勤務。その後派遣に転職し、働きながら音楽活動。その間に二度目の結婚、出産
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実家が介護事業所の友達に誘われ、訪問ヘルパーとして3年勤務
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グループホームに転職。介護福祉士の資格取得。しかし介護の仕方に疑問を持ち異動願い。訪問介護のサービス提供責任者に異動
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サ責の仕事が多忙で夫の不満がつのり退職。しかし無職状態にウツになりかける
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仕事復帰しグループホームに就職。ケアマネジャーの資格を取得
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介護職を辞め、新たなグループホームに転職しケアマネジャーに
「自分がしてほしい介護をする」を信条に
ヘルパー2級は取得したものの、実習に行った特別養護老人ホームのケアに幻滅し、介護業界に飛び込めずに半年間を過ごしました。子どもは2歳になって、保育園に通っていました。保育園を継続していくためには、求職活動をしているか、働かなくてはなりません。2年も3年も「求職活動中」というわけにもいかないので、単発の派遣の仕事をいくつかこなすなど、お茶を濁す方法をあれこれ講じていました。
が、それでも、そろそろ腰を落ち着ける仕事場を見つけなければ、と思っていた矢先でした。最初に介護業界をすすめてくれた友人が、「うちの事業所においでよ」と強力に誘ってくれたんですね。私、もともと友人の会社に勤めるようなことはあまりしたくないタイプなんです。仕事のやり方に疑問を感じても言いにくいですし、いざ仕事を辞めるときに、友人とも縁が切れてしまうような気がします。適宜距離を取りながら付き合ったほうがいいのにな、と思っていました。けれど、「とにかく、見学に来てよ」と何度も誘ってくるのです。おそるおそる、行ってみました。
すると、想像以上に楽しそうなんですね。実習先の特養は、雰囲気が暗かったですが、彼女の家がやっている事業所のデイサービスは、すごく明るいんです。利用者さんのお迎えにも付き添ったのですが、家まで迎えに行き、「こんにちは!」と笑顔で話しかけ、近況を聞いたり、荷物を持ってあげて車に乗せる介助をしたり。認知症の方や車いすの方にも、まるで旧知の友人のように接していて、分け隔てがありません。「私がやりたかった介護はこれだ!」と思いましたね。
また、デイサービスのケアマネジャーでもあったベテラン看護師さんがすばらしかったんです。そのデイサービスは、ふつうの一軒家を改築した親しみやすい環境。看護師さんは、自宅に親しいお客様を招き入れるような感覚で、利用者さんに接していました。言葉遣いもやさしいし、オムツ替えも入浴も、相手のプライドを傷つけないように、尊厳をもってお声がけをする。褥瘡の手当てなどもとてもていねいなんです。
母と同い年のその看護師さんは、私の「介護の母」のような存在でした。「Mさん、介護というのは、自分がやってほしいようにやるのよ。介護する側の都合でやり方を決めてはだめよ」と。ヘルパー2級を取得するときに学んだことを見事に実践していました。こんな素晴らしい人がいる事業所なら、働いてみたい! 私はこの事業所で、燃えてみようと思いました。
実際には、私は、その事業者が手がけるサービスの中から、訪問介護を選びました。家事援助と身体介護、両方やりました。最初は友人がついてきてくれて、きめ細かく技術や接し方を教えてくれました。主婦ですし、小さい子どもがいるので、オムツにも慣れています。家事援助も身体介護も抵抗がなく、スムーズに仕事に入れました。そして、のめりこみました。
認知症の方、麻痺がある方、利用者さんたちはいろいろでしたが、みなさん、私が来るのを心待ちにしてくれるんです。「もう帰っちゃうの? まだいてくれればいいのに」「もう少し私の話し相手になって」。自分が「必要とされている」のを実感できるので、やりがいがあるんですね。ここで訪問介護をやっている2年間は、本当に充実していました。
事業のために高齢者をだますなんて
しかし、働くうちにその事業所の内情がわかってきました。介護保険だけで運営するのは苦しいのでしょう。「できるだけ介護保険請求でない部分のサービスをとってきて」と言われるようになりました。お金にうとい高齢者を相手にしているので、ちょっと持ち掛ければ、みなさん「いいわよ」と言ってくださる。けれど、それって、だましているようなものじゃないの?と感じてしまって…。
生活保護で、わずかなお金で生活しているような方でも、介護保険外のサービスとして一緒に買い物に行く。そして食べられないほどの食材を買うのを黙って見ている。食べきれずに残ったら、食材をもらって家に持って帰るようなヘルパーもいて…そんな!! 許せない気持ちになりました。
尊敬する看護師さんも、体調不良で退職することに。看護師さんは、最後に「こんなところ、やめなさい。もっとまともなところを探したほうがいいわ」という言葉を残しました。
介護の仕事はやりがいがある。でも、こんなダーティーな職場はいやだ……。考えた末、たとえ友人の事業所でも、やめなくてはならないと、決心しました。私は夜になるとパソコンを開き、介護の求人サイトで、募集を探すようになりました。
次回は資格を取得しながらキャリアアップしていくMさんの姿をお伝えします。
*M・Rさんの「私が転職した理由」…
1回目、2回目、
3回目、
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