救急搬送後に利用者さんが亡くなり、それが原因で鬱に。そして、辞めることになって……。
Tさんは大きな挫折感を味わいます。でも、次の職場も、やはり介護現場しか考えられませんでした。
たまたま人間関係のいいところに仕事を見つけ、気持ちも落ち着きましたが、次のチャレンジでまた、失望する出来事が……。
体調を崩しながらもひたむきに仕事に取り組むTさん。やがて「へこまされてばかりの新人」から一歩抜け出ることができました。
*T・Mさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
T・Mさん(33歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…13年
●介護の仕事に就く前…福祉専門学校
●介護業界での転職回数…5回
●いままでの勤務先…特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、デイケア
●保有資格…介護福祉士
派遣で働いた特養で、介護の楽しさに気付く
働いていた特養に辞表を出したあとも、何度もあの救急搬送のシーンを思い出しました。
利用者さんのけいれん、苦しそうな表情、震える手で押した電話の119番、そして“死”という現実……。
思い出すほどにつらくて、布団をかぶってなにもしたくない、と思う日々です。
いわゆる鬱というものに、自分もなってしまったんだ、と思いました。
介護の仕事に完全に自信をなくし、もう何もしたくない、ただゆっくりしたいな、と。
けれど、我が家は母子家庭で、母はずっと頑張って働いているし、おばあちゃんもいる。
僕が遊んでいるわけにはいきません。
少し休んでから、重い体をひきずり、インターネットで介護の派遣会社を見つけて、そこに登録しました。すると、すぐに特養の紹介が来ました。
この派遣会社は、最初は派遣で働いて、決められた期間が過ぎてもさらに働きたかったら非常勤で働けるというシステムです。
非常勤で働く自信はなかったけれど、とにかくご飯を食べるお金を稼がなきゃ。
日銭でもいいから稼ごうと思い、気持ちを奮い立たせました。
しかし、行ってみたら、とても居心地のいい特養でした。
ここではユニットケアでしたが、ワンフロア24人を半分にして、12人をユニットでみる。少人数だったから、家族のような雰囲気でした。
前の特養のサブリーダーとはまったく違い、女性のリーダーは穏やかで、仕事にも前向き。
いろいろな工夫をする人なんです。利用者さんと餃子を作ったり、チョコレートフォンデュをやったり。
リーダーは外出レクの企画もたくさん出す人で、みんなで水族館に行ったこともありました。
利用者さんの顔も輝くし、自分も楽しい。
介護の仕事っていいな、楽しいなと、この職場で初めて思えました。
派遣の期間が終わると、そのまま非常勤で働かせてもらうことにしました。
入職当初は、体調不全だったこともあって不安だったけれど、職場の雰囲気がとてもいいので、心配せずに非常勤を申し出ることができたんです。
非常勤になると、派遣のときのように9時から5時半まで、というわけにいかず、変則勤務がちょっとつらかったですけれど、次第に慣れていきました。
ここではいろいろなことを学ばせてもらい、自分自身もとても楽しかった。
しかし、いつまでも非常勤でいるわけにはいかない。介護職としてもステップアップしたいし、特養以外を経験してみたい。
そんな思いが募って、デイケアに正職員として就職したいと考えました。
デイケアでは、働かない看護師にブチ切れて
デイケアには医師や理学療法士、作業療法士がいて、医療のことを学べる。
それが魅力でした。介護のことしかわからない介護職にはなりたくないと思ったのです。
応募してみると、すぐに「来てください」と言われ、お世話になった特養をやめて、デイケアに正職員として就職しました。
ところが、ここは人間関係が悪かった。
最初の特養も良くなかったけれど、ここは職員同士のいじめがひどいんです。僕もさんざんいじめられました。
それに、看護師がひどい。人手が足りなくて、介護職が必死に働いているのに、ちょっとフロアに顔を見せてバイタルチェックをすると、あとはパソコンの前でのんびりしているのです。
ずっとがまんしていました。でも、がまんしきれなかった。
ついに言ってしまいました。
「なんで仕事しないんですか? こっちはみんな、猫の手も借りたいぐらい忙しいんですよ。トイレ介助ぐらい手伝ったらどうですか。給料泥棒じゃないですか!」
施設長が飛んできました。でも、僕は言い続けた。
「利用者さんを大事にしないデイケアなんて、意味ない!」
また、辞める羽目になるな。もう腹はすわっていました。
次回は、老健での4年間についてお伝えします。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
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