土木建設会社に辞表を出し、老人保健施設(老健)で働き始めたMさん。「自分には介護職が合っている」と実感できましたが、利用者に向き合う時間が短いことが、だんだんストレスになっていきます。3回目は、利用者との距離が近い認知症型グループホームに活路を見出し、転職活動を始めたMさんの現実をお伝えします。
*M・Nさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
M・Nさん(35歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…12 年
●介護の仕事に就く前…土木建設会社
●転職回数… 3回
●いままでの勤務先…老人保健施設(老健)、グループホーム
●保有資格…介護福祉士
利用者さんにしっかりと向き合える職場に転職
インターネットの転職サイトで見つけたグループホームに面接に行くと、老健での5年間のキャリアを買ってくれたのでしょうか、「すぐに来てほしい」と言ってくれました。そうなれば、職場にはもう未練はありません。退職の意思を伝え、グループホームに転職することになりました。
同じ老人ホームでも、公的な意味合いが強い老健と認知症型グループホームとでは、利用者さんへの接し方が、違うように思いました。私のいた老健では、職員がスケジュールを管理し、采配を振るう、という面がありました。しかし、グループホームは、みんなで「暮らしていく」ので、職員と利用者さんの関係もより近いものになります。利用者さん同士も接点がきちんとあります。時には、利用者さん同士がぶつかり合うこともありますが、職員が間に入れば、関係も持ち直します。その上で、一緒に食材の買い物に行って料理に参加したり、絵を描いたり、それぞれの持ち味を生かしたレクリエーションが展開されていました。
職員もベテランが多く、認知症の方が、怒り出したり、不穏になったりしても、「対処のしかた次第で落ち着くから。ひとりで悩まないでね」と言ってくれました。利用者さんのことを、決して悪く言わない。利用者さんの心の支えになれば、落ち着くのだということを、しっかり学んで身につけていました。
僕はここに5年と9カ月勤務しました。当初は、「これこそが、理想の介護」と、毎日が楽しかったのを覚えています。しかし、時がたつと、信頼していた先輩が辞め、経験の浅い人たちが新しく入って来て、徐々にグループホームの雰囲気が変わってきました。
安易に薬を使う同僚たちを許せなくて
一番許せないと思ったのは、少し手がかかる利用者さんを、薬でおとなしくさせ、寝かせてしまう職員が多くなったことです。認知症の利用者さんは、気持ちを落ち着かせる薬や、逆に活性化する薬を、医師の判断で細かく管理し、調整しながら飲んでいる人が多いです。薬の処方は「その人らしさ」を大事にするのが基本です。
「手がかかる」といっても、静かにお話を続けるなど、相手のことを理解して接すれば心が通って落ち着くのに、新人達はその手間を省くのです。もちろん、まったく薬を使わないで過ごすのは難しい利用者さんは多いです。興奮の度合が大きければ、薬を使うことも必要でしょう。しかし、医師に、「非常に激しい方で困っている」などと訴えて多めに薬を処方してもらうなど、僕はしたくない。それはプロとはいえないどころか、あるまじき行為だと思うのです。
また、薬を使うタイミングにも基準がなく、人によってバラバラなのも気になりました。こんなふうに薬を使ってはいけない、という思いはどんどん強くなるばかりです。
口ベタで、うまく言えない部分も多く、自分で自分をもどかしく思いました。別のフロアのリーダーに悩みを打ち明けると、「間違ってないよ」と言ってくれましたが、かといって別のフロアで勤務することもできません。自分は、極力薬を使わない、という姿勢を貫いていると、職場内でひとりだけ浮いているような感じがあり、それもやる気が失せる原因でした。
「別のグループホームに転職しよう」。そう決心し、新聞の折り込み広告やインターネットの転職サイトをまた見始めました。家から近く、グループホームとしての理念がきちんとしているところがいい。本当に納得のいく職場を探したくて、あわてずに半年をかけて探しました。
最終回の次回は、転職後のMさんの行動や今後の抱負などを語っていただきます。
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