聴覚に多少の障害を持ちながら、短大卒業後、すぐに夜勤のある介護の現場で働きはじめたT・Uさん。しかし、多忙とストレスが重なって、耳の聞こえが悪くなってしまいました。そこで、負担の少ない、日勤・非常勤に切り替えて働き始めたのですが、物足りなさを感じてしまいます。その理由はなんなのか……。働く年数を重ねるたびに、「介護」にのめり込んでいくTさんの心理を深く語っていただきました。
*T・Uさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
T・Uさん(40歳)の転職経験
福祉系短大卒業後、特別養護老人ホーム(特養)に3年間勤務
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体調をくずし特養を退職。夜勤のないデイサービスに転職
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デイサービスでの仕事を1年ほどで退職。非常勤として特養に転職
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10カ月後、正職員となり、同じ特養に4年間勤務
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グループホームに転職、6年間をホーム長として過ごすが疲れて退職
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有料老人ホームに1年間、非常勤のケアマネジャーとして勤務
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特養時代の仲間と独立型の居宅介護事業所を開設、運営して4年目を迎える
昼も夜も利用者さんと一緒に過ごして、信頼感を得る
非常勤で働いていれば、体もラクで、夜勤もありません。聴覚に多少の障害があり、ストレスや疲れの影響を受けやすいので、医師からも、「できれば夜勤のない職場に」と言われていました。けれど、体の調子が悪くても、私は「夜勤がしたい」と思っていたんです。
高齢者の方々は、とても包容力があり、一生懸命に仕事をしていれば、ちょっとした失敗ぐらいでは怒られることはありませんでした。でも、そうした信頼感も、深く関わっているからなんですよね。パートで昼間だけ来ている人、夜勤だけの人もいますが、そうすると、もうひとつ深い関係になれない。すると、利用者さんもなんとなく線引きしているような感じがあるんです。
認知症のある方は、夜、目覚めて不安感が強く、部屋を出て歩き回ることがあります。そんなとき、うまく心に寄り添い、不安を取り除いてベッドに入っていただくようなことができれば、その方は私を信頼してくださいます。
あるいは、朝、オムツの中に排便してしまった人などは、ご自分を責める意味もあって、オムツを脱いで壁にたたきつけたりします。見たくないんですよね、そういう自分を。そんなとき、「えっ?!」みたいに言ってしまうのではなくて、プライドを傷つけないようにさりげなく片付けたり、清拭をしたりすると、グッと距離が縮まるのを感じます。
そんな心と心のやりとりをしたい。非常勤で特養にいると、利用者さんにゆっくり接する時間があまりありません。それに、日勤だと、同じく日勤で毎日来ている同僚と、ほぼ毎日顔を合わせることになります。馬の合わない同僚と常に一緒、というのもつらいんですよね。
夜勤がある老人ホームだと、日勤・夜勤・早番・遅番など勤務シフトがいろいろなので、多少いやだな、と思う人がいても、月に数日しか会いません。「毎日じゃないんだから、がまんしよう」という気持ちにもなれるんです。そして利用者さんからは、いろんな話が聞ける。夜、目覚めた利用者さんに落ち着いていただくには、とにかく話を聞くことだったりします。そんな中で、原爆の話、戦争中に焼け出された話、ご主人とのなれそめ……、さまざまなお話を伺うことができます。そして、こんな思いをし、日本を立て直してきた方々を大事にしよう、という気持ちが強くなります。
だから、医師と相談しながら、私は夜勤のある勤務にまた戻っていきました。
介護の環境全体を整える立場に立ちたい
一方で、介護士としてはキャリアアップしたかった。そこで、正職員として特養に戻るとすぐに、介護福祉士の資格を取りました。その2年後には、ケアマネジャーの資格も取りました。受験してすぐにとれるとは思っていませんでしたが、運よく一度の受験で合格しました。
また、この頃はちょうど2000年。介護保険制度が始まった年です。現場の職員だった私にとっては、そう大きな変化に感じませんでしたが、身体拘束がなくなったのは大きかった。それまでは、体のあちこちをさわってしまう利用者さんにつなぎ服を着せたり、指先が使えないようにミトンをしたりしていました。その時は命を守るため、と思っていましたが、今では申し訳ないことをしたと思っています。
また、ベッドのまわりを柵で完全に囲んで下りられないようにしたり、食事のときに椅子で拘束したりすることもなくなりました。しかし身体拘束をしなければ、危険も伴います。そこで、ヒヤリハットの報告を徹底して、みんなで危険を防止していこう、という流れになりました。こういうことは、とてもよかったと思っています。
しかし、ケアマネジャーの資格を取ってからは、資格を活かしながら、認知症ケアができるグループホームで働きたくなりまして。特養の場にこだわらなくてもいいのでは、と思うようになりました。
私はまた、求人情報を探すようになりました。
次回は、グループホームで管理者になるTさんの様子をお伝えします。
*T・Uさんの「私が転職した理由」…
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