◆訪問介護事業所(ヘルパー兼管理者)→小規模多機能型居宅介護事業所(エリアマネージャー)→サービス付き高齢者向け住宅(施設長)
T・Yさん(女性・55歳)
介護業界での経歴詳細
●訪問介護事業所(ヘルパー兼管理者→エリアマネージャー)(勤務期間:8年/年収約280~400万円)
→有料老人ホームへ異動(施設長)(勤務期間3年/年収約380万円)
→小規模多機能型居宅介護事業所へ異動(管理者)(勤務期間:3年/年収約280~400万円)
●小規模多機能型居宅介護事業所(運営部)(勤務期間:2年/年収約350~480万円)
●サービス付き高齢者向け住宅(介護職)(勤務期間:2年半/年収約500万円)
●サービス付き高齢者向け住宅(施設長)(勤務期間:1年/年収約600万円)
保有資格:ヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)、介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)
家族構成:長男、長男の妻、次男
*T・Yさんの「転職 成功・失敗 体験談」…1回目、
2回目、
3回目、
4回目(最終回)はこちら
【介護職になったきっかけ】介護保険制度開始に従い看護助手から介護へ
「介護業界」とはまったく接点もなく、パート勤務を転々と
高校を卒業して最初に働いたのは地元のスーパーでした。3年勤務して、結婚・出産のために退職。
出産後しばらく専業主婦をしていましたが、働くことが好きだったので、家で子どもの面倒を見ながらできる仕事を探し、近所の内職をしている人たちのとりまとめを始めました。発注会社から仕事を受け、内職をする人たちに業務を振り分けたり、商品をまとめて発注会社に渡したりする役目です。
その後、妊娠・出産・育児と両立しながら、雑貨店の事務職をしたり、飲食店でパートをしたり、訪問販売をしたり、仕事を転々としていました。
社会に役立つ仕事を求めて、看護助手として就職
訪問販売の仕事をしていたときは、会社に託児所があったので助かっていたのですが、配達だけでなく営業もしなければならず、かといって意外に報酬も少なく、社会的な意義という面でもあまり自信が持てなくて……。
長男が小学校高学年になったとき、「もっと社会に役立つ仕事をしたい」と考え、病院に勤めることにしました。
その病院は、従業員のための保育所があったのも、転職の決め手になりました。
病院では、看護助手として、患者さんのシーツを交換したり、部屋の掃除をしたり、身の回りの衛生を保つための仕事をしていました。
しかし、看護の資格はないので、医療行為はできません。
何をするのも看護師さんの指示通りにしなくてはならず、どうしても看護師さんの下働き、という立場になるのです。給与も手取りで12万円程度でした。
病院で働き始めて3年経った頃、このままずっと看護助手を続けるのかと、悩み始めました。
高齢者の方のお世話をする「介護」は誇れる仕事
私が病院で働いていた頃、介護保険制度開始にともない、介護の仕事が注目されるようになりました。
「これからは介護の仕事に期待が持てる」とテレビ番組などでも放送され、自分が今やっているようなシーツ交換や高齢者の人たちの身の回りのお世話も、老人ホームに場を変えれば、もっと胸を張って「仕事をしています」と言えるようになるのだと知り、転職したくなりました。
介護事業を展開している会社の面接を思い切って受けてみたら、「ぜひ来てください」とのこと。
給料も手取り20万円を提示され、「病院と同じような仕事をするのに、こんなに給料が違うのか」と驚きました。
せっかく働くなら誇りを持って働ける仕事がいいし、同じ仕事なら給料は高い方がいい、と思って、介護の世界に飛び込むことになったのです。
【はじめての介護職】未経験で介護の知識もないのに、管理者に就任
病院で勤務していた頃に、「とにかく資格は大事だ、看護の資格がないなら、介護の資格ぐらい取っておきなさい」と上司に言われてヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修に相当)の資格は持っていたのです。
介護事業会社から歓迎されたのも、この資格があったからでした。
当時は、ヘルパー2級さえあれば、訪問介護事業所の管理者もできた時代です。
「あなたには、管理者になってほしい」と言われ、訪問介護事業所に配属され、とてもびっくりしました。
当時、入社した会社は他社と統合・合併したばかりでしたが、退職者が多く、人材不足が続いている状態でした。
だから、未経験の私でも資格があるから管理者を任されることになったのです。
「来るもの拒まず」の精神で、管理者をやることになったものの、何をすればいいのかわからない。
「介護」の基本も何も知らず、パソコンも使えない。
本社の社員にもベテランヘルパーにも、「介護の知識もなければ、エクセルもワードも使えない、こんな人が管理者になっていいのか」と言われていました。
現場でヘルパーをしながらとにかく介護の仕事を覚え、管理者としての仕事も、周りのスタッフに聞きながらがむしゃらにやる、という状態でした。
【管理者としての悩み】介護の知識も経験もない!現場の人手が足りない!
自治体の研修で知識不足を解消する
管理者としての一番の悩みは、とにかく介護の知識や経験が不足していることでした。
まず、知識不足は、研修で補うことにしました。
当時は今のように、あちこちで介護のセミナーが開催されてはいませんでした。あるとすれば自治体が開催する研修や勉強会ぐらい。
なので、研修があると聞けば、積極的に受講するようにしていました。
自治体主催の研修は受講無料だったのもありがたかったです。
こうしてある程度、介護の知識を得ることができたら、その知識を社内で共有したいと思うようになり、社内研修を開催することにしたのです。
他業種から参入してきた介護事業会社だったので、現場のヘルパーの方が、本部の社員よりも介護の知識がある状態でした。
方針についての決定権のある本部の人たちに介護の知識がなければ、現場との意識の食い違いが生まれてしまいます。
そこで、現場のヘルパーはもとより、本部の社員も受けられるような研修を企画。講師を呼んで研修を開催すると、100人も集まってくれるようになりました。
こうした研修をすることで、仕事が円滑に回るようになっていきました。
正職員を採用して確実に訪問できる体制を作る
管理者としてのもう一つの悩みは、登録ヘルパーさんがなかなか集まらないことでした。
登録してくれても、それぞれみなさん都合があり、「この時間帯はできない」「そんなに無理なことを言われるなら辞める」などと、仕事はあるのに人手が足りなくなってしまうのです。
そこで、正社員のヘルパーを中途採用で雇ってほしい、と本部に訴えました。
正社員で働ける人なら、勤務時間中、フルタイムで現場に行けます。シフトのやりくりの悩みがぐんと減るのです。
本部は最初、かなり渋っていました。
登録制のパート職員ヘルパーなら時給扱いだけれど、ヘルパーを正社員で雇うとなると社会保障なども含め、お金がかかると言われました。
けれど、当時は訪問介護の需要がとても多かったのです。
当初は人件費の投資が多くても、必ず売り上げは上がる。そう力説して採用してもらうと、やはり現場の仕事はスムーズに回り、売り上げが上がったのです。
社内での私の信用度もだんだん上がってきました
【昇進のきっかけ】訪問介護の売り上げが2.5倍アップ!
私が訪問介護の管理者になって3年経つと、売り上げは当初の2.5倍になっていました。
数字で実績を見せれば、本部も私のやり方に納得してくれます。
また、ベンチャーとして介護事業を立ち上げた会社だったので、本部の人たちも柔軟な考えの方が多かったのです。
新しい提案も、最初は渋っていても、「まあ、とにかくやってみてください」と言ってくれることが多かったのです。
また、学歴や経験、性別も仕事にそれほど影響しなかったのも、ベンチャーならではだったと思います。
実績を数字で表した後、まもなく、私はエリアマネジャーとして昇進しました。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
次回は、介護職として転職しながら急速にキャリアアップしていくTさんの軌跡をたどります。
次回「訪問から介護施設まで、3回の転職でステップアップ!~転職体験Tさん2」は、6月19日に公開予定です。
*T・Yさんの「転職 成功・失敗 体験談」…1回目、
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