今回は、介護福祉士養成施設を卒業後、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設で働いていたものの、看護師の資格を取得することを決めたOさんの転職体験談をインタビュー。
第1回の今回は、Oさんが新卒で働いていた特別養護老人ホームを辞めるきっかけとなった出来事をお伝えします。
◆特別養護老人ホーム(介護職)→介護老人保健施設(介護職)→病院(看護師)→デイサービス(看護師・介護職)
O・Hさん(女性・39歳)
介護業界での経歴詳細
●特別養護老人ホーム(介護職)(勤務期間:5年/年収約330万円)
●介護老人保健施設内のデイケア・グループホーム(介護職)(勤務期間:4年/年収約350万円)
●国立病院(看護師)(勤務期間:5年/年収約450万円)
●デイサービス(看護師・介護職を兼務)(勤務期間:3年/年収約380万円)
保有資格:介護福祉士、看護師
家族構成:夫、長女(5歳)、長男(1歳)
【はじめての就職】介護福祉士養成施設を卒業して特別養護老人ホームへ
その人の生活に密着できる「介護」の仕事がしたい
高校で進路を決めるとき、「目的もなく大学に行くより、手に職をつけたほうが今後の時代に合っている」と考えました。
母が看護師で、現役で使命感を持って働いているのを見ていたので、自分も資格を得て自信を持って前向きに働きたいと思ったのです。
看護師もいいですが、
介護の方が生活に密着していて、利用者さんと深く関われる。
国家資格を得て、看護師ではなく、介護職として働いていきたい。
そう決めて母に伝えると、「大変な仕事だよ」と母は言いました。
けれど、「社会に役立ついい仕事だから、応援するよ」とも言ってくれました。
そこで、介護福祉士を2年で取得できる介護福祉士養成施設である専門学校に通うことにしたのです。
特養でオールラウンドな介護の力を身につけたい
専門学校では、介護の技術について、持つべきマインドについて、さまざまな視点から学ぶことができました。
この2年間を生かして介護職として頑張ろう、と思ったとき、どんなところに就職したいのか考えました。
一口に介護職といっても、在宅高齢者を対象にしたデイサービスと、特別養護老人ホーム(特養)とではまったく考え方が異なります。
私は、迷わず特養を選びました
特養は、介護福祉の基礎を学べる場だと思いました。
終の棲家といわれ、最期まで過ごす場でもありましたし、さまざまな利用者さんに寄り添い、
広範に介護を学べると思ったのです。
時間に追われ、忙しく厳しいと言う話は聞いていましたが、まずは特養に就職して介護の総合力を磨き、ある程度自分でも満足できるレベルになったら、専門性を高められる場に転職すればいいと考えていました。
卒業前に、就職先を決めるとき、学校側は就職試験を受けるサポートはしてくれましたが、仕事場の斡旋をする制度はありませんでした。
基本的には「自分の力で就職活動をした」感じでした。
学校からもらった特養の求人のリストから、「できるだけ
家から近い」「居宅介護支援事業所やデイサービスなど
複合的なサービスがある」などを条件に、いくつかの施設をピックアップさせていただき、家から自転車で20分の特養に面接を自分で申し込み、縁あって採用していただきました。
【はじめての介護現場】要介護度の重い方の多いフロアを担当
就職した特養は、当時3フロアを4つのブロックに分け、それぞれ特性の違う利用者さんを受け持つ形になっていました。
私が配属されたのは経管栄養などが必要な比較的重い症状の方が多いフロアで、20数床のうち、半数は寝たきり、半数は車椅子利用の方でした。
介護に体力が必要な方々が多かったですが、医療ケアが必要な方が多かったことも含め、学べることは多かったと思っています。
【職場の人間関係】若い正職員が多くチームワークはよかった
20歳そこそこで選んだ施設ですから、経営状態などを見たわけではありませんでしたが、入職してみると、自分にとってはなかなかいい職場だと思えました。
メンバーは若い正職員が中心で、リーダー職でも20代、30代でした。
それだけに活気があり、現場では気軽に話ができる先輩がたくさんいました。
プライベートでも一緒に山登りをするなど、交流を重ね、人間関係で悩んだことは一度もありませんでしたね。
最初の3年は、仕事に慣れ、利用者さんに不便をかけないようにするのに必死。
とにかく夢中で働きました。
また、一生懸命に働けば、それを認めてくれる先輩もいて、やりがいを感じていました。
【仕事への疑問】特養で感じた「3年目の壁」
特養でひととおり仕事を覚えた3年後には、少し気持ちに余裕が出てきました。
しかしそうすると、「
自分の仕事はこれでいいのだろうか」という疑問も沸いてきました。
特養の仕事は、食事介助、排泄介助、入浴介助が中心で忙しく、
ひとりひとりの利用者さんの細かい要望に応えられないことも多いと感じてきました。
そんな中、90代の夫婦で入所していた方の、奥様のほうが危篤状態になりました。
もう余命いくばくもない、となったときに、ご主人に「ふたりで家に帰りたい」と言われたのです。
それも、「頼む、お願いだ」と懇願されて……。
まだ経験の浅い自分は、当惑するばかりでしたが、とりあえず周囲の方々に相談してみました。
【特養で感じた限界】“終の棲家”だからこそ自宅には戻れない
「住み慣れた家に戻りたい」希望を叶えることの難しさを実感
住み慣れた地域、長年住んだ家で最期を迎えたい。
これは、人として当然の思いです。
ただ、その願いを叶えるには、さまざまな障壁がありました。
体力が落ちている90代の女性を家に戻すことは、危険が伴います。
生活相談員と家族で話し合いが行われましたが、自宅での生活は困難という結果になりました。
そもそも、ふたりの認知症高齢者を抱え、息子さんご夫婦も疲弊しきっての入所でした。
そして、息子さん自身も70代で高齢です。
腰痛を抱え、ぎりぎりの状態で介護をしていたのです。
息子さんはとてもあたたかい人で、お父様が「家に帰りたい」という思いを抱えていることを深く受け止め、悩み苦しみました。
でも、誰が見ても、ふたりの90代の高齢者を在宅で介護するのは不可能と思えました。
特養入居者さんの希望を叶えられない…
在宅の介護サービスの手がどれくらい借りられるか。それも経験がなくわかりませんでした。
生活相談員にも聞いてみましたが、一様にみんなが「難しい」という返答。
結局、ご主人の思いは叶えられず、「わがまま言って申し訳なかった」と言われたのです。
奥様は容態が急変し、病院に運ばれて亡くなりました。
【転職への願望】知識と経験を積み、地域密着の介護に携わりたい
特養という小さな箱の中でしか「介護」を考えていなかった
思えば、私は経験もなく、知識も乏しかったのです。
入居者さんの「帰りたい」という言葉を“退所”と考えていた。
けれど、特養にいながら、自宅に一時帰宅する、と考えてもよかったのです。
ご主人の思い通り、亡くなるまでずっと自宅にいることはできなかったかもしれない。
けれど、住み慣れた家に帰ることはできたはず。
そして、奥様もご主人も満足した上で、安心して医療を受けられる病院に入院することだってできたのです。
あとから人に言われて、自分の経験のなさ、知識のなさに愕然としました。
特養の限界を感じていましたが、むしろ今は
自分を磨くことのほうが大事なのだと気づいたのです。
自分は特養という箱の中に居て、この中のことしかわかっていない。
この特養のある地域に、どんな介護サービスがあり、どんな街づくりがされているのか。
そしてそれらのサービスや人とのつながり、自治体とのつながりをどう築いて生活するのか。
もっともっと勉強したいと思いました。
でも、特養では、日々の介護に追われてなかなか新しいことを学ぶ余裕がありません。
もどかしく思いながら、就職して5年目を迎えました。
働きながら勉強できる施設に転職したい!
『もっと勉強したい』ともどかしく思って、悩みを同僚に話したところ、「隣町に、介護の研修を積極的に行う、医療法人母体の介護老人保健施設がある」と聞きました。
調べてみると、たしかにホームページでも、研修会の多さが示されていますし、近隣でも有名な施設のようでした。
そんなところに転職したら、たくさんのことを学べるのだろうと思いました。
一度、見学に行ってみたい。
気持ちが前のめりになり、思わず電話をかけている自分がいました。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
次回は、介護老人保健施設への転職を果たし、さらに知識・経験を得ようとするOさんの様子をお伝えします。
次回「介護の仕事をしながら看護師を目指した私の決断~転職体験Oさん2」は、6月17日に公開予定です。
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