■書名:食べる喜びを 新・介護食レシピ
■著者:多田鐸介/斎藤一郎
■発行元:阪急コミュニケーションズ
■ 発行年月:2008年10月1日
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フランス料理の技法を取り入れた"新・介護食"で食べる喜びと作る楽しさを
「噛むことが難しい」「飲み込みにくくなる」——
そんな嚥下障害を抱える高齢者をケアしている介護者にとって、毎日の食事作りは悩みのタネではないだろうか。
少しでも食べやすく、そして栄養を取って欲しいとの思いから、刻む、とろみをつけるなどの調理を施してもあまり食べてくれない。
また、それらの方法で作った介護食は見た目も悪いものが多く、お世辞にも"食べたくなる"料理ではない。ではどうしたらいいのか……。
そのような介護食作りに悩む人に向け、本書はフランス料理の技法を取り入れた介護食を提案している。
フランス料理でよく使う「裏ごし」や「フェッテ(泡立て)」などの技法や、「ムース」などの口どけのよい料理は、そのまま介護食に取り入れることができるのだ。
素材の香りを大切にする技法で作った料理は風味もよく、食欲を増進させる効果もある。見た目も美しいから、食べる楽しみも生まれるというわけだ。
「でもフランス料理でしょ? 普通の家庭じゃ無理」という心配も無用。
本書では、フードプロセッサーやミルサーの活用方法、生クリームやゼラチンなどを用いたレシピ、きれいな盛り付け方などを、家庭でも簡単に応用できるよう紹介。レシピは「青菜のおひたし」「筑前煮」「酢の物」など、高齢者が好むものがメインだが、中にはこれまで介護食としてはあまり見られない「ステーキ」といったメニューも掲載されている。
また、アンチエイジング食材を多く取り入れているのも特徴のひとつ。オリーブオイルやはちみつ、ハーブなど、抗酸化作用があり、デトックス効果もある食材もうまく介護食に応用している。
<(介護の)現場の人々は、(健常者と同じようなメニューを)無理やり何でも介護食にしようとしているように見えて、私は非常に疑問を感じました。これでは身体が弱っている高齢者たちは、ますます食べられなくなって、さらに体が弱ってしまうのは明らかです。
(中略)私が目指しているのは、フランス料理の技法とアンチエイジング食材を融合させた今までにない新しい介護食。
(中略)少量しか食べられない高齢者の方たちにこそ、おいしくて元気になれる、目にも美しい料理を食べていただきたいのです。>
食べる喜び、作る喜び、介護を受ける側も健常者も一緒に食事を楽しめる喜びなど、介護食作りの新しいヒントが詰まった一冊だ。
<松原圭子>
著者プロフィール
多田鐸介(ただ・たくすけ)さん
クリニカルフードプロデューサー。フランスの「ル・コルドン・ブルー・パリ」で学び、パリのミシュラン星付きレストランで修行を重ねる。現在、アンチエイジングメニューの開発、病院食、介護食に深く携わるアンチエイジングのコンサルタントとして活躍。
斎藤一郎(さいとう・いちろう)さん
鶴見大学歯学部教授・病院長。日本のいくつかの歯学部・医学部、米国スクリプス研究所で口腔乾燥症を呈するシェーグレン症候群の研究に長年従事。多数の論文・著書がある。