■書名:認知症plus回想法 別冊写真集で振り返るあの頃の暮らし
■編集者・著者:鈴木正典
■著者:梅本充子
■発行元:日本看護協会出版会
■発行年月:2019年9月
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昔の思い出話が認知症予防に?!回想法を介護現場で今すぐ活用できる1冊
認知症の方は最近のことを記憶することは難しいが、昔のことはよく憶えていることが多いという。
認知症に関わらず、長い人生を歩んできた高齢者は、遠い過去を振り返り、感慨にふける。
高齢者が昔を懐かしんで話をするとき、その表情がとても穏やかであることを介護職なら知っているはずだ。
本書で紹介されている『回想法』とは、アメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱した心理療法で、
昔の写真や音楽、昔使っていた家庭用品などを見たり触れたりしながら、昔の経験や思い出を語り合ったりするもの。
本書は、写真を用いたグループ回想法を行う際に活用できるガイドブックだ。
編著者の鈴木さんは、18年前にがん患者への緩和ケアの一環として回想法を取り組み始めた方だ。
本書は、鈴木さんが2013年に発行した「認知症予防のための回想法」に加筆修正をしたものとなっている。
構成は次の通りで、第1部の概論編と第2部・第3部の実践編に別れている。
第1部 イントロダクション:地域での看護・介護に活かす回想法
第2部 回想法実践1:心をひらくコミュニケーションのコツ
第3部 回想法実践2:グループ回想法運営のコツ
■別冊写真集[思い出が蘇る懐かしい昭和の写真]
第1部では、
回想法の意義や効果、地域における
活用方法について解説。
「写真と併用できる回想トリガー」という項目では、匂いや音を用いた実践結果も紹介されている。
第2部では、回想法を実践するにあたっての
コミュニケーションのコツを伝授。
傾聴の態度や返答・質問の仕方のポイント、男性と女性の参加者への対応の違い、高齢者が得意とする昔のことを考える力の活用などについて解説している。
第3部では、
グループで回想法を行う際のポイントがまとめられている。
写真の選び方、歌や寸劇など活用方法のアドバイスがあるほか、
グループであっても参加者一人ひとりを尊重すること、
思い出話の真偽は問題としないといった細やかな注意点も挙げられている。
第2部と第3部の実践編では、各項目の見出しの下に、ポイントが短くまとめられている。
解説がその後に続き、事例の写真の提示、その写真についての質問の出し方の例が実践として紹介されている。
さらに「お話を広げるキーワード」として、写真の理解に役立つ時代背景や行事、用語の説明なども付け加えられている。
また、実践編で使われている写真は、別冊の写真集に大きく印刷されており、本から取り外すこともできるので、そのまま利用することができて嬉しい。
写真は昭和20年代から50年代の白黒写真で、その当時のどこにでもあるような日常生活が感じられる写真となっており、参加者がそれぞれに思い出を語りやすいようなものばかりだ。
回想法を実践するのに、本書の写真集をそのまま使うこともできるし、本書を熟読して、参加者の方々にとって身近な風景や人々が写った写真を使えば、よりよい効果も期待できそうだ。
人が懐かしい昔に思いを馳せ、その時の楽しかったことや嬉しかった思い出を語るとき、その人の心は穏やかになる。
そのような雰囲気を参加者みんなで共有できる回想法を、高齢者のより良い生活のためにぜひ試してみてはいかがだろうか。
編集者・著者プロフィール(引用)
鈴木 正典(すずき・まさのり)さん
出雲市民病院麻酔科医師。医学博士
著者プロフィール(引用)
梅本 充子(うめもと・みつこ)さん
中部大学生命保健科学部保健看護学科教授